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2024.12.20
2018年1月29日
電線産業の持続的発展に向け奔走 ■参議院議員 石上 俊雄氏 全電線と連携取り 政府に主意書提出 委員会で質問対応検討
石上俊雄・参議院議員(民進・比例)は昨年12月、わが国電線関連産業の持続的発展に向けた施策について、政府に対し質問主意書を提出し、それに対する答弁書を受け取った。この質問の中では、電線業界において課題となっている項目を網羅する形で指摘。具体的には、最適導体サイズの設計技術やエコマテリアル電線普及、超電導技術の取り組み、スマートグリッド構築への考え方、電線を地中化する無電柱化の整備、取引適正化に関するガイドラインについての言及など多岐にわたる。これに対し政府からは、それぞれの点について各施策の取り組み、現状などが回答された。これを受け今後は、通常国会が先週から開かれたことを踏まえ、委員会での質問などを検討していく考えだ。そこで、石上議員に今回の電線産業に関する質問の狙いや今後の取り組みなどに関して聞いた。
――あらためて質問主意書を出された目的、経緯などからお願いしたい。
「私は議員としての母体が、働いている皆さんの組織から支援をいただいている。私の場合、電機連合というところから支援を受け、ここの皆さんと連携を取らせていただいている組織に全電線(全日本電線関連産業労働組合連合会)があり、電線に関わる労働組合の集まりとなっている。その中で、電線関係で働いている皆さんの要望があれば、当然連携を取らせていただき、しっかりと国政に伝えていくというのが基本的なスタンスだ。昨年の11月だが、全電線から政策・制度要求に関する要請ということで、説明もいただいたところだ。基本的な思いとしては、皆さんが働いているその産業が活性化されれば、そこで働く皆さんの暮らしも安定し、より良いものになると考えている。これに対し全電線からの要望は、産業の活性化につながるもので、さまざまな課題に対して意見をお聞きしたが、国会も始まっていたので、委員会での質問というよりは、質問主意書での対応が適切だと判断し、このような形でまとめて出させていただいたというのが背景だ」
――質問に対する政府からの回答については、どのように受け止めているか。
「国から出てくる答弁というのは、全体としてふわっとしていて、それをしっかり読む中で、どういう形で委員会において掘り下げる形で質問していくか、ということをこれから検討に入る段階だ」
――今後の取り組みなど、どのように進めていかれるのか。
「質問主意書を出させていただいた内容、各項目については、大変興味深いものだと理解している。また、それぞれ取り組んでいくべき課題だと認識しているので、しっかりと連携を取らせていただきたい。おそらく全電線におかれても、会社側と意見交換をする中で、自分たちが働いている産業にはこのような課題があるということを認識して(政策・制度要求を)提出されていると思うので、産業を活性化させるという観点から重要で、今後ぜひ進めていきたい」
――質問事項としては、導体サイズの適正化やエコケーブル推進、スマートグリッドなど、幅広い点で指摘しているが、何か重点的なものなどはあるのか。
「特にどれがということではなく、全般的にそれぞれ重要なテーマではないか。すべてにわたり必要なものだと思う。総合的に対応することが大切だろう。エコ電線や無電柱化など、それぞれが重要だ。例えば無電柱化ならば、既存のところを一から進めるのは難しいが、新しく整備するところに関しては、無電柱化の街づくりを積極的に進められるように行うことが大切になる」
――付加価値の適正循環という観点で、取引適正化に関するガイドラインについても触れているが。
「付加価値の適正循環の実現は、言うはやすくであるものの、大命題ではある」
――無電柱化施策について、推進する基本法が成立・施行され、東京都など自治体レベルでは条例制定の動きも進みつつあるが、無電柱化に関する認識については。
「こちらとしては、委員会において話題に挙げていくか、議連の動きの中で言う形もある。以前に聞いたところでは、電柱を立てるやり方と、無電柱化する手法とでは、コスト的に10倍くらいの違いがあるという。(電線地中化は)共同溝で行うのがベストだとは思うが、浅層埋設など、工夫次第でもっとコストが縮まってくれば、一気に普及する可能性はあると思う」
(大倉 浩行)
〈質問主意書(質問項目)と回答〉
【質問】
環境配慮型の技術や電線・ケーブルの普及促進について
⑴最適導体サイズの設計技術やダブル配線化等の環境配慮型技術の積極的な普及推進
⑵エコマテリアル電線、超電導電力ケーブル等の環境配慮型電線・ケーブルの積極的な普及推進
【回答】
政府としては、省エネルギー等の観点から、環境に配慮した特性を持った電線・ケーブルの開発及び普及は重要であると考えている。このため、経済産業省としては、電線・ケーブルの経済性等の評価に関する国際標準の開発を支援している。また、環境に配慮した電線・ケーブルを日本工業規格として定めているほか、「高温超電導の実用化促進に資する技術開発事業」において、超電導ケーブルを用いた送電システム等の実証を行い、こうした電線・ケーブルの実用化及び採用を後押ししている。
【質問】
IoT(モノのインターネット)技術や蓄電池システムを活用したスマートグリッドの構築について
【回答】
御指摘の「家庭や企業等を結んだ電力網を利用し、双方向に効率よく電力を流すことができる次世代送電網(スマートグリッド)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、従来の集中型電源のみならず、普及が進んできている分散型電源を有効活用するため、蓄電池等のエネルギーリソースをIoT技術により統合制御し、電力の需給調整に活用するバーチャルパワープラントの実現に向けて取り組んでいる。その実現に向けて、蓄電池システムの低コスト化やIoT技術のセキュリティ対策が重要と認識している。
そのため、蓄電池システムについては、蓄電池システムの設置費用の一部を補助する事業の中で、資源エネルギー庁や関係事業者等で構成する「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」において示した平成三十二年までの目標価格以下の蓄電池のみを対象とすること等で低コスト化を図るとともに、その進捗を確認している。
また、IoT技術のセキュリティについては、資源エネルギー庁等においてサイバーセキュリティに係るガイドラインを策定しており、必要に応じてその改訂を行っている。
【質問】
無電柱化の整備の拡充について
(1)無電柱化による安全で快適なまちづくりの推進
(2)「電線等の埋設物に関する設置基準」の緩和等を活用したさらなる無電柱化の推進
【回答】
(1)お尋ねの「無電柱化による安全で快適なまちづくり」の意味するところが必ずしも明らかではないが、市街地等において無電柱化を推進することは、災害の防止、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成等を図るために重要な取組であると考えている。
このため、政府としては、従前から取り組んでいる電線共同溝の整備等に関する特別措置法(平成七年法律第三十九号)に基づく電線共同溝の整備に加え、無電柱化の推進に関する法律(平成二十八年法律第百十二号)に位置付けられた、無電柱化の迅速な推進及び費用の縮減を図るための技術開発、無電柱化の重要性に関する国民の理解と関心を深めるための広報等、無電柱化の推進に関する取組を行っているところである。
(2)
お尋ねの「各地域・具体的な箇所ごとのキーとなる様々なステイクホルダー」及び「成功事例等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、無電柱化の推進を図る上で参考となる情報を関係者間で共有することは重要であると考えている。
このため、政府としては、低コスト手法である管路を浅く埋設する方法と小型ボックスを活用する方法の普及を目的として平成二十九年三月に国土交通省が公表した「道路の無電柱化低コスト手法導入の手引き(案)」の地方公共団体等への周知を行い、また、道路管理者や関係事業者等により構成する地方ブロックごとに設けた無電柱化に関する協議会等において無電柱化の推進を図る上で参考となる情報を共有する等の取組を行っているところである。
【質問】
付加価値の適正循環の実現について
【回答】
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、取引適正化の推進は電線・ケーブル製造業の健全な発達にとって重要な課題であると考えている。この観点から、経済産業省としては、平成二十九年二月に策定した「金属産業取引適正化ガイドライン」において、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)に違反する行為のうち電線・ケーブル製造業に関係する事例等を紹介するとともに、一般社団法人日本電線工業会の主催する説明会への担当者の派遣等を通じて同ガイドラインの周知徹底に取り組んでいる。
▽石上俊雄(いしがみ・としお)氏=新潟県立柏崎工業高等学校卒。1980年東京芝浦電気(現東芝)入社。96年東芝労働組合MC(マイクロエレクトロニクスセンター)支部執行委員、00年同MC支部書記長、01年同MC支部副執行委員長、02年同MC支部執行委員長、08年同副中央執行委員長、10年東芝グループ労働組合連合会副会長。13年に第23回参議院選で民主党比例区から初当選。半導体組立製造技術に15年、システムLSI製品技術5年、労働組合役員(専従)を13年担当。国会での所属としては、経済産業委員会、決算委員会などの各委員を務める。特技は競歩。座右の銘は、「義を見てせざるは勇なきなり」。1962年1月18日生まれ、56歳。
――あらためて質問主意書を出された目的、経緯などからお願いしたい。
「私は議員としての母体が、働いている皆さんの組織から支援をいただいている。私の場合、電機連合というところから支援を受け、ここの皆さんと連携を取らせていただいている組織に全電線(全日本電線関連産業労働組合連合会)があり、電線に関わる労働組合の集まりとなっている。その中で、電線関係で働いている皆さんの要望があれば、当然連携を取らせていただき、しっかりと国政に伝えていくというのが基本的なスタンスだ。昨年の11月だが、全電線から政策・制度要求に関する要請ということで、説明もいただいたところだ。基本的な思いとしては、皆さんが働いているその産業が活性化されれば、そこで働く皆さんの暮らしも安定し、より良いものになると考えている。これに対し全電線からの要望は、産業の活性化につながるもので、さまざまな課題に対して意見をお聞きしたが、国会も始まっていたので、委員会での質問というよりは、質問主意書での対応が適切だと判断し、このような形でまとめて出させていただいたというのが背景だ」
――質問に対する政府からの回答については、どのように受け止めているか。
「国から出てくる答弁というのは、全体としてふわっとしていて、それをしっかり読む中で、どういう形で委員会において掘り下げる形で質問していくか、ということをこれから検討に入る段階だ」
――今後の取り組みなど、どのように進めていかれるのか。
「質問主意書を出させていただいた内容、各項目については、大変興味深いものだと理解している。また、それぞれ取り組んでいくべき課題だと認識しているので、しっかりと連携を取らせていただきたい。おそらく全電線におかれても、会社側と意見交換をする中で、自分たちが働いている産業にはこのような課題があるということを認識して(政策・制度要求を)提出されていると思うので、産業を活性化させるという観点から重要で、今後ぜひ進めていきたい」
――質問事項としては、導体サイズの適正化やエコケーブル推進、スマートグリッドなど、幅広い点で指摘しているが、何か重点的なものなどはあるのか。
「特にどれがということではなく、全般的にそれぞれ重要なテーマではないか。すべてにわたり必要なものだと思う。総合的に対応することが大切だろう。エコ電線や無電柱化など、それぞれが重要だ。例えば無電柱化ならば、既存のところを一から進めるのは難しいが、新しく整備するところに関しては、無電柱化の街づくりを積極的に進められるように行うことが大切になる」
――付加価値の適正循環という観点で、取引適正化に関するガイドラインについても触れているが。
「付加価値の適正循環の実現は、言うはやすくであるものの、大命題ではある」
――無電柱化施策について、推進する基本法が成立・施行され、東京都など自治体レベルでは条例制定の動きも進みつつあるが、無電柱化に関する認識については。
「こちらとしては、委員会において話題に挙げていくか、議連の動きの中で言う形もある。以前に聞いたところでは、電柱を立てるやり方と、無電柱化する手法とでは、コスト的に10倍くらいの違いがあるという。(電線地中化は)共同溝で行うのがベストだとは思うが、浅層埋設など、工夫次第でもっとコストが縮まってくれば、一気に普及する可能性はあると思う」
(大倉 浩行)
〈質問主意書(質問項目)と回答〉
【質問】
環境配慮型の技術や電線・ケーブルの普及促進について
⑴最適導体サイズの設計技術やダブル配線化等の環境配慮型技術の積極的な普及推進
⑵エコマテリアル電線、超電導電力ケーブル等の環境配慮型電線・ケーブルの積極的な普及推進
【回答】
政府としては、省エネルギー等の観点から、環境に配慮した特性を持った電線・ケーブルの開発及び普及は重要であると考えている。このため、経済産業省としては、電線・ケーブルの経済性等の評価に関する国際標準の開発を支援している。また、環境に配慮した電線・ケーブルを日本工業規格として定めているほか、「高温超電導の実用化促進に資する技術開発事業」において、超電導ケーブルを用いた送電システム等の実証を行い、こうした電線・ケーブルの実用化及び採用を後押ししている。
【質問】
IoT(モノのインターネット)技術や蓄電池システムを活用したスマートグリッドの構築について
【回答】
御指摘の「家庭や企業等を結んだ電力網を利用し、双方向に効率よく電力を流すことができる次世代送電網(スマートグリッド)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、従来の集中型電源のみならず、普及が進んできている分散型電源を有効活用するため、蓄電池等のエネルギーリソースをIoT技術により統合制御し、電力の需給調整に活用するバーチャルパワープラントの実現に向けて取り組んでいる。その実現に向けて、蓄電池システムの低コスト化やIoT技術のセキュリティ対策が重要と認識している。
そのため、蓄電池システムについては、蓄電池システムの設置費用の一部を補助する事業の中で、資源エネルギー庁や関係事業者等で構成する「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」において示した平成三十二年までの目標価格以下の蓄電池のみを対象とすること等で低コスト化を図るとともに、その進捗を確認している。
また、IoT技術のセキュリティについては、資源エネルギー庁等においてサイバーセキュリティに係るガイドラインを策定しており、必要に応じてその改訂を行っている。
【質問】
無電柱化の整備の拡充について
(1)無電柱化による安全で快適なまちづくりの推進
(2)「電線等の埋設物に関する設置基準」の緩和等を活用したさらなる無電柱化の推進
【回答】
(1)お尋ねの「無電柱化による安全で快適なまちづくり」の意味するところが必ずしも明らかではないが、市街地等において無電柱化を推進することは、災害の防止、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成等を図るために重要な取組であると考えている。
このため、政府としては、従前から取り組んでいる電線共同溝の整備等に関する特別措置法(平成七年法律第三十九号)に基づく電線共同溝の整備に加え、無電柱化の推進に関する法律(平成二十八年法律第百十二号)に位置付けられた、無電柱化の迅速な推進及び費用の縮減を図るための技術開発、無電柱化の重要性に関する国民の理解と関心を深めるための広報等、無電柱化の推進に関する取組を行っているところである。
(2)
お尋ねの「各地域・具体的な箇所ごとのキーとなる様々なステイクホルダー」及び「成功事例等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、無電柱化の推進を図る上で参考となる情報を関係者間で共有することは重要であると考えている。
このため、政府としては、低コスト手法である管路を浅く埋設する方法と小型ボックスを活用する方法の普及を目的として平成二十九年三月に国土交通省が公表した「道路の無電柱化低コスト手法導入の手引き(案)」の地方公共団体等への周知を行い、また、道路管理者や関係事業者等により構成する地方ブロックごとに設けた無電柱化に関する協議会等において無電柱化の推進を図る上で参考となる情報を共有する等の取組を行っているところである。
【質問】
付加価値の適正循環の実現について
【回答】
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、取引適正化の推進は電線・ケーブル製造業の健全な発達にとって重要な課題であると考えている。この観点から、経済産業省としては、平成二十九年二月に策定した「金属産業取引適正化ガイドライン」において、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)に違反する行為のうち電線・ケーブル製造業に関係する事例等を紹介するとともに、一般社団法人日本電線工業会の主催する説明会への担当者の派遣等を通じて同ガイドラインの周知徹底に取り組んでいる。
▽石上俊雄(いしがみ・としお)氏=新潟県立柏崎工業高等学校卒。1980年東京芝浦電気(現東芝)入社。96年東芝労働組合MC(マイクロエレクトロニクスセンター)支部執行委員、00年同MC支部書記長、01年同MC支部副執行委員長、02年同MC支部執行委員長、08年同副中央執行委員長、10年東芝グループ労働組合連合会副会長。13年に第23回参議院選で民主党比例区から初当選。半導体組立製造技術に15年、システムLSI製品技術5年、労働組合役員(専従)を13年担当。国会での所属としては、経済産業委員会、決算委員会などの各委員を務める。特技は競歩。座右の銘は、「義を見てせざるは勇なきなり」。1962年1月18日生まれ、56歳。
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