アルミ二次合金業界は現在、変革期を迎えている。リーマン・ショックを境に、自動車生産とともに拡大を続けてきた国内需要は減少に転じ、国内生産は年産100万トンを割り込んだ。そこに輸入塊のシェア拡大なども加わり、国内生産拠点の統廃合が一気に進む一方、海外進出の動きが加速するなど、各社それぞれに生き残りを掛けた対応を進めている。中長期的には自動車の脱ガソリンエンジンの動きが本格化し、既存需要の大幅な減少が予測される。いち早く、新規需要を創出できるかが将来の成長に向けた鍵になる。
アルミ二次合金の国内生産量は、リーマン・ショック前には年産100万トンを超えていたが、15年には年産80万トンを割り込んだ。アルミ合金需要の大半を占める自動車の国内生産台数は直近のピークが07年で年産1159万台であった。アルミダイカストの生産量は07年が年111万7622トンで、直近10年で最高を記録している。
だが、15年には自動車生産台数は927万8238トンに減少、合金生産量、アルミダイカスト生産量も減少した。しかし、ピークからの減少幅を見ると、自動車の減少幅が07年比20%減なのに対し、アルミダイカストは15%減と変動幅が小さい。これに対しアルミ合金は30%減と下落幅が大きいことが分かる。
ここから国産自動車がアルミダイカスト製品の使用比率を増やす一方、アルミダイカスト製品の原料として国内塊の使用量を削減していることが推測できる。そして、その減少分を穴埋めしたのが輸入塊だ。それを裏付けるように主要輸出国である中国からのアルミ合金地金の輸入量は07年の20万4657トンに対し、15年は34万8466トンまで拡大している。
中国は急速な経済成長に伴い、自動車生産台数が年々増加、合金需要も拡大の一途をたどっている。現地メーカーは生産能力の増強を進め、現在では大手の生産能力は世界トップレベルだ。品質面でも汎用品レベルならばトップメーカーでなくとも「十分に使用可能な水準」(ダイカストメーカー)に達しており、輸入塊の国内シェアは従来の2割前後から、足元では3割前後まで拡大している。
国内需要減と輸入塊のシェア拡大は国内市場に大きな影響を与えた。リーマン・ショック以降、小規模零細だけでなく中堅以上でも廃業や事業撤退、生産拠点集約の動きが相次ぎ、業界地図はここ数年で大きく塗り替えられた。一方、成長が続く海外市場での需要の取り込みを狙い、大手を中心に海外進出の動きを加速している。縮小する国内と拡大する海外の構図は当面、続くことが予測される。
世界的な需要拡大は主原料となるアルミスクラップにも影響を与え、世界的にタイト感が生じている。国内にも当然影響が及び、国内相場は高値に寄っている。そのため国内メーカーは輸入塊との競争だけでなく割高な原料にも悩まされる。
それを受け、合金各社は原料対策を講じ始めている。歩留まりの改善だけでなく、原料の安定確保と中間コストの抑制を狙い、メーカーが原料問屋を買収する動きなども見られる。二酸化炭素の排出量を削減する視点からもコスト面からも、スクラップは地産地消が最も効率的といわれており、国内原料ソースの安定確保は至上命題の一つといえる。
また、軽量化の観点から、比重の軽いアルミへの関心は年々高まっており、ダイカストや鋳物系の部材の新規採用が広がっている。ただ、軽圧品と比較すると鋳造系部品の新規採用に関して十分とは言い難い。原料に当たるアルミ二次合金業界としても、もう1歩踏み込んだ対応が求められる。
そのためには需要家だけでなくその先の企業とも開発段階から連携し、新合金開発やニーズ沿った供給体制の確立を行う一方、コスト競争力の確保に努めていくことが重要だ。アルミは比較的、価格が安定しており供給リスクも少なく、環境面でもメリットが大きい。このようなアルミの優位性をさらに掲げ、まずは他素材との競争に打ち勝っていく必要がある。
中長期的には自動車の脱ガソリン化が進み、アルミエンジンの需要が減少する可能性が高まっている。エンジン需要はアルミ合金のボリュームゾーンであり、現状の需要構造のままでは業界に与える影響があまりにも大きい。
そのため既存需要の新規需要開拓は待ったなしの状況であり、残された時間は決して長くない。業界全体で手遅れになる前に手を打ち、新たな需要を広げていくことが重要だ。国内のリサイクルシステムの永続の面からも、アルミ業界全体で考えていかなくてはならない大きな課題ともいえる。