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2024.10.30
2016年4月6日
【第3回】記念座談会 非鉄業 いま・未来 大井氏 原料流出など課題に/石山氏 日本のアルミ技術に強み
――高機能素材の供給基地であると同時に、国内製錬所は金属リサイクルの機能も併せ持ちます。
大井「国内リサイクルには二つの大きな課題がある。一つは不合理な原料流出。国内発生のスクラップが、極端な高買いの市場へ流れてしまう。経済合理性は不明で、実は行った先でおいしい部分だけが取られ、周辺機器の廃棄が環境問題を引き起こしていたりする。行き先で適正な処理が行われるのか、事前審査や追跡の体制をぜひ整えてほしい。もう一つは先ほど触れた製品の軽薄短小化で、解体コスト高につながる面がある。最終製品メーカーとの技術交流も含めて、望ましい素材の使われ方、部品の設計・配置が工夫されることが、今後重要になっていくのでは」
関「国内発生の再生資源をリサイクルする重要性は、われわれも認識している。再生資源の国内循環、特にビジネスとしてどう上手く回していくか、一緒に議論を深めていければと考えている。資源流出の問題については、例えば使用済みアルミ缶の輸出動向をきちんと把握できるように、政府としてアルミ缶のHSコードを整えた経緯などがある。日本の技術力を生かして、単純に溶かすだけでない高度なリサイクルを推し進めることも必要。大井社長のおっしゃる分別の問題も、国内循環を促す上で重要なテーマだ」
――国内基盤強化の一環で、電線業界では取引適正化ガイドラインをこのほどまとめられました。
松本「銅電線の国内需要は現在年70万トン。その半分がこのガイドラインの対象となる、いわゆる市況品に相当する。製品を買う側の商慣習ばかりを言っている訳でなく、供給側の意識改革の必要性もかなり盛り込んだ。その上で非合理的な商慣習については、正々堂々と契約書を交わして条件を明確化し、履行してもらいましょうとうたっている。日本電線工業会から各関係団体へ説明に赴いている。ガイドラインを作って終わりではなく、業界全体でフォローしていく必要がある」
マルチマテリアル化の進展と課題
――先端技術や高品質・高機能がグローバル競争上の武器になる一方で、今挙がった電線の市況品のようなボリュームゾーンも避けては通れません。バランスをどのように考えますか。
石山「アルミで今後最も多くなるのは、やはり自動車、トラック、鉄道車両の関係だろうと思う。日本の中、アルミ業界の中でさえ、軽量化を競っている状況で、合金の組成、結晶粒の制御、熱処理といった基礎技術が非常に絡んできて、設備を買っただけでは造れないものがたくさんある。海外勢は簡単には追いついてこられない。半導体製造装置やLNGタンカーのような分野も同様だ。市場の伸びしろがあって、なおかつそうした技術の詰まったものであれば、日本の強みをまだかなり発揮できる」
松本「電線は製品がかなり限られる。日本がトップランナーで走っているのは、国と国とを結ぶ海底直流高圧ケーブルや、高温超電導材料。他が追随できないほど、日本の各電線メーカーの技術は高い。それ以外のボリュームゾーンを狙うとなると、現地化しかない。建設・電販用電線を日本で造って輸出しても、競争力が全然ない。製品を選択して、地域に集中してやっていくという、バランスの取れたポリシーがなければ難しい」
――マルチマテリアル化や素材代替についてはどうですか。
松本「アルミハーネスの例をとると、細径電線用のアルミ合金の開発競争が今、厳しくなってきている。各社の知財が多く入る分野だ。あと、光ファイバーが車内配線に使われ出すと、非鉄金属の市場にまたちょっと違う変化を起こすのではないかと思う。ただ、今は価格がまだ少し高い」
――アルミは採用の増える側です。
石山「自動車メーカーからはやはりいろいろな要求があり、鉄とアルミ、銅とアルミ、アルミとプラスチックといった複合材の研究もかなりされている。ただ、接合方法をどうするか、先ほど話が挙がったようにリサイクルの時にどうやって分けるかが問題になる。プラスチックとアルミをダイカスト接合するようなことが、結構行われている」
座談会出席者
住友電気工業社長
松本正義氏
日本軽金属ホールディングス会長
石山喬氏
JX金属社長
大井滋氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課長
井上幹邦氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐
小竹幸浩氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐
関行規氏
司会=大倉浩行(産業新聞社編集局非鉄部)
大井「国内リサイクルには二つの大きな課題がある。一つは不合理な原料流出。国内発生のスクラップが、極端な高買いの市場へ流れてしまう。経済合理性は不明で、実は行った先でおいしい部分だけが取られ、周辺機器の廃棄が環境問題を引き起こしていたりする。行き先で適正な処理が行われるのか、事前審査や追跡の体制をぜひ整えてほしい。もう一つは先ほど触れた製品の軽薄短小化で、解体コスト高につながる面がある。最終製品メーカーとの技術交流も含めて、望ましい素材の使われ方、部品の設計・配置が工夫されることが、今後重要になっていくのでは」
関「国内発生の再生資源をリサイクルする重要性は、われわれも認識している。再生資源の国内循環、特にビジネスとしてどう上手く回していくか、一緒に議論を深めていければと考えている。資源流出の問題については、例えば使用済みアルミ缶の輸出動向をきちんと把握できるように、政府としてアルミ缶のHSコードを整えた経緯などがある。日本の技術力を生かして、単純に溶かすだけでない高度なリサイクルを推し進めることも必要。大井社長のおっしゃる分別の問題も、国内循環を促す上で重要なテーマだ」
――国内基盤強化の一環で、電線業界では取引適正化ガイドラインをこのほどまとめられました。
松本「銅電線の国内需要は現在年70万トン。その半分がこのガイドラインの対象となる、いわゆる市況品に相当する。製品を買う側の商慣習ばかりを言っている訳でなく、供給側の意識改革の必要性もかなり盛り込んだ。その上で非合理的な商慣習については、正々堂々と契約書を交わして条件を明確化し、履行してもらいましょうとうたっている。日本電線工業会から各関係団体へ説明に赴いている。ガイドラインを作って終わりではなく、業界全体でフォローしていく必要がある」
マルチマテリアル化の進展と課題
――先端技術や高品質・高機能がグローバル競争上の武器になる一方で、今挙がった電線の市況品のようなボリュームゾーンも避けては通れません。バランスをどのように考えますか。
石山「アルミで今後最も多くなるのは、やはり自動車、トラック、鉄道車両の関係だろうと思う。日本の中、アルミ業界の中でさえ、軽量化を競っている状況で、合金の組成、結晶粒の制御、熱処理といった基礎技術が非常に絡んできて、設備を買っただけでは造れないものがたくさんある。海外勢は簡単には追いついてこられない。半導体製造装置やLNGタンカーのような分野も同様だ。市場の伸びしろがあって、なおかつそうした技術の詰まったものであれば、日本の強みをまだかなり発揮できる」
松本「電線は製品がかなり限られる。日本がトップランナーで走っているのは、国と国とを結ぶ海底直流高圧ケーブルや、高温超電導材料。他が追随できないほど、日本の各電線メーカーの技術は高い。それ以外のボリュームゾーンを狙うとなると、現地化しかない。建設・電販用電線を日本で造って輸出しても、競争力が全然ない。製品を選択して、地域に集中してやっていくという、バランスの取れたポリシーがなければ難しい」
――マルチマテリアル化や素材代替についてはどうですか。
松本「アルミハーネスの例をとると、細径電線用のアルミ合金の開発競争が今、厳しくなってきている。各社の知財が多く入る分野だ。あと、光ファイバーが車内配線に使われ出すと、非鉄金属の市場にまたちょっと違う変化を起こすのではないかと思う。ただ、今は価格がまだ少し高い」
――アルミは採用の増える側です。
石山「自動車メーカーからはやはりいろいろな要求があり、鉄とアルミ、銅とアルミ、アルミとプラスチックといった複合材の研究もかなりされている。ただ、接合方法をどうするか、先ほど話が挙がったようにリサイクルの時にどうやって分けるかが問題になる。プラスチックとアルミをダイカスト接合するようなことが、結構行われている」
座談会出席者
住友電気工業社長
松本正義氏
日本軽金属ホールディングス会長
石山喬氏
JX金属社長
大井滋氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課長
井上幹邦氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐
小竹幸浩氏
経済産業省製造産業局非鉄金属課課長補佐
関行規氏
司会=大倉浩行(産業新聞社編集局非鉄部)
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