2025年2月18日

神戸製鋼、PVDコーティングの受託事業に参入

神戸製鋼所は18日、燃料電池用セパレータを代表とする燃料電池や水電解装置の構成部品に特化したPVD(物理蒸着)コーティングの受託事業に参入すると発表した。成長が見込まれる燃料電池や水電解装置でセル(単電池)を構成する各部品の耐久性や電気的特性向上に、生産性の高いインライン型PVD装置を導入して受託事業に参入。付加価値の高いPVDコーティングを低コストで提供。将来は年間数百万から数千万枚のセルの受託コーティング処理に対応、2026年ごろからインライン型PVD装置を用いた年間数万枚の量産処理に対応する計画だ。

燃料電池や水電解装置の今後の市場拡大を想定、30年以降には同受託事業で数十億円規模の売り上げを狙う。

同社では1986年からPVD事業を展開し、600台以上の装置をグローバルに供給、バッチ型PVD装置により機械部品や金型などの分野でPVD技術を普及させてきた。コベルコグループでは今中期経営計画(24~26年度)で「カーボンニュートラル(CN)への挑戦」を最重要課題に掲げ、GX(グリーン・トランスフォーメーション)として燃料電池や水電解装置など、水素利活用の効率化、長寿命化、低コスト化を推進している。この中で、これまで培った技術を、成長性の高い燃料電池や水電解装置の新分野に応用し、水素利活用の発展を図る。

燃料電池や水電解装置はセル(単電池)を数十から数百枚積み重ねて構成され、セルを構成する各部品の耐久性や電気的特性向上にPVDコーティングが用いられ、生産性の高いインライン型PVD装置が求められる。

同社の高砂製作所(兵庫県)にインライン型PVD装置を26年をメドに導入して、受託事業の体制を整える。装置設置を経て順次、受注を開始し、26年ごろからインライン型PVD装置を用いた年間数万枚の量産処理を手掛け、事業を本格化していく。将来は年間数百万から数千万枚のセルの受託コーティング処理を念頭に事業規模を広げる。

インライン型PVD装置は、PVDコーティング装置の形態の一つで、真空引き、エッチング、コーティング、大気解放の役割を持つ複数の炉を直列に繋げた構成で、装置に投入された対象物は一つの処理が終わると次の炉に自動搬送され、生産性が高い。サイクルタイムは数分程度で済む。一方、一般に普及しているバッチ型PVD装置では各プロセスを単一炉内で順番に実施。一度のバッチ処理に数時間を要するため、大量生産には不向きとなる。

PVDコーティングは薄膜コーティング技術で半導体やディスプレイパネルなどの機能膜、自動車部品、切削工具などの硬質膜、時計や水回り品の防護・装飾膜などの用途で活用されている。今後はインライン型PVD装置を活かして受託事業を高度化させていく。

なお、これらの取り組みに関し、19日-21日に東京ビッグサイトで開催中の「H2&FC EXPO第23回国際水素・燃料電池展」で関連パネルの展示を行う。