関東地区で、中国向け輸出スクラップが買い止め状態に陥っている。東京電力福島第一原発のトラブルの影響か、関東地区でも通常より多い放射線量が観測され、輸出を見送らざるを得ないケースが発生。輸出価格の下落も重なり、輸出業者に買いを見送る動きが急速に広がった。港湾部の被害も一部で見られており、当面は荷動き低迷が続く可能性がある。
中国は、自国の環境保護基準に基づき輸入スクラップの品質検査を厳格化している。中国向けスクラップ輸出に必要な輸出ライセンスは、昨年末の更新分から放射線探知器の所持が必須条件に加えられるなど、放射線に対する規制強化も進める。
中国向けスクラップの船積み前検査を手掛ける日中商品検査(本社=東京・茅場町、孟慶発社長)によると、関東地区で検査時の大気中の放射線基準が、中国の許容基準を超過する事例がここにきて報告されている。輸出した場合、品質に問題がなくても中国側の荷揚げ検査で拒否される可能性があるという。
千葉にヤードを構える輸出業者は、「中国側の判断がどうなるのか現状では分からないが、とりあえず買いを見送って慎重に対応するしかない」と困惑する。前日船積みを行った別の業者も、16日は荷受けを止めた。
放射線問題に加えて、足元の銅相場急落で中国筋の購入価格が一段と下がっていることも輸出業者の買い気を鈍らせる。込み黄銅(鉄などの混入がないもの)の輸出業者買値は、先月末にキロ420円を超えたが、15日は400円割れ。雑品も50円前後から40円台前半に切り下がった。
神奈川の大手輸出筋は「契約するシッピングヤードで設備と岸壁に不具合が見つかり、積み出しが困難」と話し、東日本大震災の直接的な被害も一部影響しているもよう。放射線問題や物理的被害が解消し、先安懸念も払しょくされなければ、スクラップ輸出が正常化するのは難しそうだ。