2021年6月3日

鉄鋼業界で働く/若手女性営業職編 座談会(上)/取引先との信頼を考えて/何にでもなる鉄鋼に魅力/飛鷹さん(JFEスチール大阪鋼板営業部薄板・缶用鋼板室)/新田さん(JFE商事西部鉄鋼本部大阪薄板部薄板・ブリキ室)

近年、鉄鋼業界のさまざまなシーンで女性が活躍している。JFEスチールとJFE商事における営業部門の女性総合職は、輸出やひも付き需要家を担当することが多く、国内の薄板店売り(流通業界)の担当はとりわけ少なかった。2016年にJFE商事が、20年にJFEスチールが、それぞれ大阪支社として初めて国内の薄板店売りに女性営業担当を配属。若手女性営業職は鉄鋼業界で何を考え、感じながら働いているのか。JFEスチール大阪支社の飛鷹友香さん、JFE商事大阪支社の新田琴乃さん、産業新聞女性記者で座談会を開き、鉄鋼業界で働くことの魅力や展望について語った。

■鉄鋼業界に入ろうと思ったきっかけ

記者「これまでの経歴を教えてください」

飛鷹「16年に入社し、愛知県の知多製造所で生産管理の業務を4年間行っていました。小径シームレス管で油井管などの品種を担当していました」

新田「私も16年入社で、初任配属からずっと大阪支社で一般薄板の国内店売り・ひも付きを担当しています」

飛鷹「私は19年の結婚を機に大阪への異動希望を出し、昨年7月に現在の一般薄板の国内店売り担当となりました」

記者「担当地域などはどの範囲ですか」

飛鷹「大阪市内を中心に関西地区を担当し、コイルセンターも一部回っています。ひも付きでキッチンメーカー、システムガスを扱う会社などもお伺いします」

記者「日々、外へ営業に出るのですか」

飛鷹「配属時にすでに新型コロナウイルスの影響が国内にも来ていたので、オンラインでの面談や会議なども含め事務所にいることも多いですね。従来のスタイルの営業ができない中、取引先と信頼関係を結ぶにはどうすればいいかを考えながら、業務に取り組んでいます」

新田「主に大阪府内に本社を置くコイルセンターと、関西に資材部門があるひも付き需要家を担当しています。工場や納入先が北陸や九州という会社も複数担当しているので、コロナ前は出張が多かったです。東は栃木県、西は福岡県までと範囲が広いです」

記者「お二方とも、国内の薄板店売り営業で女性総合職の先輩はいらっしゃいますか」

飛鷹「東京本社には、パイプなど別品種で国内の店売りを担当している女性の先輩がいますが、薄板では私だけです。大阪で総合職の女性営業は他にいません」

新田「国内の店売りには女性総合職の先輩はいません。本社や名古屋支社を含め、女性の営業職自体は徐々に増えていますが、薄板店売りを担当している女性総合職は現在私だけです」

記者「鉄鋼業界を目指したきっかけは何でしたか」

飛鷹「当初は国内電機メーカーを目指していたのですが、就職活動を進める中で、電化製品を作る素材にも目を向け、鉄鋼業界を知りました。たまたま就職面談で知多製造所の先輩方とお話し、『この方々と一緒の会社で働きたい』と思わせてくれたのが一番のきっかけです」

新田「扱う商品にはこだわりがなかったのですが、商売がしたいと思い、何でも取り扱う総合商社を志望しました。ある時、大学の先輩から『鉄なら、缶とか建物とか何にでもなるよ。鉄鋼業界に入ってやりたいものを探してみたら』と助言を受け、鉄鋼商社も目指すようになりました」

■鉄鋼業界で働くこと

記者「鉄鋼業界は古い慣習が多いと聞きます」

新田「入社してからずっと薄板国内営業なのでこの世界しか見ておらず、そのように感じるきっかけはまだないです。ただ、紙に押印で決裁する点などは、古いところかもしれません(笑)」

飛鷹「私も、紙で決裁する点は古いと感じました。インターネットを扱うIT業界などとは真逆のザ・日本企業だという印象をある程度持ってから入ったので、元のイメージからのギャップはありませんでしたね」

新田「鉄鋼業界の会社は堅そうなイメージですが、先輩一人一人は明るく元気です。仕事と関係はないのですが、休日に友人と飲みに行くと、自分の酒量がいつの間にか増えていることに気づき、かなりたくましくなった気がします(笑)」

飛鷹「就職活動では事務系総合職の先輩方としかお会いしませんでしたが、入社して工場の現場職の方々と働くことになり、職人気質には圧倒されました」

記者「なじむためにどのような努力をしましたか」

飛鷹「入社2、3年目で工場を任され、工場長や作業長と対等な立場で話さないといけなくなります。仕事をお願いすることもあれば、『これはやらないで下さい』と言わなければならない場面もある。担当者としてはっきり責任を持たなければならないし、ベテランの職人さんと対等に接しないといけないのが大変でした」

(芦田 彩)



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