――米州住商の鋼管グループ長、ヒューストン店長を務める。米州の位置づけから。
「米州鋼管グループは住商のグローバル鋼管ビジネス取扱量の半分以上を占める最重要拠点。事業会社は鋼管製造、特殊継手加工、鋼管問屋など計13社。アラスカ、カナダ、南米を含む米州全体の本体64人のうち駐在員は18人(うち研修生2人)でヒューストン16人、カナダ1人、ブラジル1人の配置。エクソンモービル、BP、シェルなどスーパーメジャー、EOG、DEVONといったシェール開発企業、ハリバートンやベーカー・ヒューズ、シュランベージャーなどの油井機器メーカー、EPCコントラクターとビジネスを展開している」
――OCTG、ラインパイプのバリューチェーンを構築している。
「上流にあたる油井管問屋は、プレミア・パイプ、ピラミッド、B&L・パイプコ、三井物産から17年に譲受したチャンピオン・シンコ、カナダのサミット・チューブラー、アラスカのチューブラー・ソリューション・アラスカの全6社。上流の加工機能は、チュービングハンガーなど油井機器用の特殊鋼棒鋼や鍛造品の一次加工・流通を手掛けるハウコ、アラスカのユニーク・マシーン、カナダのサミット・マシーンの3社。13年に買収したエジェン・マーレーが中下流にあたるラインパイプ用の鋼管、継手・バルブ、フランジなどを在庫販売。エジェン・グループの油井管問屋だったボウランド&レバリッチは、パイプコと統合してB&L・パイプコになっている。90年代前半からのM&Aで上流から中下流までの北米米州バリューチェーンを構築してきた」
――15年以降の油価急落で一時は収益が悪化した。
「バレル100ドル超だったWTI価格が14年夏から下がり始め、15年1月に50ドル台を割って、16年2月には20ドル台まで落ち込んだ。この間、米国のリグカウントは1900基から400基台まで縮小し、鋼管の価格も急落した。このため15年、16年は大規模な減損を実施した。トランプ減税効果も手伝って17年は損益が一部回復。18年は油価が50ドル台を超え、リグカウントも1000基前後まで回復し、通商拡大法232条発動の影響で鋼材価格が上昇したことから利益水準は14年の8割程度まで回復した。19年は前年の反動で鋼材価格の軟化が続き、業績的には当初計画から下振れ基調にある」
――ところで米国の油井管市場の規模は。
「年間約500万メトリックトン。米国ではシェール革命によって油井の掘削技術が進歩し、オフショアの海上リグからシェールの陸上リグに産油エリアが大きくシフトし、油井管の需要も高級品から汎用品に移っている。掘削条件が厳しい海洋開発用などの鋼管は引き続き日本製が採用されている。油価下落前で、米リグが1900基前後で推移していた14年の市場規模は650万トンだった」
――500万トンの内訳を。
「シームレスパイプが半分、電縫管が半分。国産品、輸入品も半々ずつだが、232条の影響で国産品が増えている。油井用の電縫管需要が200万―300万トン規模の市場は米国以外にない。Hyundai、SeAH、Husteel、NEXTEELなど韓国ミルの輸出マーケットとなっていたが、232条による数量制限で半減している」
――サプライサイドの変化は。
「USスチール、テナリス、バローレック・スター、TMK、エブラツなどの大手があり、シェールブーム後にブーメラン、セントリック・パイプなど中小ミルが相次ぎ新規参入してきた」
――油井管市場におけるポジションは。
「当社グループの取扱量は国内シェアの約4割。輸入品は日本製鉄、国内品はバローレック・スター、USスチール、TMK、エブラツ、ブーメランなどから調達している」
――米国はAD措置や通商拡大法232条など輸入障壁が高い。
「日本製シームレスパイプはサンセットリビューで05年にAD措置が解除されたが、その後も輸入は13%クロムやメキシコ湾向けアイテムなどの高級品が主体。ブラジルからも年間5万―10万トン輸入・在庫していたが、現在は232条発動で数量制限を受けている」
――国内に鋼管製造、特殊継手加工を持つ強みは大きい。
「87年設立で、92年に買収した鋼管問屋、プレミア・パイプの最大サプライヤーが、シームレスパイプ製造のノーススター・スチールだった。当時のオーナーだったカーギルから提案があって、仏バローレックと02年に共同で買収し、バローレック・スターを立ち上げた。出資比率はバローレック80%、当社20%。年産50万―70万トン規模で、われわれが約8割の販売を担っている。13%クロムなどハイグレード品は生産していないが、VAM・USAが製造する高級特殊継手ねじとセット販売できるのが強み。VAM・USAは日本製鉄、バローレックとの共同出資で当社は15%のマイナー出資」(ヒューストン=谷藤 真澄)
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