2025年2月6日

日鉄・森高弘副会長兼副社長/決算会見一問一答 全文

――USスチール買収成立に関する訴訟は厳しい裁判になるとみられている。

「USスチールを成長させる最高の提案であり、トランプ政権の製造業の復権に沿っている。訴訟については2つの道がある。勝訴し、CFIUS(対米外国投資委員会)の審査を再度受ける。もう一つは大統領の権限は強く、トランプ大統領が(前大統領の判断を)くつがえして認める権利を持ち、再審査をする権利も持っているということ。USスチールにとって最良の道と思っているのでぜひトランプ大統領に当社の真意が伝わることを願っている」

「当社の資金と技術力によってUSスチールを強くするのは間違いない。従業員、地域、ユーザーにとってもよく、新しい雇用を創造し、製造業を強くし、強いアメリカをつくることにつながる。社名は変えず、本社も移さず、ガバナンスの内容について基本構図を変えるつもりはない。当社のノウハウを注入するが、日本製鉄がアメリカナイズすることになり、理解を深めていただければアイコニックな企業が買われるという懸念は変わっていくと思う」

――トランプ政権に対する働きかけは。日米首脳会談も予定されているが期待は。

「日本政府には本件について様々なサポートをいただき、非常に感謝している。首脳会談の成功を祈っている。(首脳会談によって)大統領に真意が伝わり、道が開ける一つのきっかけになればと見守っている」

――トランプ政権がカナダなどに対し関税引き上げを行おうとしているが、影響は。

「(カナダやメキシコに)関税かけることを一時延期したが、関税引き上げは需要構造を大きく変え、25年度の鉄鋼市場に大きな影響を与えるものとして影響を見極めようとしている。トランプ大統領のいろいろな政策がどのようなことに影響を与えるのか、当社の収益にどう影響するか、複数のシナリオで検討していく。米国の市場の中にいることが大事であり、なおさらUSスチール買収の必要が増している」

――USW(全米鉄鋼労働組合)とクリーブランド・クリフスのトップが日本製鉄の訴訟に対し、裁判所に請求の棄却を求めたことについて。

「棄却を求めてくることは想定していた。彼らは『(日本製鉄の提訴に)根拠はないから門前払いせよ』と裁判所に求めているが、裁判所が審議する必要がある判断すれば本審議が始まる。当社は本審議に向けて必要な手続きを進める」

――買収期限が6月18日とされているが裁判が続き、結論が出ない可能性がある。6月は期限とはならないのか。

「USスチールと結んでいる合併契約が終わるということではない。仮にそれまでにクローズできなかったとしても(当社の提案が)最良であるとUSスチールが理解し、他の提案より勝っていて前に進めることになれば(契約が)解除されることなく、期限になることはない」



――山陽特殊製鋼の完全子会社化と大阪製鉄の一部株式の売却を決めた。資本政策についての考えは。

「グループ会社はいろいろとあるが、事業環境はそれぞれ異なる。どのような経営課題を持っているかをつまびらかにみて資本政策に反映している。発表した内容以上に決まっているものはない。(資本政策については)大ぐくりでグループ全体として実行していることでもない」

「(グループ再編について)いくつかアイデアはあるが、大きな絵があって一つ一つ実行していくということではない。マーケットの変化が速いので有機的にみてどのような状況かを踏まえながら考えていくことになり、再編が何合目まできたかというのは答えにくい」

――神戸製鋼所との株の持ち合い解消を決めた。

「(提携関係については)常に有効かどうかを検討しているが、目的が達成するなら株の持ち合いはなくてもよい。ガバナンスとして政策保有株を売却している。神戸製鋼との提携関係に変化はなく、(目的を達成できることが)確認できたので持ち合いを解消し、前に進むことにした」