英資源大手のリオ・ティントは輸送鉄道無人化などを通じた鉄鉱石の生産性改善を進めている。数量より価値を優先するため、増産が主眼ではないとしながら、堅調な鉄鉱石需要を受けて、大規模新規開発も検討している。日豪経済委員会の合同会議で先週来日したクリス・ソールズベリー鉄鉱石部門CEOに当面の課題を聞いた。
――鉄鉱石市場は。
「鉄鉱石の需要は日本向け、それ以外の市場を含めて堅調だ。われわれは16番目の鉱山のシルバーグラスを8月に開山した。能力は増えるが、数量より価値という方針でやっている。前回来日時に鉄道無人化の話をした。順調に進展している。現時点で港に運ぶ鉄道は運転手は乗っているが、5割以上は自動モードだ。最終的には2018年の末に完全無人化を果たす。数週間前に完全無人化したトライアル運転を100キロメートルだが本線で無事できた。重量物輸送鉄道で無人化は世界で初めてだ。今回の技術パートナーは日立だ。鉱山の自動機器も多用している。鉄鉱山を走るトラックの20%くらいが運転手なしだが、先月また到達点があった。通常は無人化用のトラックを新しく買うが、今進めているのはレトロフィットといって元々有人用のトラックを無人に切り替える。恐らくコマツのトラックでレトロフィットは初めてだ。新技術を既存機材に導入することを始めている。掘削ドリルは無人化を進めている。パースの操業センターから遠隔でドリル操業を達成した。決定していないが、クダイダリという新鉱山の開発を準備している。シルバーグラスは近くに鉱山があってブラウンフィールドというが、クダイダリは久しぶりのグリーンフィールドだ。やるとなると22億ドル(2464億円)規模になる。これまで新しい技術を既存鉱山で導入してきたが、クダイダリは新技術を使う前提で計画する意味で新しい。来年にかけて調査を進め、取締役の承認が必要になるが、決定したら19年から建設を始めて21年から生産を始める」
――クダイダリの年産規模について。
「いろいろな選択肢があり得るが、今考えているのは4500万トンだ。今の生産に上乗せされるわけではなく既存鉱山で生産が落ちる。全体の中で入れ替える」
――21年の量は増えるのか。
「そこまで先は決めていない。17年の生産計画は3億3000万トンだ。出荷能力は3億6000万トンに上げていく。それには2つ必要だが一つはシルバーグラス。これはできた。もう一つは鉄道の輸送能力を18年に3億6000万トンに持っていく。その最大の貢献が無人化だ。能力ができたからすぐ作るかというと違う。価値がある分を作る。その先は量より価値という戦略に従って決める。市場、コスト、投資の3つを考えたうえで品位を含めて最もいい生産量を決める」
――新技術を前提とする一番の違いは。
「既存鉱山に新しい技術を入れているが、クダイダリはトラックやドリルが無人という前提で設計から始める。『機械同士が会話する』と表現する環境になる。既存の場合はまずトライアルをやって商業規模に拡大して最終的には機械を遠隔で操作する。段階的だが、クダイダリはいきなりそこに行く。単純な例だが、運転手が乗るトラックが走る前提で土の道の幅が決まっている。基本的に同じ轍を走るが、無人化した場合は正確に走るので無人トラックしか走らないなら道幅が狭くて済む。コストよりもあくまで生産性を上げようとしている。平均速度は無人の方が若干早い。どう走らせるかが最大のポイントだ。列車は長さが2・5キロメートルくらいある。200トンの重さの貨車が240ある。運転手の交代で1日に1時間以上ロスがある。自動化すると止まらずに走れる。さらにその次に狙いたいのは全て無人化される状態のデータ活用だ。貨車がどこでどういうスピードで走っているか共有すると車間距離を縮め、運ぶ量が増える」
――鉄鉱石の技術を非鉄ほかに横展開する。
「50億ドルのキャシュフロー増加を生産性の改善で達成する。3段階ある。1つ目は既にやっていることを完璧にやっていく。2番目はより新しい自動化、無人化を展開する。次のステージはいろいろなデータを使ってより最適化する。リオ・ティントでも鉄鉱石が進んでいる。50億ドル以上には3段階全て必要だ。他の部門はこれからだが、できることできないことがある」
――50億ドルのうち鉄鉱石はどのくらいか。
「細かく言っていないが、鉄鉱石の規模を考えるとかなり貢献しなければいけない」
――クダイダリは人がどの程度減るか。
「いろいろな無人化をしていく。人が減る部分があるが、単純に減るというより人がやるべき仕事が変わる。われわれも一部ドローンを使っている。操縦者が前に何をやっていたかというとトラックドライバーだ。過去なかった仕事が新しく必要になった。技術の進歩を活用して世の中の変化のスピードが早くなっている。日本に来るたびに新しい技術がある。来るたびに刺激される」
(正清 俊夫)