2024年12月31日

2024年鉄鋼十大ニュース

1 中国からの鋼材輸入大幅増、通商措置検討

 中国が減少する需要の一方で高水準の粗鋼生産を続け、1億トンを超える大量の鋼材を輸出。日本の鉄鋼輸入は4年連続増える見通しで、中でも亜鉛めっき鋼板やステンレス鋼板など中国からの輸入が過去最高水準に達している。国内市場への影響を懸念する日本鉄鋼連盟は前例のない通商措置検討に入り、経済産業省と急ぎ議論を進める。



2 国内外の需要低迷、粗鋼減産続く

 外需の不振から自動車生産が伸び悩み、建機・産機の生産が大幅に減少。人手不足・資材高が深刻化し、建設需要が後退した。海外の需要減と鋼材安から輸出も減った高炉・電炉各社は生産調整を継続。2024年の全国粗鋼は8000万トン台と3年連続減り、9000万トンを3年連続で下回り、新型コロナ禍に直面した20年の水準にとどまる見込みだ。



3 高炉3社そろってトップ交代、新体制に

 高炉3社のトップが4月1日付で交代。日本製鉄の今井正社長兼COOは橋本英二会長兼CEOからバトンを受けグローバル粗鋼1億トン、連結事業利益1兆円の達成に向かう。JFEホールディングスの北野嘉久社長とJFEスチールの広瀬政之社長は構造改革の効果を発揮しつつ新たな成長の絵を描く。神戸製鋼所の勝川四志彦社長は新中期経営計画をけん引。3社は脱炭素、海外戦略と共通の課題に挑む。



4 日本製鉄・JFEスチール、海外原料大型投資

 日本製鉄は年初のカナダ原料炭のEVR権益取得手続き完了に続き、1000億円超をかけてオーストラリア・ブラックウォーター原料炭権益20%取得、開発負担含め約1460億円規模のカナダの高品位カミ鉄鉱山の権益30%取得、開発で合意した。ブラックウォーターにはJFEスチールも500億円超、10%の権益投資を決めた。



5 日本製鉄、グループ会社再編に着手

 日本製鉄は電縫鋼管事業の再編とステンレス子会社の吸収合併を決めた。自動車の電動化や国内人口減少などで鋼管、ステンレスとも今後の需要増加が大きく見込めない中、研究開発リソースを本体で一元化することなどで、グローバル競争力のさらなる強化を目指す。カーボンニュートラル対策も急務で、成長のための構造改革は続く。



6 GX支援政策が進展、設投採択・市場創設も

 GX経済移行債を活用した排出削減が困難な産業の製造プロセス転換支援の鉄鋼分野の公募が開始、GX実装設備投資でJFEスチールの電炉投資が採択された。政府は公共調達などを通じてグリーン鋼材、GX製品の市場創出の取り組みも具体化し、GX率先実行宣言制度も創設。排出量取引制度本格運用へも詰めの議論が始まった。



7 春闘過去最高の賃上げ、異例の単年度要求

 春闘は3月の回答で日本製鉄は月額3万5000円、JFEスチール、神戸製鋼所は3万円の賃金改善で応じた。2年サイクルの通例に対して、前回は異例の単年度要求だったのに続き、基幹労連は来年春闘で再び単年度で1万5000円の賃金改善を打ち出した。継続的な賃上げ、好循環に向けて焦点の春闘を迎える。



8 鉄スクラップH2が3年半ぶり4万円割れ

 H2鉄スクラップのメーカー炉前購入価格が3年半ぶりにトン4万円を割り込んだ。日本の主要輸出先である韓国やベトナムなどで鋼材内需が減退したほか、中国からビレットの安値輸出攻勢もあり、需給に影響を及ぼした。主原料価格下落は普通鋼電炉メーカーのスプレッド拡大に寄与する一方、製品市況にとってはマイナス要因に。



9 鉄鋼流通企業の連携・再編進む

 阪和興業とアイ・テックが物流改革に向けた協業の検討を始めると12月に発表。物流問題など鉄鋼流通が抱える課題に企業間の連携で立ち向かう動きが活発化している。小野建がステンレス販売のマツオメタルをグループ化するなど、需要や労働人口が減少し厳しさを増す市場環境に対応しようと流通再編が進み始めている。



10 日本製鉄、USスチール買収へ大詰め

 日本製鉄が2兆円規模の米USスチール買収合意を1年前に打ち出し、米大統領選挙の過程で民主、共和とも反対を表明するなど政治問題化。USスチールの成長のために最先端技術を投入し、競争力を強化、米産業、国家安全保障の強化にもつながると日本製鉄は繰り返し訴えた。米政府の審査で結論が出ず、大統領判断に委ねられた。

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九州現地印刷を開始

九州地区につきましては、東京都内で「日刊産業新聞」を印刷して航空便で配送してまいりましたが、台風・豪雨などの自然災害や航空会社・空港などの事情による欠航が多発し、当日朝に配達できないケースが増えておりました。
 こうした中、「鉄鋼・非鉄業界の健全な発展に寄与する専門紙としての使命を果たす」(企業理念)ことを目的とし、株式会社西日本新聞プロダクツの協力を得て、12月2日付から現地印刷を開始いたしました。これまで九州地区の皆さまには大変ご迷惑をおかけしましたが、当日朝の配達が可能となりました。
 今後も「日刊産業新聞」「日刊産業新聞DIGITAL」「WEB産業新聞」によるタイムリーで有用な情報の発信、専門紙としての機能向上に努めてまいりますので、引き続きご愛顧いただけますよう、お願い申し上げます。
2024年12月 株式会社産業新聞社