機械選別への期待
スクラップに関する選別機械は、シュレッダー(破砕機)をはじめ、磁選機や金属と卑金属を選別する渦電流選別装置(エディカレント)、非鉄スクラップからアルミや銅、マグネシウムなどを別ける重液(比重)選別装置、カメラ・X線選別装置などがある。ナゲット加工は、破砕機や粉砕機、乾式・湿式選別機などが主体となる。
ただ、選別機械を導入すれば、あらゆるスクラップに対応できるというわけでもないようだ。シュレッダーやナゲット加工業者の多くは、破砕機の前工程に作業者を置き、大物や金属分の高い物を回収している。「これをやるかやらないかで収益や設備のメンテナンス費用が大きく変わってくる」(シュレッダー業者)。
ナゲット加工も、雑線を無選別で加工した雑ナゲットに注目が集まっているが、ナゲット内に銅線や錫メッキ線、黄銅などが混在するため、赤(銅線のみ)ナゲットに比べて安価で買い手も限定され、接続端子やナットといった雑線の付属品を同時に破砕機にかけるため更新費用が高くなり、「結局、導入を断念するケースが多い」(ナゲット加工設備の販売会社)。
赤、白(錫メッキ銅線)、雑ナゲットといった豊富なラインアップで幅広いユーザーを取り込むには、やはり人手による前処理が必要不可欠となる。
手選別のノウハウがある国内スクラップ業者や中国系輸出業者の中には、新たに設備を導入することなく、ひたすら雑品類を手解体・選別しているところもある。中国系業者のヤードは、従来は男性作業者が多かったが、「本土から呼び寄せたのか、最近は中年の女性が作業している姿を目にする。中国式選別を日本で実践しているようだ。国内業者と本気度が違う」(大手シュレッダー業者)。
設備導入には初期費用のほか、前処理の人員確保、ダストの処理費用、鉄・非鉄相場の変動などのリスクがあり、高精度で大量にさまざまな金属を回収できたとしても、国内や海外に受け皿となる需要家を確保する必要がある。
ダストの処分費用をどのように捻出するか
雑品や低品位スクラップをシュレッダー(破砕)した際、鉄・非鉄といった金属以外にゴムやプラスチック、紙、ガラスなどがダストとして発生し、雑線はナゲット加工の工程で、銅線の被覆に使用されるポリ塩化ビニール(PVC)やポリエチレン(PE)、ゴムなどが発生する。
シュレッダー由来のダストは、焼却(サーマルリサイクル)施設で処分されているが、発生量の増加や処分施設の不足で地域によっては受け入れ数量が制限され、シュレッダー業者がダストの処分量に見合った数量しかスクラップを入荷できなくなっている。
ナゲット由来のPVCやPEも、従来は有価で取引されたが、足元はナゲット業者が産廃として処分費用を支払っている。ナゲット業者は「キロ1円でも売れたものが今では25円近くの処分費用を支払っている。雑線の買値を下げて処分費用をねん出するしか術がない」と話す。
今後予想される低品位スクラップの流通拡大は、すでに選別設備を保有し償却が終わっているシュレッダー・ナゲット業者や手選別業者、または排出者がダストの処分費用を支払う産廃業者にとって扱い量を増やす機会となりそうだ。「産廃処理に関する申請が増えるのでは」(関西地区の大手産廃業者)
輸出業者の国内シフト
中国系輸出業者の一部は、雑品や雑線などの取り扱い量を減らし、輸出の影響が小さい1号銅線(ピカ線)や並銅、込み黄銅など一品物(通称6類)のスクラップの調達を強化している。地区によっては中国系業者がピカ線の高値をけん引しており、従来のように中国系業者は雑品類、国内業者は一品物といった棲み分けや、得意とするスクラップを融通し合う協力関係にも変化が起きている。
これまで日本は、「原材料の輸出」や「商売」を名目にスクラップに含まれるダスト(ゴミ)も中国に輸出してきた。いうならば、世界各国が排出したゴミを中国が燃やしてきた。
今回の中国の数々の取り組みにより、排出したスクラップやゴミを自国でリサイクルや処分する契機となり、国内のスクラップ業者がさらに選別ノウハウを蓄積し、より洗練されていくことを期待したい。
(石橋 栄作)