2021年9月24日

日本製鉄事業部長に聞く 厚板・建材 遠藤悟執行役員 新体制で生産性向上 注文構成を高度化

――厚板など需給はタイトになっています。

「需要面では、経済回復を背景とした貿易量の増大により傭船料が高騰、新造船の発注量が増加している。建機は、北米住宅着工が堅調であること等を背景に製品輸出を中心に生産活動が大幅に復調。公共土木工事受注額および鉄骨マクロは、今後の動向次第ではあるが、21年度は対前年度ほぼ横ばいから微増を見込む。

供給は厚板、建材ともタイトだ。中国もカーボンニュートラルへの対応で減産しており、下期の中国生産は伸びない。当社では本年度上期末に瀬戸内製鉄所呉地区、関西製鉄所和歌山地区の高炉を休止、下期には名古屋製鉄所で高炉を改修する。国内外のマーケットのタイト感は続くだろう。お客様との間でしっかりと注文の中身を見て、タイミングごとに必要となる数量の共有等を含め、丁寧な対話を続けている。」



――事業部の収益状況は。

「当社全体では、足元の収益が回復傾向にあるなか当事業部の収益は低位にとどまっている。」

――価格政策が重要になります。

「国内紐付き価格は海外紐付きと比べ大きく陥没していた。本年度上期からは、構造対策の趣旨を含め当社の置かれた状況や考えをあらためて丁寧にご説明し、徐々にご理解を頂いてきているが、依然道半ばだ。店売りも、これまでの需給タイトを受けて上昇してきているが、紐付き同様、価格改定の必要性等を丁寧にご説明している。下期についても、原料コストの続伸も想定されるなか、これらの取り組みを継続することで、価格・マージンの改善に努めていきたい」

――価格変動要因の変化も激しいです。

「引き続き、鉄鋼業界を取り巻く環境をお客様に丁寧に説明し、理解を得ていく取り組みを継続する。加えて数量と価格をセットとして、受注前に交渉を妥結し、当該期に納入するスタイルにしたい。お客様も当社もグローバルに事業展開するなか、基本的に同じ交渉スタイルとすることは、お客様間の公正な取引前提の確保とともに、国内のサプライチェーンを堅持するためにも必要な取り組みと考えている。」

「建材では、当社にとっての直接のお客様であるファブ、流通の皆様から価格改定の必要性を認めて頂いても、その先のゼネコンや施主の皆様からは充分にご理解を得られていないこともあり得るため、これらの皆様に対しても、当社が直面している課題を説明し、理解を得られるよう取り組みたい」

――事業の構造改革も進めています。

「本年度末までに名古屋製鉄所の厚板ミル、東日本製鉄所君津地区の大形ミルを休止する。これらはお客様、流通のご理解とご協力を得て着実に進めている。厚板事業は名古屋に続いて24年度には東日本製鉄所鹿島地区の厚板ミルを休止し、君津と九州製鉄所大分地区の2拠点に集約する。建材事業では24年度に東日本製鉄所鹿島地区の大形ミルを休止するが、関西製鉄所和歌山地区堺、九州製鉄所八幡地区、和歌山の日鉄スチール㈱と連携して、引き続き全国のお客様への供給を継続していく」

――構造改革で、どのような事業体制を敷くことに。

「集約後の新体制で生産性を高め、注文構成の高度化によって事業基盤の強化を図り、コスト競争力強化にも引き続き取り組んでいく。厚板、建材それぞれ4ミルが2ミルに集約されるが、2ミルで対応するうえで必要となる対策は行う考え。商品の高度化や新規需要捕捉へ向けた対応についても、今後の需要動向や具体ニーズ等をよく見極め検討する」

――収益力強化には高付加価値化もポイントになります。

「注文構成の高度化施策として、ハイエンド製品の市場投入、浸透を継続していく。厚板では衝突安全性に優れた造船用の高延性厚鋼板『NSafe-Hull(エヌセーフ・ハル)』、塗装周期延長耐食鋼『CORSPACE(コルスペース)』等を重点製品として注力したい。建材では圧延H形鋼として世界最大の『MEGA・NSHYPER・BEAM(メガハイパービーム)』、『ハット形鋼矢板』を市場浸透に努め、高度化を進めたい。建材では、建設現場の省人化・省力化・省エネに資する工法の普及にも継続して取り組んでいく」

――新たな需要分野として洋上風力が注目されています。

「新規に捕捉すべき分野だ。幅広いテーマだけに、当社グループの総合力を活かし、関連の強いグループ会社や社内関連部署とも十分連携し、具体的な案件とともに関連鋼材の需要を的確に捕捉していきたい。」

――DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みも拡大する中で、システムなどの対応は。

「デジタル化の流れの中で、社内データ資産をつなぎ、効率性を高め、生産性向上につなげることに注力したい。建材分野では建物のライフサイクルのデータを構築管理するBIMが広まっており、当社としてもこうした動向に対応できるよう取り組んでいく。」

――物流対策は。

「名古屋製鉄所厚板ミルから供給させて頂いていた東海・北陸地域の注文について、新たに名古屋製鉄所内に新設する中継地や大阪の既存拠点を経由しデリバリーを実施する予定。お客様にご迷惑を掛けないようデリバリー体制を構築していく」

――日鉄グループでの連携について。

「日鉄スチール㈱はもとより、日鉄建材㈱、日鉄鋼板㈱や三晃金属工業㈱等、建材とも繋がりの深いグループ会社とも引き続き密に連携していく。また、新たに発足した事業部として、営業・技術両面で厚板・建材のシナジーを追求する」

――厚板・建材市場の動向と見通しは。

「海外の厚板需要は世界経済の回復で貿易量が増え、本年4-6月のアジアから米国へのコンテナ輸送は前年同期比35%増、傭船料も7月には過去3年で最高に達した。このため中国、韓国の新造船受注が堅調であり、手持ち工事量は増加してきている。加えてカーボンニュートラル対応で、LNG燃料船など新エネ船の需要も伸びている。ただし、新エネ船は先行投資の部分もあり、中身をよく見ていく必要がある。風力発電向けも新たに捕捉すべき需要としてしっかり見ていく」

――国内の厚板は。

「国内造船も海外同様に新造船受注が回復してきている。21年度の鋼材使用量は前年度から増加する見通しだ、」

――建・産機は。

「北米の住宅着工か堅調なことなどにより建機販売は高いレベルで推移していることから、建機大手の生産計画はピークに達している」

――建材は。

「建築分野は物流倉庫などが堅調で、投資意欲が戻りつつある工場需要や都市再開発、中小案件にも動きが見えつつあり、21年度の鉄骨需要は20年度に対して横ばいから若干増えると見ている。土木は総じて堅調であり、21年度は20年度比横ばいから微増で、国土強靱化需要を中心に底堅く推移する見込み。」

――海外メーカーとの競争も激しくなっています。

「中国、韓国の能力増強はしっかり見ていかないといけない。いずれにせよ、長期的に国内市場の縮減が想定される中、厚板、大形とも2ミル体制にシフトする構造対策を完遂し、対策後のミルで品種高度化、コスト競争力強化、生産性向上を図ることが重要である」

――本年度から厚板、建材の2事業部が統合し、厚板・建材事業部となりました。長期的な青写真を。

「厚板と建材の国内需要をしっかり捕捉することが最大の使命だ。また、構造対策をやり抜くとともに、品種の高度化、生産性の向上を機軸に競争力を高めることで強固な事業基盤を構築したい。建設分野ではお客様の省力化や省エネに貢献できる製品・工法の更なる浸透を図り、社会インフラ整備に貢献したい」

新たに名古屋製鉄所内に新設する中継地や大阪の既存拠点を経由しデリバリーを実施する予定。お客様にご迷惑を掛けないようデリバリー体制を構築していく」

――日鉄グループでの連携について。

「日鉄スチール㈱はもとより、日鉄建材㈱、日鉄鋼板㈱や三晃金属工業㈱等、建材とも繋がりの深いグループ会社とも引き続き密に連携していく。また、新たに発足した事業部として、営業・技術両面で厚板・建材のシナジーを追求する」

――厚板・建材市場の動向と見通しは。

「海外の厚板需要は世界経済の回復で貿易量が増え、本年4-6月のアジアから米国へのコンテナ輸送は前年同期比35%増、傭船料も7月には過去3年で最高に達した。このため中国、韓国の新造船受注が堅調であり、手持ち工事量は増加してきている。加えてカーボンニュートラル対応で、LNG燃料船など新エネ船の需要も伸びている。ただし、新エネ船は先行投資の部分もあり、中身をよく見ていく必要がある。風力発電向けも新たに捕捉すべき需要としてしっかり見ていく」

――国内の厚板は。

「国内造船も海外同様に新造船受注が回復してきている。21年度の鋼材使用量は前年度から増加する見通しだ、」

――建・産機は。

「北米の住宅着工か堅調なことなどにより建機販売は高いレベルで推移していることから、建機大手の生産計画はピークに達している」

――建材は。

「建築分野は物流倉庫などが堅調で、投資意欲が戻りつつある工場需要や都市再開発、中小案件にも動きが見えつつあり、21年度の鉄骨需要は20年度に対して横ばいから若干増えると見ている。土木は総じて堅調であり、21年度は20年度比横ばいから微増で、国土強靱化需要を中心に底堅く推移する見込み。」

――海外メーカーとの競争も激しくなっています。

「中国、韓国の能力増強はしっかり見ていかないといけない。いずれにせよ、長期的に国内市場の縮減が想定される中、厚板、大形とも2ミル体制にシフトする構造対策を完遂し、対策後のミルで品種高度化、コスト競争力強化、生産性向上を図ることが重要である」

――本年度から厚板、建材の2事業部が統合し、厚板・建材事業部となりました。長期的な青写真を。

「厚板と建材の国内需要をしっかり捕捉することが最大の使命だ。また、構造対策をやり抜くとともに、品種の高度化、生産性の向上を機軸に競争力を高めることで強固な事業基盤を構築したい。建設分野ではお客様の省力化や省エネに貢献できる製品・工法の更なる浸透を図り、社会インフラ整備に貢献したい」

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