普通鋼電炉工業会の明賀孝仁会長(合同製鉄社長)は9日、都内の鉄鋼会館で定例の記者会見を開催した。
明賀会長は建設関連指標について、「2018年5月の建築着工床面積は構造計で1090万平方㍍と1―3月の低迷から脱したものの、前月比でマイナスとなった。鉄骨造はほぼ横ばいで、鉄筋コンクリート造は4月に比べて低下した。用途別では居住用が670万平方㍍、非居住用は420万平方㍍で、ともに4月比で若干低下。居住用の鉄筋コンクリート造は136万平方㍍と高い水準にあり、全国的にマンションの着工レベルが高いことが寄与しているのではないか。土木に関しては4月の公共工事受注金額が前年同月比3%減になったものの、民間土木工事受注は11%増で引き続き好調だ」などと分析した。
鉄筋用小棒の状況に関しては、「18年5月における鉄筋用小棒国内向け出荷量は65万3000トンと前年同月比7・3%増加。生産は出荷見合いの規模が続いており、小棒全体の在庫率は84%で安定している。17年12月から18年3月にかけての建築着工床面積の低迷が今後の鉄筋用小棒出荷量に影響する懸念がある」と述べた。
また、明賀会長は、「世界経済は総じて堅調。ただ、米国通商拡大法232条発動を機とする米中の保護貿易処置の応酬などで混迷の度が増している。米国が貿易収支の改善を出口とした施策を進めており、日本製造業による高水準の稼動に影響を与えるようであれば内需を主体とする普通鋼電炉業界も無関係ではない。コストを取り巻く環境は中国が鉄スクラップ利用を促進しており、溶銑比を1%引き上げただけで年間800万トンの鉄スクラップ消費に影響を及ぼし、また電炉への生産シフトで黒鉛電極の需給にもインパクトを与える」と指摘した。