建設用電線(建築物の屋内配線に使う電線)の供給難が深刻だ。複数の主力製造拠点が被災で操業停止した影響に加えて、被覆に使う樹脂コンパウンドや可塑剤の入荷がストップ。西日本などの稼働可能な工場でも、手持ち資材の範囲内でしか生産対応できない。製品の出荷についても、燃料やトラックの確保が困難で、モノはあっても配送できない状況が拍車をかける。電線メーカー各社は、石化製品の代替ソースを模索し始めた。
需要面では、工場などの配線に使う6キロボルトの高圧CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)、住宅などの配線に使うVVFケーブル(ビニル絶縁ビニルシース平形ケーブル)の引き合いが、足元目立って増えている。高圧CVは被災工場の復旧向け需要が増え、福島第1原発向けの緊急出荷もあった。VVFは仮需の側面が強いようだ。
日立電線、住友電気工業、タツタ電線が共同出資する建設用電線販売会社、住電日立ケーブル(HS&T)は、製造委託先の一つ、日立電線・日高工場(茨城県日立市)の操業停止により、高圧CVの供給能力が通常時の2―3割にダウン。タツタ電線・大阪工場(東大阪市)に増産を要請した。タツタ電線は「最大限協力していく」とコメントしている。
高圧CVでは、ビスキャス・市原工場(千葉県市原市)も操業停止中。フジクラと三菱電線工業が共同出資する建設用電線販売会社、フジクラ・ダイヤケーブル(FDC)と、古河電気工業グループの建設用電線販売会社、古河エレコムに製品供給している。
FDCは、製造委託先の一つ、米沢電線・郡山事業所(福島県郡山市)の操業停止で、IV電線(ビニル絶縁電線)の供給難にも直面する。「外注先に頼んでも米沢電線ほどのキャパシティはない」と説明する。
一方、樹脂コンパウンドや可塑剤の主要サプライヤーが、被災で工場の操業を停止し、電線メーカーへの新規入荷がほぼストップ。電線各社は現状、手持ちの在庫で生産対応しているが、次回入荷の時期が全く見えず、手探りの操業となっている。「特にビニル系のものが入ってこない」(大手電線メーカー筋)との声がある。
電線各社は週明け早々に、海外材を含めた代替ソースの検討を始めた。しかし、新規材料を使う場合、押出特性の評価などが必要なため、量産ベースでの実用には1カ月など時間を要するもよう。
物流面では、販売各社の在庫・切り分け・配送センターが、東日本エリアで広く被災しており、操業再開可能な首都圏の拠点を中心に、数日―週内をめどとする復旧作業が続く。ただ、物流センターが復旧しても、トラックと燃料の確保が難しく、配送難の問題がある。「ユーザーが引き取りに来てくれれば出す」(別の大手電線メーカー筋)との対応も一部聞かれる。