2022年4月6日
普通鋼電炉 諸コスト高で採算苦境 4月以降、電力分2000円超
普通鋼電炉メーカーがコストアップで苦境に立たされている。主原料・鉄スクラップ価格が続騰する環境下、鉄スクラップ価格以外の各種コストも大幅に上がり、3月末時点の鉄スクラップ価格を除いた各種コスト(エネルギー、合金鉄、副原料・副資材、運搬費など)は約1年前に比べて、おおむねトン当たり5000―6000円上昇した。4月以降は、「電力料金でトン2000円超引き上がる」(大手電炉メーカー)見通し。
ロシア・ウクライナ情勢で先行きの予測が難しい合金鉄の価格などを含め、2022年度は一段のコストアップを余儀なくされ、一方で鋼材販売価格の改善がコスト上昇に追いつかず、普通鋼電炉メーカーはかつてない危機的な状況に追い込まれている。
関東地区普通鋼電炉の粗鋼生産量(産業新聞社調べ)は年間430万トン前後。鉄スクラップ価格変動分を除いた3月末時点における各種コスト上昇分を6000円前後として単純に掛けた場合、関東地区全体で258億円規模の損益マイナス影響が及んだことになる。
4月以降の電気料金引き上げ分2000円超は86億円以上のコスト悪化要因になる見込み。各社の契約形態や地域によって電気料金などの状況は異なるものの、関東以外のエリアでも大きなコスト負担増を強いられそうだ。
脱炭素化への対応に伴う世界的な「グリーンフレーション」(環境変動対策を表すグリーンと、インフレーションをかけ合わせた造語)が、鉄スクラップをはじめとする原材料価格や各種コストのステージを変え、製造コストを押し上げている。
また、ロシア・ウクライナ情勢によって世界に鋼材や鉄スクラップの供給不安をもたらし、鉄スクラップ価格が急騰。5日時点の国内鉄スクラップ価格(H2)はトン当たり6万5000―6万6000円が中心で、22年初めから3カ月で同1万3000円前後上昇した。合金鉄や原油など他の資源価格も高騰しており、今後、コストとして重く圧し掛かってくる。
普通鋼電炉メーカーは大幅なコストアップを背景として、製品販売価格の改定に取り組んでいる。ただ近年、コスト変動は急ピッチであり、異形棒鋼で取り組みを継続している商慣習の見直しなど抜本的な対策を講じる必要性が生じてきている。
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