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2024.10.30
2020年4月8日
コロナの渦中で―流通の現状と対策― 関東地区【上】 加工・販売減、市況下落 事業環境悪化 先見えず
猛威を振るう新型コロナウイルス―。人の生命、健康から生活、経済と世界がコロナ渦の中でもがき続ける。国内の鋼材流通も例外ではなく、鋼材需要は低迷、加工量、販売量が落ち込み、鋼材市況は下がり続け、各事業者の収益を大きく圧迫する。政府による緊急事態宣言の発令で一段と経済活動が抑制されることが予想され、依然として鉄鋼市場の回復の見通しや回復後の姿は見えてこない。不安が広がる中、関東地区を中心に鋼材加工・流通業の鋼種ごとの市場の状況とコロナ対策を追った。
■薄板 車メーカー生産停止相次ぐ 工場稼働に大きな穴
薄板流通では鉄鋼メーカーや大口需要家に近い一部の大手コイルセンターが一時帰休に向けた動きを取り始めるなど、すでに深刻な事態に直面している。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自動車や電機、機械などの輸出産業は大打撃を受けており、収束のめども立っていない。なかでも自動車関連は薄板需要の4―5割を占めるとみられ、完成車メーカーの相次ぐ生産停止によって、工場の稼働に大きな穴が開いたところが多い。関係者は資金繰りや与信管理も含め、先行きへの不安を募らせている。
ある商社系コイルセンターは今月から毎週金曜日を「臨時休業」とする措置をとった。自動車関連の取引先が多く、受注が大幅に減少しているため、定時までの稼働を維持できないと判断。工場だけでなく、営業所も含め、国内の複数拠点を一斉に休業し、客先の動向を注視しながら、通常操業の時期を見極めていく方針だ。
別の商社系コイルセンターは「トラック向けが主体なので、足元はまだ定時の稼働は維持できている」(同社長)としつつも、残業がなくなり、社員の収入が減るため、「週に一度の副業を許可した」(同)という。働き方改革の一環という側面もあり、皮肉にも新型コロナが新たな制度を導入する契機となっている。
独立系流通では一部の営業担当者の勤務先を工場の事務所に移し、感染者が出た場合の休業リスクを引き下げるなどの取り組みが行われている。同社幹部は「正直なところ、できれば緊急事態宣言を出さずに操業を続けられる方がいいと思っていたが、ここまで事態が長期化してしまうと、むしろ出してもらって、一気に終息させた方がいい」として、緊急事態宣言には前向きな見方を示す。
別の独立系流通の経営者は「工場は北関東に多いので、操業は続けられそうだが、お客さまから『営業に来なくていい』と言われて困っている」と話す。「営業マンによると、入口に『お断り』と張り紙がされているところもあるらしく、しばらくは電話やメール、FAXで済ませるしかない」(同)。これまで経験したことのない危機に際し、関係者にかかる心理的なストレスも懸念される。
■鋼管 注文激減、長期戦も覚悟 リスク管理を徹底
「4月に入ってからは電話もFAXも激減している。まだ新年度か始まったばかりだが、桜満開の中、閑古鳥が鳴いている」。ある大手鋼管扱い筋の社長が足元の需要環境の厳しさを口にする。市況品の一般構造用鋼管(溶接鋼管専業メーカー品、STK)は、上値が切り下がりつつある状況で、着地点は不透明だ。このため「在庫は減らしていく方向で考える」とリスク管理に奔走する。
関東地区の流通大手の収益は「売上高は前年同期比で15―20%程度減っている」という。これまでプラント案件や物流施設向けなどが堅調だったが、職人不足に加え、新型コロナウイルスの影響で自粛ムードが広がる中、4―6月期の売上高はさらに落ち込むことが予想される。ある中堅流通では「最悪の場合、単月赤字が当面続くと考えておくべき状況に来ている」と漏らす。付加価値の高い機械加工などで利益を上げるが、「先行きが見通せず、非常事態下では、需要家も動きようがない」という。加工設備の稼働もままならない状況のようだ。
一方で、管工機材商社は1―3月期の売上高は比較的堅調だった。ある大手は「中国から部品が入ってこないため、住設メーカーの製品出荷が滞ったが、幸い、在庫を抱えていたので、メーカー側から感謝された」と話す。「4―6月期も大きく落ち込むことは考えにくい」とし、リスク管理を徹底しながら、攻めの姿勢も維持するようだ。
今回のコロナ禍にあって、流通各社では手洗いマスク着用など基本的な事柄を行った上で、通常に近い営業を行っている。ある社長は戦時中のスローガンに例え「まさに『欲しがりません。勝つまでは』の精神。考え方を根本から変えないと」とし、長期戦となることを覚悟している。
■線材製品 先行き需要厳しく 市況やや軟化ムード
線材製品市況は需要が低迷する中、やや軟化ムードとなっているが、足元、大きく崩れるには至っていない。需要の先行きについては新型コロナウイルスの影響が不透明としながら、厳しい見方をする関係者が大勢を占めている。
新型コロナウイルスの事業への影響について、線材製品の流通は足元までの段階で基本的にまだそれほど大きな影響はないとのことだった。入庫・出庫状況にも大きな変化は出ていないようだが、一部輸入品が入り難くなったり、出荷が鈍くなるケースもあるという。また、部材搬入の際、検温やマスク着用を求められる動きが一部あるという。
感染防止の対策としては消毒液の社内複数個所への常設や、体調が思わしくない社員に積極的に休むことの奨励、電車通勤者は電車が混雑する前の午後4時で終業などが挙げられた。
今後の需要見通しについては、主要販売先の自動車メーカーなどで生産停止の動きが出ているため、4―6月が底になるとの見方があるなど、今後、事業環境が一段と厳しさを増すとの認識が多い。一方で、中国経済が動き始めており、ある程度引き合いが出てくることを期待したいとの声もあった。
厳しい事業状況への対策として、役員報酬のカットの実施や、助成金の活用による雇用調整を検討する業者がある一方、現段階ではとくに目に付く対策はなく、今後必要に応じて検討するという業者も見られた。線材製品流通にとって、今後も厳しい事業環境が続くことになりそうだ。
■薄板 車メーカー生産停止相次ぐ 工場稼働に大きな穴
薄板流通では鉄鋼メーカーや大口需要家に近い一部の大手コイルセンターが一時帰休に向けた動きを取り始めるなど、すでに深刻な事態に直面している。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自動車や電機、機械などの輸出産業は大打撃を受けており、収束のめども立っていない。なかでも自動車関連は薄板需要の4―5割を占めるとみられ、完成車メーカーの相次ぐ生産停止によって、工場の稼働に大きな穴が開いたところが多い。関係者は資金繰りや与信管理も含め、先行きへの不安を募らせている。
ある商社系コイルセンターは今月から毎週金曜日を「臨時休業」とする措置をとった。自動車関連の取引先が多く、受注が大幅に減少しているため、定時までの稼働を維持できないと判断。工場だけでなく、営業所も含め、国内の複数拠点を一斉に休業し、客先の動向を注視しながら、通常操業の時期を見極めていく方針だ。
別の商社系コイルセンターは「トラック向けが主体なので、足元はまだ定時の稼働は維持できている」(同社長)としつつも、残業がなくなり、社員の収入が減るため、「週に一度の副業を許可した」(同)という。働き方改革の一環という側面もあり、皮肉にも新型コロナが新たな制度を導入する契機となっている。
独立系流通では一部の営業担当者の勤務先を工場の事務所に移し、感染者が出た場合の休業リスクを引き下げるなどの取り組みが行われている。同社幹部は「正直なところ、できれば緊急事態宣言を出さずに操業を続けられる方がいいと思っていたが、ここまで事態が長期化してしまうと、むしろ出してもらって、一気に終息させた方がいい」として、緊急事態宣言には前向きな見方を示す。
別の独立系流通の経営者は「工場は北関東に多いので、操業は続けられそうだが、お客さまから『営業に来なくていい』と言われて困っている」と話す。「営業マンによると、入口に『お断り』と張り紙がされているところもあるらしく、しばらくは電話やメール、FAXで済ませるしかない」(同)。これまで経験したことのない危機に際し、関係者にかかる心理的なストレスも懸念される。
■鋼管 注文激減、長期戦も覚悟 リスク管理を徹底
「4月に入ってからは電話もFAXも激減している。まだ新年度か始まったばかりだが、桜満開の中、閑古鳥が鳴いている」。ある大手鋼管扱い筋の社長が足元の需要環境の厳しさを口にする。市況品の一般構造用鋼管(溶接鋼管専業メーカー品、STK)は、上値が切り下がりつつある状況で、着地点は不透明だ。このため「在庫は減らしていく方向で考える」とリスク管理に奔走する。
関東地区の流通大手の収益は「売上高は前年同期比で15―20%程度減っている」という。これまでプラント案件や物流施設向けなどが堅調だったが、職人不足に加え、新型コロナウイルスの影響で自粛ムードが広がる中、4―6月期の売上高はさらに落ち込むことが予想される。ある中堅流通では「最悪の場合、単月赤字が当面続くと考えておくべき状況に来ている」と漏らす。付加価値の高い機械加工などで利益を上げるが、「先行きが見通せず、非常事態下では、需要家も動きようがない」という。加工設備の稼働もままならない状況のようだ。
一方で、管工機材商社は1―3月期の売上高は比較的堅調だった。ある大手は「中国から部品が入ってこないため、住設メーカーの製品出荷が滞ったが、幸い、在庫を抱えていたので、メーカー側から感謝された」と話す。「4―6月期も大きく落ち込むことは考えにくい」とし、リスク管理を徹底しながら、攻めの姿勢も維持するようだ。
今回のコロナ禍にあって、流通各社では手洗いマスク着用など基本的な事柄を行った上で、通常に近い営業を行っている。ある社長は戦時中のスローガンに例え「まさに『欲しがりません。勝つまでは』の精神。考え方を根本から変えないと」とし、長期戦となることを覚悟している。
■線材製品 先行き需要厳しく 市況やや軟化ムード
線材製品市況は需要が低迷する中、やや軟化ムードとなっているが、足元、大きく崩れるには至っていない。需要の先行きについては新型コロナウイルスの影響が不透明としながら、厳しい見方をする関係者が大勢を占めている。
新型コロナウイルスの事業への影響について、線材製品の流通は足元までの段階で基本的にまだそれほど大きな影響はないとのことだった。入庫・出庫状況にも大きな変化は出ていないようだが、一部輸入品が入り難くなったり、出荷が鈍くなるケースもあるという。また、部材搬入の際、検温やマスク着用を求められる動きが一部あるという。
感染防止の対策としては消毒液の社内複数個所への常設や、体調が思わしくない社員に積極的に休むことの奨励、電車通勤者は電車が混雑する前の午後4時で終業などが挙げられた。
今後の需要見通しについては、主要販売先の自動車メーカーなどで生産停止の動きが出ているため、4―6月が底になるとの見方があるなど、今後、事業環境が一段と厳しさを増すとの認識が多い。一方で、中国経済が動き始めており、ある程度引き合いが出てくることを期待したいとの声もあった。
厳しい事業状況への対策として、役員報酬のカットの実施や、助成金の活用による雇用調整を検討する業者がある一方、現段階ではとくに目に付く対策はなく、今後必要に応じて検討するという業者も見られた。線材製品流通にとって、今後も厳しい事業環境が続くことになりそうだ。
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