日立金属は11日、耐酸化性と強度を向上した燃料電池用素材である金属インターコネクター材を開発したと発表した。クリーンでエネルギー変換効率が高い燃料電池の普及に向けて、高性能素材を供給する。
新開発したインターコネクター材(ZMG232J3、ZMG232G10)は、05年に同社が開発したフェライト系ステンレス(ZMG232L)に導電性、耐酸化性および強度を向上させた素材。特にZMG232G10は特殊元素の添加により、フェライト系ステンレスZMG232Lに対して固体酸化物形燃料電池(SOFC)セルの劣化の原因となるクロム蒸発をやや抑制した合金。
両素材とも電解質YSZ(ジルコニアセラミックス)に近い熱膨張係数を有する。またセルとセルとの積層を可能とし、電力負荷に追従した運転にも対応する。
日立金属はこれまで、継続してインターコネクター材の開発に取り組んできた。SOFCを構成する重要部品であるインターコネクター(セパレーター含む)は、セル同士を電気的に接続する役割を持ち、材料に要求される特性として作動温度(例=セ氏700―850度)での長時間の耐酸化性、良好な電導性、電解質に近い熱膨張係数がある。しかし、一般的なフェライト系ステンレス(SUS430)などでは耐酸化性が不足し、耐酸化性に優れたニッケル合金鋼などでは熱膨張係数が大きく、アルミ添加合金でも酸化被膜の導電性が不十分などの課題があった。
新素材はこれらの要求特性を満たす金属材料として、家庭用分散電源から火力発電との複合発電に至るまで、幅広い分野での燃料電池用素材としての利用が期待される。