銅スクラップを取り巻く環境は過渡期を迎えている。流通面では既存原料問屋と海外勢との間で競争激化が進んでおり、需要面ではメーカーの再編が進んでいる。貿易面では、雑品輸出に対する監視が強まる一方で、廃基板類など、Eスクラップの輸入促進がはかられている。銅スクラップ流通業界の先行きは不透明感が強いが、確かなことは、生き残るためには変化にいち早く適応する必要があるということだ。
流通の変化
国内市場の流通面でのもっとも大きな変化としては、海外勢の登場が挙げられる。海外勢とは、外国人がオーナーで、国内メーカーへの販売をメーンにするのではなく、中国への輸出をメーンにする企業だ。海外勢は2000年初頭に現れ始め、中国の経済成長に伴う旺盛な資源需要と現地の安価な労働力を背景にして、選別が十分でない品物でも高く購入したため、国内での存在感を年々高めていった。
銅スクラップの年間輸出量は00年には約11万トンだが、年々増加し、08年には約40万トンに達した。リーマン・ショックによる資源価格の暴落と、現地人件費の高騰で、リーマン・ショック以降は成長に影が見られ、多くの有力業者が姿を消した。しかし、その後も新たな業者の参入が続き、低品位の銅スクラップの取り扱いに関しては、今もなお圧倒的な存在感を放ち続けている。
需要面では、メーカーの再編が進んでいる。08年には三菱伸銅と旧三宝伸銅工業の合併があり、10年には三井金属の圧延加工事業部と住友金属鉱山伸銅の統合で、三井住友金属鉱山伸銅が誕生した。メーカーの海外進出などもあり、国内の販売先は減少している。プレーヤーの増加と需要家の縮小が、流通業者間の競争を激化させている。
変化への対応
もっとも、日本は自由経済であり、競争は忌むべきものではない。しかし、問屋業の収益構造の本質は、スクラップを買い取り選別して付加価値をつけることで、買値を抑えて高く売ることだ。それが競争の激化により、どうしても他社よりも高く買わざるを得なくなっているのが現状だ。こうした状況下、問屋各社は、「取扱品種の拡大」「流通機能の強化」「ニッチな市場への特化」などで特色を出し、利幅を確保しようとする動きが出てきている。
3つの対策の中では、アルミ、ステンレス、鉛などを新規に取り扱う取扱品種の拡大を行う問屋が最も多い。複数の金属を取り扱うことによって相場リスクも分散できるため、問屋にとってメリットも大きい。しかし、銅と違い単価の安い金属が多く、利幅を取っていくには取扱量を増やしていくことが求められるため、広大なヤードを持つ郊外型の問屋に有利な方法となる。
次は流通機能の強化。産業廃棄物の収集運搬や、解体工事前の内装改修の請負など、スクラップの回収・選別・販売だけではなく、付随する業務を一括して行うことで、トータルで利益を出していく戦略だ。金属の売買は相場の影響が必ずあるため、相場に左右されない事業を増やすことは経営体質の強化にもつながる。
ニッチな市場への特化は、銅滓や亜鉛滓など、取扱業者が少ない品種を扱うことで競争を避ける戦略だ。1号銅線などの代表的な品種は、品位が一定で市場の価格が把握しやすいため、購入時に利幅を取りにくい。マイナー品種に対する理解を深めることは、利益を出す上でとても重要だ。
貿易面での動き
3月に環境省で第5回廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会が行われ、雑品やEスクラップなどの適正な輸出入などについて検討内容が取りまとめられた。輸出国での環境汚染や業者ヤードでの火災が問題視されており、雑品輸出への規制が強まる見込みだ。14年に家電4品目を輸出しようとしたとした事業者が環境省から通報される事件があったが、雑品を取り扱う業者は今以上に管理に注意する必要がある。
一方で、廃基板などのEスクラップは輸入時の手続きが簡素化される方向だ。15年にはJX金属が基板リサイクルを行う髙商を子会社化するなど、製錬メーカーは廃基板の集荷に注力している。もっとも、Eスクラップに限らず、2月の銅合金スクラップの輸入量が4578トンと12カ月連続で前年同月を上回るなど、国内市場の中の輸入スクラップの割合が増えている。海外勢の次は、輸入業者の存在感が増す可能性がある。