2023年7月20日

太陽鉱工、脱炭素急ぐ 焙焼排ガスCCU検討 グリーン合金鉄も視野

フェロモリブデン、フェロバナジウム大手の太陽鉱工は低炭素プロセス転換に向けて炭素の回収・利用・貯留(CCU)を具体化する。スコープ1、2の二酸化炭素(CO2)排出量の半分近くを占める使用済み触媒からの有価金属回収工程のうち焙焼工程に焦点を当て、排ガスからのCCUの検討に入った。グリーン合金鉄ニーズにも備えながら、所有山林の吸収源や太陽光発電事業の活用などを通じて、2030年の排出13年度比38%減、50年のカーボンニュートラル達成を目指す。

太陽鉱工は石油精製触媒からモリブデン、バナジウムを回収するリサイクル事業を1970年代から展開している。回収したモリブデン、バナジウムは主力のフェロモリブデン、フェロバナジウムの原料の一部を賄うほか、リサイクル原料を高純度化する技術を生かして化学製品や金属バナジウムなど高付加価値品を生産している。

鈴木一史社長によると、触媒に付着して持ち込まれる原油が焙焼工程で燃焼することがCO2の主要な排出源。スコープ1、2で約1万1000トンの全社年間CO2排出量に対して、焙焼が約5000トンを占める。焙焼時の排ガスからCO2を回収、活用する課題について、エンジニアリング会社を起用、検討に入っている。

残るCO2は排出量6000トンは省エネ設備導入などを通じて削減する。その上でカーボンオフセットとして太陽光発電への投資や自社とグループ会社が四国、島根に所有する山林と連携、所有林をまとめることで一定規模以上の植林事業など、CO2吸収源を育成したい考えだ。

将来に向けて低・脱炭素化を進めながら、より短期でのグリーン合金鉄供給も視野に入れる。テルミット方式の合金鉄生産工程は比較的CO2排出量は小さいが、生産工程でのCO2排出量を実質ゼロとする前の段階でも、需要家の要請に応じてマスバランス方式によるグリーン合金鉄供給に備える。

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