低位品スクラップの増加に、日本のスクラップ業者はどのように対応していくのか。国内選別の可能性を探ると同時に、新たな市場を開拓する動きも活発になっている。年間150万―200万トンにも上る雑品・雑線などの受け皿となり得る市場は中国以外にあるのか。
第2の中国はどこに
経済が発展途上にあり、国内のスクラップ需要が旺盛かつ国内資源が少なく、手解体・選別できる程度に最低賃金が低い国、または加工貿易が盛んな国。新たな市場としてマレーシアが注目されている。
財務省発表の2017年の輸出通関統計によると、同国向けの雑品輸出は年始から7月まで0トンだったが、8月に400トンとスポット的に急増した。ただ、その後は数10トン単位で断続的に輸出されている。
マレーシアは、すでに政府による環境規制が厳しく、ダストが発生する雑品・雑線などは新たに輸入ライセンスを取得することが困難で、「ルートを確立できても、内需の規模や既存の処理能力を考えると受け入れ可能な数量は限定的ではないか」(扱い筋)との見方が強い。
マレーシア以外は、ベトナムや他のアセアン諸国、インド周辺が候補に挙がっており、特にベトナムとインドが有力視されている。ベトナムは現地筋によると「中国の影響か明確ではないが、カンボジア経由で低品位スクラップの輸入が増えている」と語る。
需要のある国に従来の荷姿のまま直接輸出するのではなく、人件費の安い国で選別し、その後、需要地に再輸出するルートや、雑品としてではなく日本国内で粗選別して格上げし、ヘビースクラップやシュレッダースクラップ、銅スクラップといった別の品目で輸出するケースが今後は増える可能性がある。
統計上ではすでに銅系スクラップに変化が
2017年の輸出通関統計によると雑品は、中国向けが止まる前に同国に輸出しようとする動きが強まったため、1月実績の10万トンから12月は18万8000トンに拡大した。年後半から中国に一極集中したため、他国向けは前述のマレーシアにスポット輸出があっただけで、現時点では継続して輸出量が増えている様子はない。
一方、雑線など銅系スクラップは統計に顕著に表れている。同年の対中国輸出量は2月から11月まで月2万5000トン前後で推移したが、12月は1万6000トンに急減し、前年同月の水準から半減した。現地当局がダスト基準の厳格化や加工メーカーだけに輸入ライセンスを発行する新方針を打ち出したため、輸出筋が春節以降の制度変更を懸念して取引を減らしたことが背景にある。
脱中国とみられる動きとして、対マレーシア輸出は年始の60トンから12月は300トンに増加。タイも5月まで0トンだったが12月は500トンに増えた。ベトナムは20トン前後から200トンに、韓国も400トンから880トンへと倍増している。
雑線はこれまで加工業者が集積する中国・天津に積極的に輸出されていたが、足元はまだ現地企業に新たな輸入ライセンスが発行されていないため、脱中国の動きはさらに加速する可能性が高い。
国内で解体や選別の動きも強まる
新たな市場を模索すると同時に、国内スクラップ業者のヤードには雑品や雑線、低品位スクラップの入荷が増えており、一部業者は自社で解体・選別に乗り出している。
業務用エアコンや冷蔵庫などに内蔵され、従来はそのまま輸出されていた黒モーターや工業用モーターを解体・選別するケースが増えており、鉄製の本体をガス切断し、内部のコイルを鉄と銅に選別する作業や、シュレッダーで一括処理している。
黒モーターは、中国輸出が難しくなったことで流通価格が半値近く下落し、国内で手間をかけても採算が合うようになり、選別のモチベーションが上がっている。
雑品類も、工業雑品に比べて金属の構成比率が小さい家電雑品は、従来形状のままでは輸出が困難なため、スクラップ業者が有価で買い取らず、足元は手解体・選別を前提に逆有償での取引がメジャーになりつつある。
現段階では、中国に輸出しにくくなった物の中でも流通価格が下落し、解体・選別作業が比較的容易な品目から国内処理が進んでいるように見受けられる。
さまざまな線径や形状の被覆銅線が混在する雑線についても、ナゲット加工業者に持ち込まれる数量が増加傾向にあり、雑線の付加価値を上げるナゲット加工に注目が集まっている。ナゲット加工設備の販売会社は「新規導入の見積もり依頼が非常に多い」と語る。
(石橋 栄作)