2001.12.21
神 戸製鋼所は20日、欧州の特殊鋼線材・棒鋼のトップメーカー、伊ルッキーニグループとの間で、自動車用特殊鋼線材・棒鋼に関する包括的な技術提携を締結することで合意したと発表した。ル社傘下のアスコメタル社(パリ)には、欧州で調達ニーズの高い「高強度懸架ばね用鋼(UHS1900)」の技術移転を行いサンプルを製造、部品メーカーでの評価試験で良好な結果を得ている。今後、複数の日系自動車メーカー向けに納入していく方針。神鋼は、米国の特線・棒鋼トップのRTI社と技術提携をしており、現地調達を進める自動車メーカーのニーズ対応に向け、世界3極供給体制が整った。

 欧州展開を進める日系自動車メーカーからは、神鋼が持つ高強度・高耐食のUHSのニーズが高く、神鋼は欧州最大のル・グループと手を組むことで顧客の要望にこたえる。両社は、今年4月に包括的な技術提携に向け技術交流を開始し、5月に日本、10月に欧州で交流会を実施。年明け早々に調印する運びで、神鋼は特許・商標使用権を供与する。

 提携の第1弾として懸架ばね用鋼の生産・販売に取り組み、アスコ社では02年半ばに営業生産に入る予定。技術交流を継続し、共同研究開発、自動車メーカーへのアプローチ支援などを双方で行い、他の自動車部品用鋼材についても開発・OEMなどを検討する。

 神鋼がこれまで欧州に輸出し現地ばねメーカーを経てユーザーに納めていた素材を、ルGからの供給に切り替える。ルGでは欧州および日系ユーザーへの納入を進めるが、今後欧州系自動車メーカーのアジア生産拠点へ神鋼から供給することも視野に入れている。

愛 知製鋼は20日、既存の磁気ホールセンサと比較し、100万倍もの感度を有するアモルファスMIセンサを応用した超微小磁界測定装置「ミリガウス・メーター」を発売したと発表した。100%子会社のアイチ・マイクロ・インテリジェント(略称AMI、愛知県東海市、森田章義社長)と毛利佳年雄・名古屋大学教授が共同開発したもので、初年度2500台(10億円)、5年間で2万5000台(100億円)の販売を目指す。

 同社は、毛利教授が93年に発見したMI効果に基づく超高感度磁気センサー(MIセンサ)の開発を98年に科学技術振興事業団から委託され、開発に成功した。このセンサは、(1)感度が従来品の100万倍(2)米粒大の大きさ(3)従来品と同等の価格―などの特長を持つ画期的なセンサ。

 新開発のミリガウス・メーターは、MIセンサの優れた特性を用いた初めての応用製品で、検出精度0・1ミリガウスという超微小磁界を検出できるハンディタイプ、低消費電力を実現した初めての測定器。しかも高速応答性を有し、過酷な環境下(マイナス40度―120度)においても使用可能。

N KKは20日、世界に先駆けて実用化した高加工性高張力鋼の80キロ級ナノハイテンに加え、100キロ級ナノハイテンの開発に成功したと発表した。さらにすでに市場投入している80キロ級ナノハイテンの製造可能範囲を、従来のハイテンでは不可能だった薄物、広幅サイズの領域まで広げた。主に、自動車の足回りである「ロアアーム」などの重要保安部品での適用を狙っており、自動車メーカーでの採用がほぼ内定しているという。

 今回開発した100キロ級ナノハイテンは、添加元素量の調整と温度制御により、加工性の劣化を極力抑えつつ強度アップを図って実用化した。さらに80キロ級ナノハイテンについては、成分改良による析出物の挙動制御や圧延時の材料変形抵抗を抑えて圧延スケジュールを最適化、従来のハイテンでは不可能だった領域の薄物、幅広の製造を可能とした。

 ナノハイテンは、超微細サイズの析出物を実用鋼中に分布させて加工性を高めたもので、高成形性として開発されている従来の焼入れ強化法等による80キロ級ハイテンに比較して1・3倍以上も伸び、穴広げ率といった加工性が向上している。また、強度のバラツキも従来材の半分以下に抑えられたすぐれた性能をもつ。

三 井物産は20日、鋼材の加工物流・販売、中国製資材・機器の調達の両分野において中国の上海宝鋼集団との合弁会社を新設することで基本合意したと発表した。

 鋼材加工分野では、両社が出資参画する中国のコイルセンターなどを統括する新会社を来春に設立する。三井物産の新会社への出資比率は25%以上となる見通し。

 新会社は中国各地での鋼材加工・物流拠点新設および既存企業買収を進め、鋼材加工能力を5年後に年間250万トン程度に拡張する計画。新会社の鋼材調達を上海宝鋼が支援、三井物産は鋼材の加工・物流、SCM技術を含むノウハウを提供する。中国証券市場への上場計画も持つ。

 三井物産は現在、中国8カ所でコイルセンターを展開しており、このうち上海申井、広州宝鋼が宝鋼との合弁事業。これら2社を含む現地CCが新統括会社の傘下に入るものとみられる。宝鋼は三井物産との合弁を含め三菱商事、米国の流通大手との合弁による7社のCCを展開している。

 一方、資器材の調達事業については、日系の有力コントラクターが中国国内で受注する石油化学および日系トランスプラントへの資材・機器の供給を当面の狙いとし、中期的には第3国向けプロジェクトにも対応していく。新会社の設立に先立って来年1月に両社共同調達チームを発足、業務を開始する。

高 炉筋によると、01年度下期における鋼矢板と鋼管杭の国内需要は鋼矢板が25万トンで、当初見通しに比べて7%前後のマイナス。一方、鋼管杭は29万トンの横ばいを見込んでいるものの、公共投資削減を受けて新規出件が乏しく、予想を下回る可能性も出てきた。これを踏まえた、現時点における今年度トータルの需要見通しは、鋼矢板が43万トンで前年度比12―14%減と過去最低を更新し、鋼管杭は60万トンの同約5%増で、3年ぶりに前年度比プラスとなりそうだ。

 01年度上期における鋼矢板と鋼管杭の内需は鋼矢板が18万トン(前年度比5%減)、鋼管杭は31万トン(同11%増)と、全国的に需要が一段落した鋼矢板が減少、民間建築基礎への採用が増えた鋼管杭は増加となり、明暗を分けている。下期は当初、鋼矢板が前年度比約10%減の27万トン、鋼管杭は前年同水準の29万トンと想定していた。

 ただ、鋼矢板は、メーンの河川改修工事が一段落し、下期は上期に引き続いて出件が少ない。重仮設リース業者も在庫管理負担を軽減する目的で、新規購入を手控えている。このため、高炉メーカーでは河川堤防補強向けなどでPR活動に注力してきたが、年度末まで低調に推移しそうだ。

寿 産業(本社=札幌市、鈴木俊三社長)が、開発実用化した廃タイヤリサイクルシステムの一貫プラント1号機が、熊本県の南九州タイヤリサイクルに納入され竣工の運び。これはKOTOBUKI&NITTAリサイクルシステム。廃タイヤ前処理から、タイヤに含有のワイヤを分離破砕。破砕したチップでマットなどリサイクル品を製造する完全リサイクルライン。北海道発の国内で初めてのプラントとされ、循環型社会の構築に貢献できるものと期待している。

 寿産業は平成11年、廃タイヤリサイクル機器の研究に着手。新規産業創造技術開発費補助金を活用。道経済産業局、北大、道工試や地元企業の新生ゴムなどの協力を得、タイヤに含まれるワイヤをゴムと分離しながら破砕するコア技術の確立に成功。さらに、周辺機器の作り込みと、分離破砕機ランニングテストや商品化のために改良。今年から一連のプラントとしてシステム化し、本格的な営業展開を開始した。

 分離破砕機の特徴・利点は、普通―大型車両用タイヤまで常温で機械的に破砕とワイヤ分離を同時に行う。ゴムとワイヤを引きちぎるため破砕回数が少なく効率的。従来の冷凍破砕システムに比べ初期投資が半分以下。液体窒素を使わないのでランニングが低く、ゴム材質の劣化もない。

東 京地区の厚板市況は店売り分野の需要低迷で、底値横ばい。市中価格(12ミリ、ベースサイズ)3万9000―4万円。

 造船、プロジェクト向け受注で高炉メーカーの供給はタイト。店売りは減産と値上げがセットで展開されている。しかし、流通では値上げの完全浸透に懐疑的な見方が残り、市況にも反映されていない。定尺価格もこう着状態。

 供給は韓国、台湾の輸入材の入着が10月時点で合計3万4000トンと、4万トン前後で引き続き低水準。ただ、中小流通・溶断業者に波及する需要が少なく稼働率も低く、ともに安値に引っ張られやすい状況にある。需給の本格的な調整は来期に持ち越されそうだ。

東 京地区の大径角形鋼管(コラム)市況は12×300×300の一次加工付き価格でSTKR5万5000円、BCR6万4000―6万5000円中心の強横ばい。減産による僚品H形鋼の強基調と、需要の減退でモミ合い。

 12月入り後、引き合いは減少。加工納期の受注残は2―3日。需要に約2カ月先行する10月着工床面積から算出した鉄骨量は62万5750トンと、前年同月比1・5%減、前月比1・1%増。

 大型物件の建設は相次ぐが中小は減少。需要家に近い北関東では一部安値も散見される。東京製鉄による母材ホットコイルの建値上げは、市場が織り込み済みで影響はない。値上げは先送り。