――本格始動にあたって。
「『総合商社の経営リソース』と『専門商社の専門性』を併せ持つビジネス基盤がわれわれの最大の強みとなる。世界の産業構造が大きく変化し、次元を超えた競争が繰り広げられている。住友商事・金属事業部門の中核事業会社として、住友商事のアセット、リソース、ネットワークを最大限に活用し、最適な素材・部品をタイムリーに供給していく」
――目指す企業像は。
「『グローバルマーケットで新たな価値を創造し、社会の発展に貢献する』というミッションを掲げ、あるべき姿を『ベストチャレンジャー&ベストパートナー』と定めて、『金属の最適解』を求めていく方針を打ち出している。常に時代を先取りして、チャレンジングな仕事に取組み、いままで以上の付加価値を提供することで取引先からベストパートナーと認められ、業界のリーディングカンパニーとなれるようグループ全社員が一丸となって邁進する」
――事業規模、体制、運営方針を。
「資本金100億円、連結売上高7000億円、約550人で始動した。鋼板、自動車金属製品、鋼管の3営業本部体制。鋼板分野では、スチールサービスセンター網を活用して、新たな価値創造を実現する機能を提供していく。自動車分野では川上・川下分野での事業展開を強化し、素材から部品までを網羅するリーディングサプライヤーを目指す。住友商事が新設した自動車製造事業本部(金属事業部門と輸送機・建機事業部門の共管)とも連携していく。鋼管分野では、住友商事の鋼管本部、住商鋼管と連携し、ビジネスチャンスを広げていく」
――総合力を維持する方策は。
「550人のうち住友商事からの出向者が約4割を占める。約半数のプロパー社員については、住友商事との人材交流を通じて、幅広い商品知識やビジネススキルを継承している。住友商事グループの中核会社としての存在意義を共有し、グループの経営資源を最大限に活用できる金属総合商社として成長を目指す。今秋の住友商事の新本社ビル(大手町)への移転と一緒にわれわれも移る」
――多様な専門性と人材も求められる。
「専門職や技能職の経験者、外国籍の社員を住商スチール時代から広く採用してきており、欠かせない戦力となっている。時代の要請に応じてビジネスをさらに高度化していかなければならないが、これまで同様、柔軟な採用を継続する。一方で、製造系事業会社における専門性を維持・強化するため安全・TQM推進室を昨年12月に立ち上げた。製造、物流、事業投資などのプロフェッショナルを育成していく」
――安全TQM推進室の機能を。
「例えば住友商事のコイルセンター事業は長い歴史を持つが、ノウハウやスキルは事業会社を主管する各本部・地域に分散している。安全、設備、製造、コンプライアンスなどのノウハウを共有する、専門性の高い集団を立ち上げた。最新のICTも活用しながら事業会社の安全活動を推進し、総合的品質管理経営を強化する。現在は10人態勢だが、状況に応じて増強していく」
――連結経営の対象となるグループ会社は。
「サミットスチール、住商メタレックス、住商特殊鋼、マツダスチール、大利根倉庫、伊藤忠丸紅住商テクノスチールなどの国内事業会社への出資を継承する。また、4月にスタートした紅忠サミットコイルセンターにも出資する。海外はコイルセンターだけで25社あり、それぞれパートナーが異なる。国・地域によって税制や法制など事情も違うため、これから検討を本格化する」
――国内の営業戦略を。
「お客様が海外展開しているので、品種・分野別グローバル戦略が基本となるが、事業戦略としては、鋼板はサミットスチール、建材は伊藤忠丸紅住商テクノスチール、生活・住設関連は住商メタレックスなどグループ会社との連携を強化しながらビジネスを拡充していく」
――住商メタレックスについて。
「住商メタレックスは、1973年に発足した住商非鉄販売が原点で、現在は床暖房、住環境部材、軽圧・伸銅品などを扱っている。太陽光架台や電子・半導体分野の事業も展開している。4月からは、ステンレス、チタン、高機能材料、熱交換器用アルミ材料などのビジネスを承継する。アルミ地金、アルミ缶材は金属事業部門の取扱いとなる」
――海外戦略は。
「海外事務所は持た ず、住友商事の地域組織、事業会社に約40人を派遣している。電機・建材・自動車用鋼板、電磁鋼板をメーンにスチールサービスセンターはASEAN、中国、米国などのネットワークを構築し、トルコで電磁鋼板加工拠点を建設中。アジアでは亜鉛めっき鋼板事業も展開している」
――事業投融資のスタンスを。
「ビジネスのバリューチェーン拡充につながる案件があれば、国内・海外、新規事業やM&Aを問わず積極的に投資していく」
――最後に社長としての決意を聞きたい。
「住友商事から重要な事業基盤を譲り受ける。住友グループの一員として、商社機能を磨き、取引先の期待に応えられるよう、プロフェッショナル集団の総合力と専門性をフルに発揮していく」