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2024.10.30
2016年4月7日
【第4回】記念座談会 非鉄業 いま・未来 石山氏、アルミ研究継続に危機感/関氏、接合技術で開発推進
――製錬の立場でマルチマテリアルやリサイクルを含めた課題をどう見ていますか。
大井「特に貴金属の鉱石で銅、鉛、亜鉛、ニッケルなどを含む複雑なものがある。回収技術はあるが、課題は採取率とコスト。リサイクルでも同じく、残渣の中から価値のあるものを回収することはできるが、どこまで経済性を保てるかが課題だろうと思う」
――金属素材競争力強化プランでもマルチマテリアル化の対応を課題に掲げています。
関「ナショナルプロジェクトとして、研究開発を進めているところだ。具体的には、鉄、アルミ、マグネ、チタンや炭素繊維も含めた接合技術などで研究を行っている。ただ、これは製造面での取り組み。どう分けるのかという課題も含めて考えていく必要があると認識している」
IoT(モノのインターネット)への対応
――あらゆるものをインターネットでつなぐIoT社会の到来がいわれています。
大井「IoTは我々の素材需要を喚起してくれるツールと捉えるだけでなく、それを用いた生産性改善などにも取り組んでいかねばならないだろう。製造業は固定費を吸収するのにボリュームゾーンを維持しないといけないが、そこでは徹底的に生産性を上げてコストを下げる必要がある。ニーズに応じた高品質な製品を効率に造るのは、IoTの活用が適した分野ではないか。鉱山では自動化が進み、製錬所でも高温の職場ではロボットや遠隔操作を取り入れるような時代に来ている」
関「IoTは省内の審議会などでまさに議論している。モノづくりをサービスに直結する新しいビジネスモデルだが、非鉄金属関係はBtoBのビジネスで、大量生産する世界でもあるためサービスに直結させるのは難しい。産業保安で鉱山の自動化などでどう展開できるか、まさに勉強しているところで、うまく活用できるようにしていきたい」
小竹「強化プランでは、計算科学を活用した『マテリアルインフォマティクス』という手法も盛り込んだ。シミュレーション技術、試作段階でいかにコストかけずに開発するかといったプロジェクトができないか、検討を省内で行っている」
松本「ITの活用は不可欠だが、今後は一方でサイバーセキュリティーが非常に問題になってくるだろう」
大井「確かに重要な課題。業界を超えて取り組んでいかなくてはならない」
人材の確保と育成
――JX金属は東大で寄付講座を続けています。人材育成の考え方をお聞かせください。
大井「寄付講座は研究開発という目的もないわけではないが、大きな目的は人材の育成。この業界のプロの先生、民間も含め実際に業界で研究されている方々の発表を通じ、お互い切磋琢磨しながら技術を磨いていく部分と、院生を含む学生にも参加していただき刺激を受けてもらい当業界に目を向けてもらいたい。北の丸公園の科学技術館に3月、日本鉱業協会が初の非鉄ブースを設けた。最終製品から始まり、どこでメタルを抽出がどんな世界、鉱山からきているかが分かる作りになっている。年間50万人が来館するといい、小中学生から興味を持ってもらえればいい。こうした活動を日本全国に展開し、まずは非鉄産業の社会的な役割などを良く理解してもらうことが大切だ」
――アルミ業界では軽金属学会のサポートをはじめ、日軽金グループの東洋アルミニウムが軽金属奨学会で学生を継続的に支援されていますが。
石山「配当金から毎年数千万円を拠出している。いまは大学で関連する講座がどんどんなくなっていき、鉄でも危ないかなというほど。アルミに取り組んでくれている研究室があっても、教授が変わると途絶えてしまったりする。しっかりと研究に取り組んでもらえる人材育成に、企業側からも働きかけないとなくなってしまう危機感がある」
座談会出席者
住友電気工業社長 松本正義氏
日本軽金属ホールディングス会長 石山 喬 氏
JX金属社長 大井 滋 氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課長 井上幹●氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐 小竹幸浩氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐 関 行規氏
司会=大倉浩行(産業新聞社編集局非鉄部)
●はおおざとに手
大井「特に貴金属の鉱石で銅、鉛、亜鉛、ニッケルなどを含む複雑なものがある。回収技術はあるが、課題は採取率とコスト。リサイクルでも同じく、残渣の中から価値のあるものを回収することはできるが、どこまで経済性を保てるかが課題だろうと思う」
――金属素材競争力強化プランでもマルチマテリアル化の対応を課題に掲げています。
関「ナショナルプロジェクトとして、研究開発を進めているところだ。具体的には、鉄、アルミ、マグネ、チタンや炭素繊維も含めた接合技術などで研究を行っている。ただ、これは製造面での取り組み。どう分けるのかという課題も含めて考えていく必要があると認識している」
IoT(モノのインターネット)への対応
――あらゆるものをインターネットでつなぐIoT社会の到来がいわれています。
大井「IoTは我々の素材需要を喚起してくれるツールと捉えるだけでなく、それを用いた生産性改善などにも取り組んでいかねばならないだろう。製造業は固定費を吸収するのにボリュームゾーンを維持しないといけないが、そこでは徹底的に生産性を上げてコストを下げる必要がある。ニーズに応じた高品質な製品を効率に造るのは、IoTの活用が適した分野ではないか。鉱山では自動化が進み、製錬所でも高温の職場ではロボットや遠隔操作を取り入れるような時代に来ている」
関「IoTは省内の審議会などでまさに議論している。モノづくりをサービスに直結する新しいビジネスモデルだが、非鉄金属関係はBtoBのビジネスで、大量生産する世界でもあるためサービスに直結させるのは難しい。産業保安で鉱山の自動化などでどう展開できるか、まさに勉強しているところで、うまく活用できるようにしていきたい」
小竹「強化プランでは、計算科学を活用した『マテリアルインフォマティクス』という手法も盛り込んだ。シミュレーション技術、試作段階でいかにコストかけずに開発するかといったプロジェクトができないか、検討を省内で行っている」
松本「ITの活用は不可欠だが、今後は一方でサイバーセキュリティーが非常に問題になってくるだろう」
大井「確かに重要な課題。業界を超えて取り組んでいかなくてはならない」
人材の確保と育成
――JX金属は東大で寄付講座を続けています。人材育成の考え方をお聞かせください。
大井「寄付講座は研究開発という目的もないわけではないが、大きな目的は人材の育成。この業界のプロの先生、民間も含め実際に業界で研究されている方々の発表を通じ、お互い切磋琢磨しながら技術を磨いていく部分と、院生を含む学生にも参加していただき刺激を受けてもらい当業界に目を向けてもらいたい。北の丸公園の科学技術館に3月、日本鉱業協会が初の非鉄ブースを設けた。最終製品から始まり、どこでメタルを抽出がどんな世界、鉱山からきているかが分かる作りになっている。年間50万人が来館するといい、小中学生から興味を持ってもらえればいい。こうした活動を日本全国に展開し、まずは非鉄産業の社会的な役割などを良く理解してもらうことが大切だ」
――アルミ業界では軽金属学会のサポートをはじめ、日軽金グループの東洋アルミニウムが軽金属奨学会で学生を継続的に支援されていますが。
石山「配当金から毎年数千万円を拠出している。いまは大学で関連する講座がどんどんなくなっていき、鉄でも危ないかなというほど。アルミに取り組んでくれている研究室があっても、教授が変わると途絶えてしまったりする。しっかりと研究に取り組んでもらえる人材育成に、企業側からも働きかけないとなくなってしまう危機感がある」
座談会出席者
住友電気工業社長 松本正義氏
日本軽金属ホールディングス会長 石山 喬 氏
JX金属社長 大井 滋 氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課長 井上幹●氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐 小竹幸浩氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐 関 行規氏
司会=大倉浩行(産業新聞社編集局非鉄部)
●はおおざとに手
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