特金スクラップの輸出比率が高まっている。国内ステンレスメーカーの購入量減少と原料選別強化により、ニッケル純分の少ない低品位スクラップでは荷余りが生じ、海外で売りさばくケースが多くなっている。直納問屋筋の販売比率も輸出が国内向けに近づき、「ガス抜き」と言われた海外向けの商流が拡大してきた。
国内ステンレスメーカー向けに長年納入してきた直納問屋は、「以前に比べて輸出割合は2割ほど上がっている」と明かす。ステンレス生産は今年に入り落ち、メーカー稼働率は月を追って低下。昨年まで積極的だったメーカーも「原料の置き場が足りなくなった」(業界筋)という理由で在庫調整に入っている。
ニッケル系を主力とする特金スクラップは、純ニッケルのめっき滓や高ニッケルのリードフレーム材、低ニッケルの耐熱鋼や切削・研磨粉(スラジ)までさまざま。ステンレス・特殊鋼メーカー向けのスクラップ納入枠はニッケル純分換算で取り決められるため、重量がかさばり不純物を含む低ニッケルスクラップは敬遠され、メーカーは購入条件の引き下げ措置も取っている。最近は引き取り拒否など、原料選別の姿勢を一層強くしている。
特金スクラップの国内需給は、発生減少と需要低迷のため、全体的には縮小均衡しながらバランスを保っている。しかし、高ニッケル品に比べて低ニッケル品は引き合いが少なく、メーカー稼働率が落ちた春先から市中にも余剰感が顕在化していた。そのため余剰玉の海外放出が増え、従来のスポット取引から定期取引にシフトしつつある。
輸出専門業者を除く直納問屋による特金スクラップ輸出は、これまでは余剰玉放出のいわゆる「ガス抜き」の名目だったが、現在は問屋の低品位スクラップの荷繰りに欠かせない商流となってきた。また、輸出向けはこれまで国内向けと比べて価格条件が安いとされてきたが、国内メーカーの購買条件引き下げによって差が縮まっていることも、輸出に流れやすくなった原因と言えそうだ。
別の直納問屋は「ひと昔前は国内ステンレスメーカーも、原料を囲い込むため原料問屋の輸出を監視していた向きもあったが、今はそうした圧力もなくなった」と話す。ステンレスの生産回復が見込めない中、輸出比率はさらに高まる可能性もありそうだ。