2018年3月7日

神戸製鋼 ■会見 一問一答

会見者
右から
水口誠専務執行役員
川崎博也会長兼社長
門脇良策経営企画部長

――辞任をきめた理由は。

川崎「今般の不適切行為で、極めて多くの取引先に迷惑をかけた責任は大きい。報告書の再発防止策を確実にスピーディーに実行し、神戸製鋼は変わったと思っていただけるためにも新たな経営体制にするべきと考えた」

――社長退任を決断したのはいつか。誰かに相談はしたか。

川崎「これまで外部調査委員会への最大限の協力と再発防止策の検討とを全うすることだけを考えてきた。取締役会で辞任を申し出たのは昨日だが、外部調査委員会から1週間前に骨子を聞き、そのあたりで覚悟はした。相談はせず1人で決めた」

――次期社長はどのような基準で専任するのか。

川崎「報酬指名委員会は4月1日以降に設置されるので、再発防止策でリーダーシップが発揮できるか、神戸製鋼の3本柱(素材、機械、電力)の成長戦略を描けるかという基準で、独立社外取締役会議に相談して決めたい」



――外部調査委の調査で新たな不正が発覚した。従来の525社と合わせて不正品の出荷先は何社になる。

水口「新たに発覚した163社を足したうえで、重複している会社数を引くと605社になる。このうち海外顧客は222社ある」

――安全性検証はいつごろ完了する予定か。

川崎「可能な限り速やかに検証を進めたい。現時点ですぐに部品交換やリコールが必要なものはないと理解してもらって良い」

――再発防止策の実施状況を把握、公表する予定は。

川崎「外部委員のみの外部監督委員会が取締役会に報告する。どのような内容を公表するかは検討していきたい」

――外部調査委の最終報告書をそのまま公表しなかった理由は。

水口「米司法省やカナダでの(神戸製鋼への)訴訟などが存在する。弁護士との間で秘匿特権があり助言を受けることがどこの国の法律でも認められているが、外部調査委の報告書を公表すれば秘匿特権を放棄したとみられる。このため、神戸製鋼所としての調査報告書を出した。この中身については、外部調査委の報告書の事実関係を忠実に反映しており、独立社外取締役5人にも齟齬や省略、歪曲がないことを確認してもらっている」

――不正があったのは1970年以降と言う理解で良いか。

水口「70年、80年代は物的証拠がないが、ヒアリングの中で複数の方が確度の高い証言をしたものを口述ベースで選定した」

――アルミ・銅事業で不正が起きた背景をどうみる。

川崎「直接的原因は工程能力に見合わない顧客仕様に基づき受注していたこと。根本的な原因としては、収益偏重の経営と不十分な組織体制があった。事業部門として十分な収益がなく、プレッシャーが無理な受注に走らせた。として本社のガバナンスも品質面では不十分だった。本社からの(不正の)指示はいっさいない」

――契約内容がオーバースペックだったのでは。

川崎「お客様の仕様にサプライヤーとして合わせないといけないのは当然。それはオーバースペックでなく、造り切れるかどうかメーカーとして正確に理解しているかどうかが問題だ」

――社外取締役の人数は変わらないが、それでは歯止めにならないのでは。

川崎「これは最終の形ではなく、増やしていく可能性は否定しない」

――現場の声が経営陣に届きにくいことが今回の重要なポイントかと思うが、それに対応する重要な施策は。

門脇「社員のコンプライアンス意識調査を始め、無記名で声を吸い上げる。品質管理で現場が困っているだろうということで、品質キャラバン隊をつくり現場の声を吸い上げていきたい」

――素材系の再編とは、今の枠組みをなくすのか。

川崎「鉄鋼とアルミ・銅で分けているが、製造プロセスは鋳造、鍛造、押出、圧延と両事業部門に共通する。さらに顧客からすれば、例えば自動車会社にはアルミも鉄も購入してもらっている。マルチマテリアル戦略の視点でも、2つに分かれている必然性はない。(今の枠組みがなくなるかは)これからの議論になる」

――カナダでの訴訟の損失は。それ以外に訴訟はあるか。

門脇「訴状が出されたことは認識しているが、現在も正式な訴状は受け取っていない。それ以外では米国で訴訟が起きたと聞いているが、こちらも訴状は受け取っていない。米国での訴訟による賠償は最大でも38億円だ」

――会長職を廃止する狙いは。

川崎「定款上、取締役会議長は会長となっているが、さらなる透明性確保の観点から独立社外取締役から取締役会議長を選出すると決めた。会長職を廃止するのはそのためだ」

――過去にも品質問題以外に様々な不祥事があり社長が引責辞任している。種類は違うがなぜ繰り返される。

川崎「過去に品質以外のコンプラ違反も起こしてきたが、対症療法的だった。品質以外のコンプラも健全に進めねばならない。そのため、品質、リスク管理を総括する取締役を置き、その下に専門の執行役員を外部招へいする。品質以外にも神戸製鋼の弱点を立て直したい」

――神戸製鋼という会社の歴史で、今回の不正はどういった位置づけと考えるか。

川崎「神戸製鋼はモノづくりを生業にする会社。昨年来、事業所訪問して社員にはコベルコブランドが毀損すれば会社は倒産するかもしれないと訴えてきたが、112年の歴史でコベルコブランドが毀損されたのは初めてだっただろうと思う」

――5年間社長を務めて成果と課題を。

川崎「社長就任は13年4月だが、12年度決算は悲惨だった。上工程の再編や電力事業を進めてきて、モノづくりで今回の事案があったことは残念だが、それを見つけて変えられたのではないかとの思いはある」

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