2001.12.04
日 新製鋼は懸案となっていた新日本製鉄とのステンレス事業の統合交渉を打ち切り、当分の間、凍結することを決めた。統合については、これまで両社社長によるトップ交渉で断続的に行われてきた。

 日新製鋼が新日鉄とのステンレス統合の凍結を決断したのは、同社の主力事業である薄板・表面処理鋼板事業が01年度で当初の予想以上に大幅な赤字となり、全社的に収益構造を改善することが経営の最重要課題となってきたため。日新製鋼としては、この時期に、全社売り上げの約30%を占める黒字事業のステンレスを本体から分離することは得策でなく、株主の利益にも反すると判断した。

 表面処理で約700社、ステンレスで約500社ある顧客のうち、約300社が表面処理とともにステンレスを購入している顧客。分社・統合でこれら顧客向けのセット販売のメリットが薄まる懸念があることも、統合見送りの判断材料となったもようだ。

 日新製鋼のステンレス事業の年間売上高は約1200億円、今01年度上期の経常利益は約30億円。下期もほぼ同額の利益を見込んでいる。内外のステンレス製品市況が低迷し、兼業、専業とも苦戦を強いられているなか、日新のステンレス事業はずばぬけた収益力を誇っている。昨年度のステンレス鋼材の生産実績は薄板主力の日新が49万7000トン、薄板のほか厚板、線材なども生産する新日鉄が66万1000トン。生産量で新日鉄が日新を凌駕しているが、統合は収益力で勝る日新主導型とする方向でこれまで話し合いが進められてきた。

 こうした状況下、日新の主力事業である薄板・表面処理鋼板事業が価格下落の影響をモロに受け、今期大幅な赤字に陥り、事態が一変。「見直すごとに赤字が拡大する」(同社幹部)という最悪の状態となり、今中間期決算の同社の全社単独ベースの経常損益は約87億円のマイナス、同じく通期見通しは180億円の赤字。過去数年継続してきた期末配当(前期は1株当り2円)も今期は見送られる公算が大きい。

 このため、日新としては、当面は03年を最終年度とする新中期経営計画で打ち出している要員削減プラン(単独3500人、連結6500人)を柱とする労務費削減による生産構造、コスト構造改革に全社挙げて取り組むことが経営の最優先課題となったことで、当分の間統合問題を棚上げ、凍結するもやむなしとの決断を下した。

 ただ、新日鉄とは資本関係でつながる兄弟会社であり、ステンレスの統合構想自体が白紙還元されたわけではない。将来状況が変われば再浮上しよう。日新・周南製鋼所(山口県)と新日鉄の光(山口県)、八幡(福岡県)のステンレス関連両製鉄所は地理的に近く、協力しやすい。また両社は日新がニッケル系、新日鉄がクロム系を受け持つことで、今年4月から、月間1万トンのステンレスホットコイルの相互委託圧延契約を実行しており、関係強化は着実に進んでいる。

住 友金属工業は、下期の粗鋼生産を前年同期比77万トン減、上期比では65万トン減の450万トン程度と見込んでいるが、なかでも第4四半期は第3四半期と比べて15万トン程度絞り込む計画だ。第4四半期は季節要因、輸出の減少、国内在庫圧縮などの要因があって、第3四半期と比べて減産強化が不可欠と判断。来年度も減産基調を継続する。

 下期の品種別状況は、鋼管が好調を維持し、シームレス鋼管は年100万トンを超えるペースになる。建材はH形鋼の3000円値上げの浸透などで黒字化。交通産機品は横ばいか微増で堅調推移する見通し。

 だが薄板を中心とした鋼板類は国内、輸出ともさらに厳しい状況。国内は市況上伸と在庫圧縮のための供給削減が続き、輸出は201条の影響で悪化で予想される。ユーザー向けも自動車が第4四半期に向けて徐々に減少する。このため、主力品種の鋼板類を立て直すためには、減産対応しかないとみて粗鋼生産を抑制する。

 純粋持ち株会社への移行をスムーズに進めるため、来年4月からカンパニー制を導入するが、そのなかで「鋼板・建材カンパニー」は拡販しないと収益は上がらないものの、市況上伸のための減産を継続しながら慎重にスタートを切る。

川 崎製鉄を代表企業とする水島コンビナート企業グループ10社は3日、岡山県倉敷市が公募した「倉敷市・資源循環型廃棄物処理施設整備運営事業」を受注したと発表した。契約期間は、2005年4月から25年3月末までの20年間で、民設・民営PFIとして一般廃棄物と産業廃棄物を混焼処理するのは全国初。倉敷市で発生する一般廃棄物や下水汚泥日量300トン、水島コンビナートで発生する産業廃棄物日量250トンは、川鉄サーモセレクト方式ガス化溶融炉でリサイクル処理することになる。

 水島コンビナート企業グループは、旭化成、クラレ、ジャパンエナジー、中国電力、日石三菱精製、日本ゼオン、三菱化学、三菱ガス化学、三菱自動車工業と川崎製鉄で構成される10社。

 今後、岡山県、倉敷市とともに02年1月をめどに特定目的会社(SPC)を設立、廃棄物リサイクル事業の主体として事業をスタートする。廃棄物処理委託契約締結後は環境影響調査を経て、2003年4月をめどに施設建設に入る。

 同事業に対する提案において、廃棄物はすべて同社の水島製鉄所構内に建設する日量550トン(3ライン)のサーモセレクト方式ガス化溶融炉でリサイクル処理する。そこで改質した生成ガスは、コンビナートの既存パイプラインを通じて、コンビナート各社が原燃料として使用する予定。
日 本、中国の鉄鋼貿易問題などを官民レベルで話し合う「日中官民鉄鋼対話」の第2回会合が今月7日、経済産業省内で開催される。日本からは経済省の岡本巖・製造産業局長のほか、新日本製鉄の三村明夫・副社長などが、中国側からは国家経済貿易委員会(経貿委)の李建勳・対外経済調協司進出口処処長や宝鋼集団公司の何文波・副総経理などが出席、世界貿易機関(WTO)の中国加盟も見据え、アジア市場の安定化と持続的発展に向けた議論を行う。これまでの中国による鋼材輸入規制問題なども踏まえ、日本サイドとしては双方にメリットが享受される健全な鉄鋼通商関係の構築を念頭に、意思疎通を図る考えだ。

 アジア諸国との間では、先月に台湾との対話を実施したほか、来年はじめにも韓国との官民鉄鋼対話を予定しており、アジアを重要視した鉄鋼産業の発展をにらんだ通商関係の緊密化を進めている。これらの対話を通じ、機能的に、成果を出すことが可能な体制のネットワーク形成を視野に、よりアジアでの日本の位置付け、責任を明確にし対応を目指す方針だ。

 今回の日中対話でも、今月17日、18日に開催が予定されている経済協力開発機構(OECD)の鉄鋼ハイレベル協議への中国参加への期待を示しつつ、同ハイレベル協議での世界の鉄鋼生産過剰能力問題での各国の政策提示も加味し、鉄鋼市場の安定成長につながる考え方を中心テーマに据え、意見を交わすことになる。
住 商鋼板加工(本社=大阪市此花区、岸上奎介社長、略称=SKK)は滋賀に薄板加工・物流センター「滋賀工場(仮称)」を建設を進めているが、今月15日ごろから工場の鉄骨の建て方を開始する。建設工事は来年2月末に完了、その後、大型スリッター1基を導入、同4月から営業生産を開始する。今回の加工センターの設置は滋賀周辺の既存顧客への納期などのサービスの向上が狙い。設備も本社工場の大型スリッターのうち1基のリプレースと位置付けている。当初の加工目標は月間1500トンで、テーラードブランク設備導入は前向きに検討している。

 同社は本社工場に大型レベラー3基、大型スリッター3基を持ち、熱延、酸洗、冷延、表面処理鋼板を加工している。加工能力は月間3万トンで、直近の加工量は月間2万8000―2万9000トン。

 顧客のエリアは関西を中心に、中・四国、北陸だが、最近は顧客からの注文は小口・短納期の物が増加していた。中でも、滋賀周辺地域の顧客を多く抱え、これら既存顧客への加工・納期対応強化が課題となっていた。

 これに対応するため、今年になって滋賀県甲賀町に1万2500平方メートルの工場用地を購入、同10月末から建設工事を開始した。建設概要はゼネコンが矢作建設、工場建屋はS造、建屋面積が約6000平方メートル。

 建設工事は来年2月末に完了、その後、大型スリッターを導入。同4月から稼働を開始する。稼働開始当初は本社工場からの応援1人やOB1人を加えた7―8人で運営するが、軌道に乗れば5―6人体制とする。
三 菱商事のタイ現地コイルセンター、MCメタル・サービス・アジア(MSAT)は、自動車向けなどへの拡販で業績を伸ばし、今期(12月期)の売り上げ規模は前年比10―15%増の1億ドル強、連結税引き後利益では黒字化する見通しだ。自社加工部門は月間加工量が昨年上期の1000トンから今年末には3000トンに達する計画で昨年までの赤字基調から脱却した。商事機能としての年間販売数量は現地自動車メーカー向けに1台当たりの扱いトン数が拡大し、同約10%増の22―23万トンペース。来年は世界同時不況色の濃い景気情勢を考慮しつつ、今年と同水準の業績確保を目指す。

 MSATは、三菱商事の100%出資会社で、97年9月に操業をスタートした。従業員数は約100人。プレス・ブランキング設備を保有し、自動車向けを中心にプレス・ブランキング加工を行っている。今年に入り1直から2直体制に切り替え、第2・四半期(4―6月)に損益分岐点をクリア。月間2000トンに加工量が増え、年内には3000トンに到達する見通し。

 自社加工のほか、受発注管理、代金決済など商事機能を持ち、他の関連コイルセンターと連携し製品販売を手がけている。
中 部鋼鈑(本社=名古屋市中川区、嶺辰紀社長)は、生産数量維持による操業安定を目指して輸出に注力、中国やカナダ向けを中心に今月分まで確保している。

 同社は厚板を生産する唯一の電炉メーカーだが、需要の落ち込みによって今年度上半期は、販売数量ベースで前年度に比べ10%強のダウンを余儀なくされている。しかし、電炉操業を安定させるには一定量の生産が必要なことから輸出の確保に力を入れており、今月までのデリバリー分として中国向けに1万トン強、カナダ向けにも6000トンを成約しているもの。

 下期について、もこれらの国に対して引き続き商談を行うことにしており、操業安定やコスト削減に結び付けたい考えだ。

関 西地区のコイルセンターの大阪鋼圧(本社=大阪市大正区泉尾、稗田英紀社長)は前期(01年11月期)の業績見込み、および今期の計画を明らかにした。今期計画の骨子は加工量が月間1万5000―1万6000トンレベルでも利益が出せる体制を構築する。具体的には一人当たりの生産性を向上を図るとともに、事務の効率化を進める。また、出荷・加工のミスを削減し、歩留まりを引き上げる。また、在庫の圧縮を行う計画で、自販材在庫は今期中にも現状比約40―50%減の1万トン(コイル、シート)を切る水準を目指す。

 同社は本社工場として第1、2、3工場を持ち、加工設備はコンビネーションライン2基、大型レベラー1基、大型スリッター1基があり、熱延鋼板、酸洗鋼板、特殊鋼のコイルを加工している。

 前期の業績は現在、集計中の段階だが、売上高は年間65億円前後と00年11月期比約20%減、損益は経常段階で減益が確実だが、黒字となったもよう。

 これは取扱量が今年夏以降、月間平均で1万8000トンと昨年同時期に比べ10%程度落ちた。特に、自販材が月間平均で7000トンから5000トンとなったこと。さらに、単価の下落も加わり、減収となった。減益要因は売り上げの減をコスト低減でカバーできなかったことや、スクラップ価格の下落による収入減が影響した。

 今期は今後、売上高や利益の目標を詰めるていくが、基本的には取扱量が月間平均で1万5000―1万6000トンでも利益が出せる体制を構築する。まず、人員は現在、85人だが、ここ2―3年で定年対象者が出ることから、これの補充は抑制する。また、工場の作業や事務の効率化を進め、一人当たりの生産性を引き上げる。

合 同製鉄の連結子会社である合鉄商事(霜出尚志社長)は「明日の事業」の開発を狙いにプロジェクトチームを編成、具体的な取り組みを開始した。主力の鋼材や鉄スクラップ部門が厳しい状況にある中で、将来を見据え、新しい事業を模索する。

 発足したプロジェクトチームは関西2人、関東1人の計3人のスタッフ構成で、「NBD」(ニュー・ビジネス・デべロップメント)プロジェクトとして今年度下期からスタートしている。鋼材や鉄スクラップの取扱数量減、単価下落で業績が伸び悩む中で、「明日の事業」の開発育成に力を注ぐ。

 すでに「明日の事業」の一つとして、電炉周辺設備の本格販売に乗り出しており、これに続く新事業を検討する。電炉周辺設備の販売では韓国からの輸入品の炉蓋、水冷パネル、電極ホルダー、集塵ロ布、助燃バーナー、米国からの輸入品の水冷ケーブルなどを取り扱い、今年度下期は1億2000万円の売り上げを目標としている。

東 京地区の縞板は弱横ばい。市中価格(3・2―4・5ミリ、ベースサイズ)は5万4000―5万5000円。

 需要は10月が上向いたものの11月以降は再び停滞し、店売り建材の需要が全般的に細っているだけに期待が薄れている。価格はまとまった物件では一部競争があるが、販売業者は「小口スポットの値段は動かせない」としている。

 流通に供給過剰との認識はなく、国内メーカーも熱延鋼板をはじめ店売りは減産の方針を続けており、今後も供給増で在庫が積み上がるという可能性は低い。ただ、中小の建築需要低迷が長期化することで、市況も横ばいながらも弱気になりやすい雰囲気。

東 京地区の鉄スクラップ輸出価格は横ばい。FASで8000―8300円、中心値8100円どころ。

 今週の輸出量は、前週3万トンから2万トン台後半へ落ち込む見通し。荷の集まりが悪いこと、有利な国内価格の値下がり待ちで、輸出量は低調に推移する。現在の船積み状況は、13号地1万1500トン、川崎市営1万2000トン、船橋7000―8000トンとなっている。

 価格面では、国内メーカーの相次ぐ値下げで、弱含みに転じる気配が出てきた。アジア諸国からのオファーでは「東京製鉄の値下げ幅に合わせてほしい」との声があり、当面横ばいで推移するが、弱含みに転じる可能性が出てきた。

大 阪地区のH形鋼はベース3万3000―3万4000円どころで足踏み。

 地区の扱い流通筋はメーカー値上げを受けて、先月下旬から再度、売り腰を強化。各社とも早期に持ち込み3万6000円を固めたい意向だが、建築需要の迫力不足やファブの抵抗などから市況はもたつき気味。東京や九州など他地区の上伸気配と比べると、大きく差を開けられているのが実態だ。

 ただ、市中在庫はメーカーの減産効果などから、引き続きタイトな状況。流通筋では依然として、「広幅やベースサイズなどで歯抜けが散見されている」という。高炉は来期生産も減産強化する方向で、当面、供給面の心配はなさそう。