政府は先月25日、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言を全面解除したが、鉄鋼商社は6月以降、「原則、在宅勤務」としている勤務体制や「原則、禁止」としている取引先訪問などの緊急措置を段階的に緩和し、本格再開の期待が高まる経済活動に備える。突如として訪れた非日常から新常態への移行を迫られる中で、感染リスクを低減するための「オフピーク通勤」や「WEB会議」を継続。一方で在宅勤務やテレワークなど働き方の見直し、WEB会議ツールの本格導入などによる業務効率化にも動き出す。
勤務体制については、多くの商社が「原則在宅勤務」としてきたが、6月1日から当面の間について、伊藤忠丸紅鉄鋼が「週2日以上の在宅勤務」に変更。日鉄物産は「在宅勤務を積極活用する」、JFE商事は「可能な限り在宅勤務を実施」にそれぞれ見直した。メタルワンは「在宅勤務体制を継続する」。
出退勤については「フレックスタイム制度を活用して最大限『時差出勤・退勤』を行う」(日鉄物産)など、「オフピーク通勤」による感染リスク低減策を引き続き徹底する。
海外出張は「原則禁止」を継続するが、「自粛」としていた国内出張や来客対応は厳選しながら実施するなど緩和される方向にある。
今後の働き方については、「在宅勤務の制度化を今後検討する」(伊藤忠丸紅鉄鋼)、「在宅勤務において浮かび上がった非効率業務などを洗い出し、業務改革活動の中で対応策を検討していく」(JFE商事)、「テレワークの部分的継続を検討する」(三井物産スチール)など、新常態へのソフトランディングと業務効率化の観点から制度設計を含めた見直しが進む。
在宅勤務で一気に普及したWEB会議などICTツールについても、業務効率化、出張旅費削減などの目線で検討が進むことになりそうだ。
新型ウイルスによる国際鉄鋼市場への影響については、「収束時期が見通せず、現時点で需要などへの影響を想定することは困難」との見方が大勢。国内鉄鋼需要についても同様だが、20年は約2割減の5000万トン程度にとどまるとの見方が示されている。
新型ウイルス影響は、米リーマン・ショックや東日本大震災後などと異なる世界同時不況に発展。ワクチンは未開発で、治療法も確立されておらず、南半球では感染拡大が続いている。北半球においても第2波、第3波が懸念され、混乱収束時期がまったく見通せない状況にある。
鉄鋼業界への収益影響が本格化してくるのはこれからであり、各社ともに2020年度はトレード・事業運営ともに極めて難しい舵取りを迫られる。
新型コロナウイルスによる影響が国内外で急速に広がる中、鉄鋼商社各社は3月上旬から国内の感染防止策を強化し、海外については危険度が高い地域の駐在員・家族に一時帰国を指示するなど警戒レベルを段階的に引き上げてきた。
勤務体制については、3月上旬時点で時差通勤、テレワークを推奨する企業が多かったが、3月末時点では在宅勤務を基本とするところがメーンとなった。感染リスク低減が狙いであり、会議や会食は自粛から原則禁止となり、海外出張は完全禁止とされ、国内出張も原則禁止とするなど、防止策を強化してきた。
対象期間については当初3月15日までとする企業が多かったが、4月12日あるいは4月末、5月連休明け、5月末と延長してきた。