17日に発表予定の東京製鉄の4月販売価格は、全品種で据え置きとなる公算が大きい。原料の鉄スクラップ市況は下落基調が続いているが、関東と中部以西では下げ幅に開きがあり、最も高い九州工場の買値は、宇都宮工場に比べトン4500円高く、原料コストが大幅に下がったとは言えない状況だ。電気料金や人件費、輸送費など、コストアップ要因が山積する中、為替の円安進行で輸入資材の電極価格も上昇しており、東鉄では、新年度以降の採算確保に向け、メタルスプレッドの維持が不可欠と見ているようだ。
鉄スクラップ市況は昨年末から軟調に推移し、足元の関東の炉前価格は直近の最高値からトン1万円下落している。鋼材市況は全般的に横ばいだが、品種によっては荷動きが悪化しているものもあり、市場では「値下げの可能性もゼロではない」との観測が浮上していた。
こうした中で、11日実施された関東鉄源共同組合の輸出入札では、平均落札価格がFASトン3万900円となり、入札前の予想を上回る結果となった。3万円を割り込んでいる関東湾岸の浜値よりも高い水準となったことで、底入れが近いとの見方も出ている。
鉄スクラップ市況の軟化は、韓国向け輸出の減少を皮切りに、大三製鋼の事業撤退、朝日工業の大雪被害による製鋼停止と、立て続けに関東からの販路が狭まったことに加え、内航船不足で西送りが停滞していることが要因となっている。ただ、内航船については例年3月に輸送量がピークを迎えることが多いため、4月以降は需給が緩和され、西送りも次第に回復に向かうと予想される。
ゼネコンなどの需要家側は鉄スクラップ続落を受け、鋼材市況の先安を見込み、発注を抑える動きもある。しかし、電炉メーカーにとっては、「ようやく製品価格に見合う原料が入荷し、2月あたりから採算が取れてきたところ」(電炉幹部)であり、現状のスプレッドは何としても維持したい意向。このため、4月の販売価格は東鉄以外の電炉メーカーも、据え置く可能性が高いとみられる。