韓国の鉛二次精錬メーカーが当局に一斉摘発されたとの情報が、先週末から日本国内の官民関係筋の間を飛び交った。基準値の超えるヒ素を含んだ精錬廃棄物を違法に埋め立てたとして、大手メーカー各社幹部が拘束されたもようだ。韓国は世界最大の鉛リサイクル原料輸入国で、鉛バッテリー製品や地金輸出を盛んに行っていたが、「これで韓国の長年不可解だった競争力の内幕が暴かれた」(国内二次精錬メーカー)と言われている。
韓国環境部が24日発表したリリースによると、法定基準値の最大600倍以上のヒ素を含む廃棄物約17万トンを、一般廃棄物扱いという虚偽の報告を行い埋め立てて、数年間で約56億ウォン(約4億円)の不当な利益を得たとされる。摘発された11社のうち、罪状が重い4社の代表者が拘束された。
さらに情報筋によれば、4人が拘束されたのは先月18日のことで、いずれも大手メーカー幹部だといわれる。韓国の産業通産白書によると、2014年の韓国の再生鉛年産能力24万5000トンのうち3社で15万トンを占めているが、その4人に上位3社が含まれているもようだ。
また、現地報道によると、同国には18社のリサイクル業者があったが、合法な業者は競争に敗れ休廃業に追い込まれたと報じられている。摘発された11社は現在操業するほぼ全社にあたり、しかも韓国環境部による合法処理提案を無視していたとされ、業界ぐるみの組織的な違法行為だった可能性が高い。韓国では今年2月に環境問題を取り締まる専門捜査機関が発足し、今回が第1号の摘発例となったことからも、違法性の高さがうかがえる。
国内の二次精錬メーカーの関係者によると、バッテリー用鉛合金には微量のヒ素が添加されており、リサイクルで生じる残渣は基準値以下に抑えて埋めるか、一次製錬メーカーに逆有償で送られて適正に処理されている。韓国ではその処理コストが一般廃棄物と比べてトン3万3000ウォン(約3000円)ほど高いとされ、それが韓国の鉛二次精錬業の競争力にも反映されていたのである。
韓国が昨年輸入した廃バッテリーは42万トン(韓国貿易統計)。日本、米国、中東をはじめ全世界に集荷ネットワークを張り巡らし、ここ10年で輸入量は10倍以上に膨らんだ。それに伴って中東向けの補修バッテリー輸出や、欧米向けの地金輸出も拡大させ、世界最大の「鉛加工貿易国」として台頭してきた。
日本市場に対しては、常に市価を上回る高値オファーで輸出圧力をかけ、昨年前半まではキロ100円を超える高値買いを行っていた。しかし、関係者らは「どう考えても採算が合うとは思えない」(同)と首をひねり、政府の特別優遇策や補助金の存在も噂されていた。今回の摘発でカラクリの一端が明るみになったと言える。
今回摘発されたメーカーに営業停止命令は下っていない様子で、先月の一斉摘発にもかかわらず、「ライセンス取り消しとか輸入を止めるとかの話は聞いていない」(輸出業者)と、足元の日本側の輸出情勢は変わっていない。日本からの廃バッテリー流失が止まるかどうかについてもまだ不透明だが、「不正な処理をしていた韓国二次精錬向けの輸出申請については、許可枠を取り消すなどの処置がされるべきだ」(一次製錬メーカー)と、日本側の関連当局の姿勢を問う声も挙がっている。