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2024.10.30
2020年7月20日
神戸製鋼所 新事業部門の戦略 素形材事業部門 専務素形材事業部門長 宮下幸正氏 技術・ノウハウ横展開 製販でシナジー発揮 利益率引上げ全社収益けん引
神戸製鋼所は2020年4月1日付で組織を改編し、鉄鋼アルミ事業部門と素形材事業部門が誕生した。素形材事業部門は「鋳鍛鋼」「アルミ鋳鍛」「チタン」「サスペンション」「アルミ押出」「銅板」「鉄粉」の7ユニットで技術・ノウハウの横串を通して生産および営業面でシナジー発揮を目指す。宮下幸正・専務執行役員素形材事業部門長に方針を聞いた。
――組織改編の狙いから。
「狙いは大きく4つある。お客様軸で物事を考えて行動する組織に変えると同時に、事業部門を構成する7ユニットが持つ要素技術に横串を通すことで、ものづくり力を向上させること。またユニット制導入で意思決定スピードを高め、人材の能力を最大限に発揮できる組織にすることに照準を合わせている。7ユニットそれぞれの事業規模は数百億円とほぼ同レベルで、それぞれのマーケットで大きなシェアを有する。安全・環境・防災、品質を最優先しながら、営業から始まる全ての工程を通じて整然としたものづくりを実現し、大きなシナジーを生み出すことで収益性の高い事業部門への変革を目指す。事業部門の規模は単体で売上高が1600億円程度、従業員数は2500人程度。連結では売上高が2000億円程度、従業員数は5000人程度になる」
――技術・ノウハウの横展開による生産面でのシナジーを。
「例えば高砂製作所では大型クランクシャフトを生産しており、要素技術は鋳造と鍛造。共同出資会社のJフォージ(日本エアロフォージ)は大型鍛造プレスを用いて航空機用チタン鍛造品を手掛ける。アルミでは大安製造所のサスペンション、油圧鍛造や砂型鋳造があるなど、7ユニットの要素技術は共通する点が多い。製造設備も類似しており、設備の保全や安全に対する取り組みもシェアが可能だ。それぞれの技術・ノウハウに横串を通すことで生産技術、商品開発などでシナジーを発揮できる。また各種データを取得し、AIやIoT、ビッグデータの活用も推進していく」
――営業効果は。
「航空機分野でお客様を持つチタンとアルミ鋳鍛で情報共有がスムーズになり、鉄粉では銅板で取引関係のあるお客様にモーター用磁性鉄粉をご紹介することができ、営業効果が出始めている。4月から営業部長が集まる営業連絡会、生産・工場の連絡会をそれぞれ月1回のペースで開催し、情報共有や課題解決を実現している」
――人材の活用はどうか。
「今回の組織改編の重要なポイントのひとつだ。品質不適切事案でお客様にご迷惑をおかけしたが、原因として組織のタコツボ化が指摘され、人事ローテーションも活発とは言えなかった。今後はユニットを越えた異動を積極的に行うことで人材育成、シナジーの早期発揮に結びつけていきたい」
――7ユニットの現状と方針を。鋳鍛鋼とチタン、鉄粉は。
「鋳鍛鋼は船舶向け大型クランクシャフトがメイン。船舶需要の回復は22年以降になるとみていたが、新型コロナウイルス感染症がどのような影響を及ぼすかを注視している。高砂ではこれまでピーク対応に備えた生産体制を整えてきたものの、設備や人員の配置といった固定費を検証し、必要があれば見直す。先行きの市場動向を見極めながら、いかなる環境下においても利益を確保できる体制を整える。とくに機械加工などの下工程で従業員の多能工化、機械の自動化を推進する。また自助努力によるコストダウンとともに、お客様に製品価値を認めてもらい、事業を継続できる価格への改定をお願いしていきたい。クランクシャフト成形方法などをデファクトスタンダード化する働きかけも行っていく。チタンは航空機分野に関して、Jフォージで導入した大型設備の収益寄与度が低い。航空機需要が減少傾向にある中、歩留まり改善など、ものづくりの実力を高めていかなければならない。またモビリティ社会が大きく変化しており、燃料電池車へのチタン材の採用が進む可能性が高く、より一層注力する。鉄粉は約7割が自動車向けで、足元は厳しい。引き続きモーター用磁性鉄粉の拡販などに取り組んでいく」
――アルミ、銅板は。
「アルミ鋳鍛は航空機と自動車、半導体製造装置向けが主体。ものづくりの近代化を進めることが課題だ。例えば匠の技を生かす砂型鋳造は顧客の評価が高いものの、製造プロセスの改善が遅れており、コスト競争力は低い。これからはKPI(重要業績評価指標)を設定し、PDCAを組織的にしっかり回す。3D積層造形技術の開発も検討する。自動車サスペンション用アルミ鍛造品は設計提案力と6300㌧大型プレス設備を組み合わせることで自動車軽量化につながる提案を行い、差別化を図る。設備トラブルが発生した北米・KAAPは専門家を結集して取り組んだ結果、20年1月から軌道に乗っている。ナショナルスタッフを主体に設備安定化をキープできるようサポートしていく。アルミ押出は長府製造所と米国・KPEXに拠点がある。自動車向けメインのKPEXは近年、ものづくり実力が向上。長府は公的認証の再取得完了で店売り向け販売を再強化する。アルミ押出はターゲットとする金型で効率良く良いものを製作できるかがポイントで、シミュレーション技術を駆使することで金型製作レベルを高めていきたい。銅板は今後も需要が伸長するだろう。車載用端子向けは自動車の電動化・電装化が進み、市場拡大を見込む。また半導体用リードフレームは素材から一貫して手掛ける強みを生かし、お客様ニーズを捕捉する」
――21年度から次期中期経営計画がスタートする。
「今まさに次期中計の議論を始めたところだ。私自身の思いとして、次期中期計画は従来からの成長戦略投資をいかに回収し、収益力を高めるかだと考えている。素形材とは設計技術や加工技術を用いることで、高性能材料や新機能材料の付加価値を高めること。このため、神戸製鋼の儲け頭になり、収益力で全社を引っ張ることができるだけの水準にまで、利益率を引き上げなければならないと考えており、そのレベルを目指していきたい」(濱坂浩司、増岡武秀、新保貴史)
――組織改編の狙いから。
「狙いは大きく4つある。お客様軸で物事を考えて行動する組織に変えると同時に、事業部門を構成する7ユニットが持つ要素技術に横串を通すことで、ものづくり力を向上させること。またユニット制導入で意思決定スピードを高め、人材の能力を最大限に発揮できる組織にすることに照準を合わせている。7ユニットそれぞれの事業規模は数百億円とほぼ同レベルで、それぞれのマーケットで大きなシェアを有する。安全・環境・防災、品質を最優先しながら、営業から始まる全ての工程を通じて整然としたものづくりを実現し、大きなシナジーを生み出すことで収益性の高い事業部門への変革を目指す。事業部門の規模は単体で売上高が1600億円程度、従業員数は2500人程度。連結では売上高が2000億円程度、従業員数は5000人程度になる」
――技術・ノウハウの横展開による生産面でのシナジーを。
「例えば高砂製作所では大型クランクシャフトを生産しており、要素技術は鋳造と鍛造。共同出資会社のJフォージ(日本エアロフォージ)は大型鍛造プレスを用いて航空機用チタン鍛造品を手掛ける。アルミでは大安製造所のサスペンション、油圧鍛造や砂型鋳造があるなど、7ユニットの要素技術は共通する点が多い。製造設備も類似しており、設備の保全や安全に対する取り組みもシェアが可能だ。それぞれの技術・ノウハウに横串を通すことで生産技術、商品開発などでシナジーを発揮できる。また各種データを取得し、AIやIoT、ビッグデータの活用も推進していく」
――営業効果は。
「航空機分野でお客様を持つチタンとアルミ鋳鍛で情報共有がスムーズになり、鉄粉では銅板で取引関係のあるお客様にモーター用磁性鉄粉をご紹介することができ、営業効果が出始めている。4月から営業部長が集まる営業連絡会、生産・工場の連絡会をそれぞれ月1回のペースで開催し、情報共有や課題解決を実現している」
――人材の活用はどうか。
「今回の組織改編の重要なポイントのひとつだ。品質不適切事案でお客様にご迷惑をおかけしたが、原因として組織のタコツボ化が指摘され、人事ローテーションも活発とは言えなかった。今後はユニットを越えた異動を積極的に行うことで人材育成、シナジーの早期発揮に結びつけていきたい」
――7ユニットの現状と方針を。鋳鍛鋼とチタン、鉄粉は。
「鋳鍛鋼は船舶向け大型クランクシャフトがメイン。船舶需要の回復は22年以降になるとみていたが、新型コロナウイルス感染症がどのような影響を及ぼすかを注視している。高砂ではこれまでピーク対応に備えた生産体制を整えてきたものの、設備や人員の配置といった固定費を検証し、必要があれば見直す。先行きの市場動向を見極めながら、いかなる環境下においても利益を確保できる体制を整える。とくに機械加工などの下工程で従業員の多能工化、機械の自動化を推進する。また自助努力によるコストダウンとともに、お客様に製品価値を認めてもらい、事業を継続できる価格への改定をお願いしていきたい。クランクシャフト成形方法などをデファクトスタンダード化する働きかけも行っていく。チタンは航空機分野に関して、Jフォージで導入した大型設備の収益寄与度が低い。航空機需要が減少傾向にある中、歩留まり改善など、ものづくりの実力を高めていかなければならない。またモビリティ社会が大きく変化しており、燃料電池車へのチタン材の採用が進む可能性が高く、より一層注力する。鉄粉は約7割が自動車向けで、足元は厳しい。引き続きモーター用磁性鉄粉の拡販などに取り組んでいく」
――アルミ、銅板は。
「アルミ鋳鍛は航空機と自動車、半導体製造装置向けが主体。ものづくりの近代化を進めることが課題だ。例えば匠の技を生かす砂型鋳造は顧客の評価が高いものの、製造プロセスの改善が遅れており、コスト競争力は低い。これからはKPI(重要業績評価指標)を設定し、PDCAを組織的にしっかり回す。3D積層造形技術の開発も検討する。自動車サスペンション用アルミ鍛造品は設計提案力と6300㌧大型プレス設備を組み合わせることで自動車軽量化につながる提案を行い、差別化を図る。設備トラブルが発生した北米・KAAPは専門家を結集して取り組んだ結果、20年1月から軌道に乗っている。ナショナルスタッフを主体に設備安定化をキープできるようサポートしていく。アルミ押出は長府製造所と米国・KPEXに拠点がある。自動車向けメインのKPEXは近年、ものづくり実力が向上。長府は公的認証の再取得完了で店売り向け販売を再強化する。アルミ押出はターゲットとする金型で効率良く良いものを製作できるかがポイントで、シミュレーション技術を駆使することで金型製作レベルを高めていきたい。銅板は今後も需要が伸長するだろう。車載用端子向けは自動車の電動化・電装化が進み、市場拡大を見込む。また半導体用リードフレームは素材から一貫して手掛ける強みを生かし、お客様ニーズを捕捉する」
――21年度から次期中期経営計画がスタートする。
「今まさに次期中計の議論を始めたところだ。私自身の思いとして、次期中期計画は従来からの成長戦略投資をいかに回収し、収益力を高めるかだと考えている。素形材とは設計技術や加工技術を用いることで、高性能材料や新機能材料の付加価値を高めること。このため、神戸製鋼の儲け頭になり、収益力で全社を引っ張ることができるだけの水準にまで、利益率を引き上げなければならないと考えており、そのレベルを目指していきたい」(濱坂浩司、増岡武秀、新保貴史)
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