北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の下田達也教授らの研究グループは7日、液体のシリコンを基板にインクのように塗って太陽電池を製造することに世界で初めて成功したと発表した。
従来の太陽電池より簡単なプロセスで造ることができるため、製造コストを60―70%低減できる可能性がある。太陽電池は環境性などの観点から使用が増加しているものの、高コストが課題となっている。今回発表した技術を使って商用電力並みのコストの太陽電池ができれば、需要の一層の拡大が期待できる。下田教授らは今後、国内大手太陽電池メーカーなどと共に、早期の実用化を目指す考え。
半導体のもととなるシリコン材料は現在、固体と気体に限られている。液体シリコンから太陽電池が製造できれば、コストを抑えることができると期待されていた。しかし、溶液状のシリコン(シリコンと水素の化合物)は酸化しやすく、扱いが難しいとされてきた。下田教授らは液体シリコンに有機溶媒を加えて不純物を除き、均一な膜を製造する技術を確立した。
また基板上の液体シリコンを、1分間に約3000回の高速で回転。その上で摂氏約400度で数十秒ほど加熱し、半導体の薄膜を形成した。このプロセスを3回繰り返して3層の薄膜を造り、それをもとに太陽電池を作製した。発電能力は既存品の20%程度だが、今後膜を多層化することで性能を高める。