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2024.10.30
2014年12月26日
2014年の日本経済は景気が好転し、為替の円安が1ドル=120円水準まで進むとともに、エネルギー価格の上昇など、外部環境変化の大きい1年となった。非鉄業界では、堅調な海外相場や円の下落が製品価格に影響する一方、各業種において「選択と集中」に伴う事業の見直し、再編なども進んだ。今年の非鉄業界を、十大ニュースで振り返った。
(1)非鉄製品の値上げ相次ぐ
アルミ圧延最大手のUACJが板・押出製品のロールマージンアップを行うなど、他の軽圧メーカーや流通各社でも値上げを実施。また、伸銅品も一部メーカーが値上げをしたほか、他品種でも陥没価格是正の動きが見られた。電線では、銅線(荒引線・伸線)ほか各製品において値上げの動きがあった。海外相場の上昇に加え、為替の円安が加速。さらに、エネルギーコストの上昇も製品価格アップにつながった。
(2)「日の丸銅山」が本稼働
JX日鉱日石金属、三井金属、三井物産の3社が出資する、チリ・カセロネス銅鉱山が本格操業を開始した。日本主導の海外大型銅鉱山としては約40年ぶりの案件で、業界内外から広く注目を集めた。当初10年間平均で日本の銅需要の1割強に相当する精鉱を供給予定。14年は住友金属鉱山、住友商事の参画するチリ・シエラゴルダ銅鉱山も精鉱生産に入った。両件とも起業費が当初計画から大きく上振れ、資源開発事業の高難度化も如実に映した。
(3)アルミプレミアムが最高値更新
アルミ新地金の対日プレミアム(割増金)は高騰した。1―3月期にトン255―256ドルだったプレミアムは、4―6月期に365―370ドル、7―9月期に400―410ドル、10―12月期に420ドルと、最高値更新が相次いだ。
需要が好調なことや生産者の減産を背景に、欧米のプレミアムが急伸したことが背景にある。ただ、日本の需要がそれほど強くないため、プレミアムの高騰に違和感を抱く関係者は多い。
(4)古河電工・日光事業所で雪害
古河電気工業の伸銅品工場、日光事業所(栃木県)が2月の記録的大雪で一部崩落。中間圧延工程が設備被害を受け、復旧に12月までかかった。復旧費用は約77億円。この間、多くの同業他社が素条供給を支援したが、需要改善もあり国内の銅、銅合金条需給は引き締まり、大手各社で納期の延長などが見られた。同社は復旧に合わせ、複数の同業メーカーと非常時の相互生産委託契約も結んだ。
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(5)流通企業の再編相次ぐ
非鉄製品流通の再編が相次いだ年でもあった。7月には筒中金属産業が新設分割で設立し、神鋼商事が70%を出資する新会社「コベルコ筒中トレーディング」が発足。10月にはナカガワメタルがUACJグループの泉メタルに流通事業を譲渡した。いずれも老舗のオーナー系流通がメーカー系流通に事業を売却した形だ。再編ではないが4月には曽束が倒産した。背景には国内市場の縮小や後継者難など、流通各社が抱える問題がある。
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(6)三菱電機メテックスが会社清算決定
大手リン青銅・洋白メーカーの三菱電機メテックス(本社=相模原市)が15年3月で事業を停止し、会社清算することを決めた。リン青銅は08年のリーマン・ショック以降で需要が3割程度減少したが、企業再編は進まず、伸銅品の中でも価格競争の激しさが目立つ。2番手である同社の撤退により、今後は過度な能力余剰感が解消されるとみられる。
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(7)インドネシア鉱石禁輸実施
インドネシア政府は1月12日、未加工鉱物の輸出禁止を施行した。フェロニッケルの原料となるニッケル酸化鉱や、グラスベルグ鉱山、バツ・ヒジャウ鉱山から供給される銅精鉱が対象に含まれ、製錬各社は代替調達に追われた。銅精鉱はその後、一定の条件下で輸出再開許可が下りたが、ニッケル鉱は状況変わらず。主要代替国のフィリピンでも9月初め、鉱石禁輸法案が国会へ提出され、資源ナショナリズムの問題が浮き彫りになった。
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(8)WTO、中国輸出規制問題で最終判断
世界貿易機関(WTO)の紛争小委員会(パネル)は8月下旬、中国によるレアメタル・レアアース(希土類)輸出制限措置は不当として日米欧が共同提訴していた問題で、原告側の訴えを全面的に認める最終判断を下した。各国で高まりつつ資源ナショナリズムをけん制する意味でも価値ある判断となった。ただ、希土類では依然7―9割を中国に依存する構造は変わっておらず、根本的な解決には至っていない。
(9)日本軽金属・蒲原、アルミ製錬撤退
日本軽金属は3月末でアルミ電解事業(製錬事業)から撤退し、静岡県の蒲原製造所で行ってきたアルミ地金の生産を終了した。日本のアルミ製錬は石油ショックによる電力代の上昇を受け撤退が続出。日軽金が富士川沿いに持つ水力発電所から電力を調達できる蒲原のみが操業を続けてきたが、輸入地金が増加し、老朽化した設備を刷新しても採算に合わないと判断した。今回の撤退で日本でのアルミ製錬は完全に姿を消すこととなった。
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(10)住友電工、HSTに過半出資
住友電気工業は、建設用電線のメーカー販社最大手、住電日立ケーブル(HST)への出資比率を過半へと引き上げ、同社出身者がHST社長に就任した。これにより今後は、住友電工がHSTへの経営に主導的に関わる見込み。従来の出資比率は住友電工と日立金属が各40%、東日京三電線とタツタ電線で各10%。これが日立金属と東日京三の株式売却により住電56%、日立34%、タツタ電線10%の比率に移行した。
(1)非鉄製品の値上げ相次ぐ
アルミ圧延最大手のUACJが板・押出製品のロールマージンアップを行うなど、他の軽圧メーカーや流通各社でも値上げを実施。また、伸銅品も一部メーカーが値上げをしたほか、他品種でも陥没価格是正の動きが見られた。電線では、銅線(荒引線・伸線)ほか各製品において値上げの動きがあった。海外相場の上昇に加え、為替の円安が加速。さらに、エネルギーコストの上昇も製品価格アップにつながった。
(2)「日の丸銅山」が本稼働
JX日鉱日石金属、三井金属、三井物産の3社が出資する、チリ・カセロネス銅鉱山が本格操業を開始した。日本主導の海外大型銅鉱山としては約40年ぶりの案件で、業界内外から広く注目を集めた。当初10年間平均で日本の銅需要の1割強に相当する精鉱を供給予定。14年は住友金属鉱山、住友商事の参画するチリ・シエラゴルダ銅鉱山も精鉱生産に入った。両件とも起業費が当初計画から大きく上振れ、資源開発事業の高難度化も如実に映した。
(3)アルミプレミアムが最高値更新
アルミ新地金の対日プレミアム(割増金)は高騰した。1―3月期にトン255―256ドルだったプレミアムは、4―6月期に365―370ドル、7―9月期に400―410ドル、10―12月期に420ドルと、最高値更新が相次いだ。
需要が好調なことや生産者の減産を背景に、欧米のプレミアムが急伸したことが背景にある。ただ、日本の需要がそれほど強くないため、プレミアムの高騰に違和感を抱く関係者は多い。
(4)古河電工・日光事業所で雪害
古河電気工業の伸銅品工場、日光事業所(栃木県)が2月の記録的大雪で一部崩落。中間圧延工程が設備被害を受け、復旧に12月までかかった。復旧費用は約77億円。この間、多くの同業他社が素条供給を支援したが、需要改善もあり国内の銅、銅合金条需給は引き締まり、大手各社で納期の延長などが見られた。同社は復旧に合わせ、複数の同業メーカーと非常時の相互生産委託契約も結んだ。
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(5)流通企業の再編相次ぐ
非鉄製品流通の再編が相次いだ年でもあった。7月には筒中金属産業が新設分割で設立し、神鋼商事が70%を出資する新会社「コベルコ筒中トレーディング」が発足。10月にはナカガワメタルがUACJグループの泉メタルに流通事業を譲渡した。いずれも老舗のオーナー系流通がメーカー系流通に事業を売却した形だ。再編ではないが4月には曽束が倒産した。背景には国内市場の縮小や後継者難など、流通各社が抱える問題がある。
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(6)三菱電機メテックスが会社清算決定
大手リン青銅・洋白メーカーの三菱電機メテックス(本社=相模原市)が15年3月で事業を停止し、会社清算することを決めた。リン青銅は08年のリーマン・ショック以降で需要が3割程度減少したが、企業再編は進まず、伸銅品の中でも価格競争の激しさが目立つ。2番手である同社の撤退により、今後は過度な能力余剰感が解消されるとみられる。
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(7)インドネシア鉱石禁輸実施
インドネシア政府は1月12日、未加工鉱物の輸出禁止を施行した。フェロニッケルの原料となるニッケル酸化鉱や、グラスベルグ鉱山、バツ・ヒジャウ鉱山から供給される銅精鉱が対象に含まれ、製錬各社は代替調達に追われた。銅精鉱はその後、一定の条件下で輸出再開許可が下りたが、ニッケル鉱は状況変わらず。主要代替国のフィリピンでも9月初め、鉱石禁輸法案が国会へ提出され、資源ナショナリズムの問題が浮き彫りになった。
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(8)WTO、中国輸出規制問題で最終判断
世界貿易機関(WTO)の紛争小委員会(パネル)は8月下旬、中国によるレアメタル・レアアース(希土類)輸出制限措置は不当として日米欧が共同提訴していた問題で、原告側の訴えを全面的に認める最終判断を下した。各国で高まりつつ資源ナショナリズムをけん制する意味でも価値ある判断となった。ただ、希土類では依然7―9割を中国に依存する構造は変わっておらず、根本的な解決には至っていない。
(9)日本軽金属・蒲原、アルミ製錬撤退
日本軽金属は3月末でアルミ電解事業(製錬事業)から撤退し、静岡県の蒲原製造所で行ってきたアルミ地金の生産を終了した。日本のアルミ製錬は石油ショックによる電力代の上昇を受け撤退が続出。日軽金が富士川沿いに持つ水力発電所から電力を調達できる蒲原のみが操業を続けてきたが、輸入地金が増加し、老朽化した設備を刷新しても採算に合わないと判断した。今回の撤退で日本でのアルミ製錬は完全に姿を消すこととなった。
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(10)住友電工、HSTに過半出資
住友電気工業は、建設用電線のメーカー販社最大手、住電日立ケーブル(HST)への出資比率を過半へと引き上げ、同社出身者がHST社長に就任した。これにより今後は、住友電工がHSTへの経営に主導的に関わる見込み。従来の出資比率は住友電工と日立金属が各40%、東日京三電線とタツタ電線で各10%。これが日立金属と東日京三の株式売却により住電56%、日立34%、タツタ電線10%の比率に移行した。
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