2015年10月7日

本紙流通調査(下)/設備投資見送り拡大 上期、市況下落が顕著に

産業新聞社・流通取材班が9月下旬に関東、関西地区で実施した鋼材流通アンケートによると、流通各社の設備投資については、中国経済の減速など不安定要素が拡大し、鋼材市場の先行き不透明感が強まる中で「実施しない」との回答が拡大していることがわかった。15年度上期の市場動向見込みについて、市況は「下落・弱含み」が8割近くに達し、前年度下期から本年度上期かけて、鋼材市況が下落したことが示された。前回調査でも「下落・弱含み」は6割弱を占め、最も多い回答率となっているものの、今回はそれより21・5ポイントも上昇、市況下落が顕著だったことをうかがわせる。

アンケートは、関東・関西地区の薄板、厚板、形鋼、棒鋼、鋼管、カラー鋼板、線材製品、二・三次製品、特殊鋼、ステンレスの主要鋼材流通企業を対象に行った(回答108社)。

設備投資については「実施する」45・7%、「実施しない」54・3%で、「実施しない」は29・3ポイントも上昇した。機械設備の投資については本年度内は政府の政策支援措置も実施されているが、市況下落懸念や需要回復の遅れの中で、投資実行については慎重な対応が広がっている。東京五輪開催後の20年度以降の需要減の可能性も高く、長期的な視点で設備投資を見送くる事業者も見られる。

15年度上期の市況は「下落・弱含み」が過半数を超え、下落傾向が続いた。特に、この回答率は、関東地区76%に対し、関西地区は86%と関西地区の方が多く、下落傾向が顕著だったことをうかがわせる。なお、市況の「上昇・強含み」の回答は関東、関西ともゼロだった。

需要は「減少」50・6%で前回より9・1ポイントアップし、「横ばい」の43・5%を上回った。15年度上期は期待されていた建設関連需要が伸びず、鋼材需要を押し下げた格好だ。需要減の回答率は関東は47%だったが、関西は57%と6割近くに上り、関西地区の方が需要減が大きく表れた。

在庫は「横ばい」がほぼ6割台を占めた。「減少」も3割弱を占めたが、需要減を反映して、在庫圧縮は進まず、横ばいペースのまま推移したことが明らかになった。

15年度下期の需要予測も「横ばい」が60%に達するが、回答率は3・8ポイント下げ、逆に「増加」は4・1ポイントアップしており、自社販売数量の見通しでも、この予測に沿って販売数量の増加見通しが増えた。

15年度下期も需要面では盛り上がりを欠く動向が続く見通しで、鋼材流通には販売面では価格下落による収益圧迫傾向が強まる環境下、実需見合いの慎重な対応が求められる。

(鋼材流通チーム)

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