■特殊鋼ステンレス 一部で一時帰休実施 可能な限り入出庫、操業保つ
特殊鋼・ステンレス流通では雇用調整助成金制度を活用した一時帰休についても検討する企業が増加しており、一部ではすでに実施しているところも出ている。
特殊鋼では、米中貿易摩擦などを背景に建設機械や産業機械関連をはじめ昨年の夏ごろから減少傾向となり、ステンレス鋼では昨年末あたりから減少傾向となっていた需要は、当初「春以降には徐々に回復に向かう」との見方も多かった。しかし、年明け以降の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、先行きの動向が全く見通せない状況に陥った。
切断などの加工工程を伴う流通筋では、足元(4月上旬)の扱いについては「受注残があることから、機械は止まっていない」(特殊鋼流通筋)状況だが、3月中旬以降は引き合い自体が減少していることで、「在庫も調整を進めてきたことで、現状では適正水準に近いが、4月末以降には増加を余儀なくされるだろう」(同)という。
感染防止に向けた対応策については、出勤形態は多くの会社が時短や時差出勤で対応しており「加工現場があるだけに、テレワークは実際問題として難しい」(ステンレス流通)状況。「取引先の注文がある限り、供給責任を果たさなければ」(同)として、社内外での対人接触に最大限気配りしながら、可能な限りの入出庫、操業業務を保っている。
■線材製品 荷動き減「想像つかず」 長期戦に不安の声
「この状況がどこまで続くのか。長期戦にわれわれがどこまで耐えられるのか」。ある大手の鉄鋼二三次製品問屋のトップは見えない先行きに不安を口にする。
建築関連資材は不需要期に加え、製造業向けについても輸出関連を中心に精彩を欠いていたところに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、普通線材製品の荷動きは減少。「3月の扱い量は前年同月比でも数%程度の減少だったが、4月は2割程度減、来月以降は想像がつかない」(問屋筋)と先行きの落ち込みが懸念されている。一方で、大手ゼネコンで新型コロナ関連による工事ストップが出ている中、「中小段階では現場は動いている。そのために関連資材を在庫しておきたいという顧客も多い」(大手問屋筋)として、向け先ごとの細かな対応を余儀なくされている状況では、自社だけの判断で供給をコントロールすることが難しい。
感染防止への対策は、多くが時差出勤もしくは事務所への出勤者数を平常の2分の1に削減するなどの対応を実施している。出張も原則禁止しているが「顧客の工場が操業している限り、パソコンだけでの仕事は難しい」(大手問屋)として、取引形態の関係上テレワークに踏み切れない向きも多い。
■鋼管 テレワーク対応難も 足元、市況徐々に弱含む
大手鋼管流通幹部は「緊急事態宣言の発令によるテレワークの導入で、会社に出勤している従業員が7割程度。今後も対応をしていくが、どうなるかわからない」と話すなど、不安を口にする。
流通各社の対応策は時差通勤や時短・在宅勤務などを実施している。一方で、「在庫販売をしているので、テレワークの実施は難しい」(独立系流通筋)とし、通常勤務で手洗いやうがいなどの基本を徹底する特約店も見られる。
売上は0―20%減を見込んでいるが、現時点では見通せないとしている特約店もある。影響は建設機械向けや産業機械向け、土木向けや店売り向けなど、多くの分野に及んでいる。製缶向けやプラント向けは低調なままの状況が続いている。
2019年度の鋼管市況については、原料高騰が続いている高炉品のガス管とシームレス管は強含み横ばい、その他の品種は横ばいで推移していた。
足元の市況は徐々に弱含んできており、需給が緩和傾向にある。現行の相場維持は難しい状況だが、メーカーは価格維持の姿勢を崩していない。特約店は人件費や輸送費などの高止まりで、採算が厳しくなりつつある。