総合商社7社の2020年3月期連結決算が8日出そろったが、金属関連事業の純損益は三井物産、伊藤忠商事の2社が増益で、三菱商事、双日、豊田通商の3社が減益、住友商事、丸紅の2社が赤字となった。鉄鉱石価格が上昇する一方で石炭や銅の価格が下落し、エネルギー向け鋼管ビジネスも低迷する中、得意分野の違いで明暗が分かれた。今期については、新型コロナウイルスによって地球規模で経済活動が停滞しており、多くが鉄鋼・非鉄分野の需要減少と価格低迷を想定している。
8日発表の三菱商事は金属資源グループの純利益が前期比15・9%減の2122億円となった。チリ銅事業再編に伴う一過性利益767億円を法人税所得に計上したことや前期に計上したチリ鉄鉱石事業における減損の反動の一方、豪原料炭事業における収益減、海外製錬事業における減損などが響いた。鉄鋼製品・炭素・機能素材の3本部で構成する総合素材グループの純利益は26・1%減の260億円だった。鉄鋼製品事業における持分利益や炭素事業における取引利益が減少した。今期収益予想は公表を見送った。
同日発表の伊藤忠商事・金属セグメントの純利益は41・4%増の1113億円だった。石炭価格の下落はあったものの鉄鉱石価格の上昇に加え、伯鉄鉱石事業の配当増、資源案件の税金費用減などが寄与した。主な関係会社の連結・持分利益は、豪鉄鉱石・石炭事業IMEAが834億円(前期601億円)、伯JBMFが94億円(17億円)、伊藤忠丸紅鉄鋼が112億円(121億円)。今期についてはIMEA鉄鉱石事業の数量増やコスト改善を見込むが、資源価格下落、前期の一過性利益の反動などを織り込み、純利益予想を約30%減となる770億円と設定した。
同じく同日発表の住友商事は金属事業部門の純損益が前期の404億円の黒字から500億円の赤字となった。北米鋼管事業が減益となり、海外スチールサービスセンター事業も低調だった。北米鋼管事業の減損、在庫評価損を約600億円計上した。主な連結・持分利益は、住友商事グローバルメタルズが70億円(前期77億円)、マレーシアのアルミ製錬事業が16億円(31億円)。油井管機器用部品の加工・販売を行うHOWCOグループの持ち株会社エリンジウムが87億円の損失(3億円の利益)、エネルギー向け鋼管・鋼材のグローバル・ディストリビューターのエジェングループも160億円の損失(18億円の黒字)を計上した。新型コロナウイルス影響等で、北米鋼管事業が需要低迷と鋼管価格下落に直面し、海外SC事業も自動車向けを中心に操業率が低下している。今期の損益予想は公表を見送った。
三井物産・金属関連事業の純利益は6・2%増の1880億円。金属資源が9・6%増の1832億円、鉄鋼製品は51・8%減の47億円。金属資源は豪州鉄鉱石事業における販価上昇、数量増加が増益に寄与したが、石炭販価の下落やコスト増による豪州石炭事業の減益、モザンビーク石炭・インフラ事業における減損などが足を引っ張った。鉄鋼製品は景気減速に伴う事業会社の収益減、トレーディング不調に加えて、前期にあった関係会社土地売却益の反動もあった。今期の純利益予想は金属資源が34・5%減の1200億円、鉄鋼製品が6・4%増の50億円で、金属関連事業としては33・5%減の1250億円程度となる見通し。
双日の金属・資源セグメントの純利益は34・0%減の201億円。海外石炭事業における販価下落などによって売上総利益が45・8%減の204億円にとどまり、持分法投資損益も悪化した。今期の純利益予想は35・3%減の130億円。
豊田通商・金属本部の純利益は46・2%減の189億円。自動車生産の減少と市況下落、資源事業における減損などが重なった。今期予想は「新型コロナウイルス感染拡大の影響が不透明で合理的な算定が困難」として公表を見送った。
丸紅・金属セグメントの純損益は前期の417億円の黒字から57億円の赤字となった。石炭価格の下落などで営業利益が117億円(前期136億円)に後退。鉄鉱石事業は増益だったが、チリ銅事業の減損が響き、持分法投資損益が165億円の損失(410億円の利益)に大きく後退した。今期の純損益予想は260億円の黒字。