三菱商事グループで金属トレーディング事業を手掛ける三菱商事RtMジャパン(東京都千代田区、圡井田安広社長)は、リチウムのビジネスを強化していきたい考えだ。自動車市場のEVシフトでリチウムイオン電池(LiB)の生産が大きく伸びる中、あらゆるタイプのLiBに必要なリチウムは確実に需要が増す。サプライチェーンに食い込んでビジネスチャンスを探るほか、調達先の多角化なども模索する。
同社は昨年4月に電池・モビリティー事業本部を設置。電池材料、水素材料、レアメタル、自動車用アルミ材の4事業を集約し、成長が期待される次世代自動車やバッテリーに関する事業の拡大に向けた横断的な組織体制を整備した。
圡井田社長は同事業本部について、「まだ収益に大きく貢献するところまでいっていないが、着実に前進している」と手応えを感じている。また、EV関連ビジネスの本格化は長い目で見ていく必要があるとした上で、「最初の段階でしっかり入り込むことが重要」と語る。
LiBは、日本などではニッケル・コバルトなどのレアメタルを使用したタイプが中心になっている。だが中国ではリン酸鉄系のLiBが急速に拡大しており、欧米でもリン酸鉄系の採用を検討する自動車メーカーが見られ始めている。いずれのLiBにも必要なのがリチウムで、確実な需要が見込まれる。
同社のリチウム関連ビジネスは、豪州産のスポジュメン精鉱を取り扱っているほか、LiB正極材に使用されるリチウム化合物の取り扱いも近年増えている。圡井田社長は、EV・バッテリーサプライチェーンの幅広い企業との取引を通じて「インサイダー化」を図り、今後のニーズがどうなるのか的確に捉えていくことが重要だと考えている。
化合物を生産する企業との関係深化や顧客の多様化を今後も推進していく方針。リチウム化合物の生産は中国が高い世界シェアを有するが、将来的には中国以外に調達先を広げていくことも視野に入れる。
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