2012年10月23日
日立電線、ニオブ3錫で超電導線材を開発 臨界電流密度1.5倍に
日立電線は22日、臨界電流密度(単位面積当たりに抵抗値ゼロで流せる最大電流値)を従来比約1・5倍に高めた、ニオブ3錫(Nb3Sn)の超電導線材を開発したと発表した。「内部拡散法」と呼ばれる線材製法と、ニオブ単芯線と錫単芯線を一度だけ多芯組み込みする「シングルスタッキング構成」による成果。ニオブ3錫を使う超電導マグネットの高磁場ニーズに応える。
ニオブ3錫は核磁気共鳴(NMR)分析装置、国際熱核融合実験炉(ITER)といった核融合設備で、高磁場を発生するコイル用線材に使われる。主に「ブロンズ法」で製造される。同法では、ブロンズ(銅―錫合金)中にニオブ芯を多数本組み込んだビレットを、押出、伸線加工で細線化し、熱処理を加えてブロンズ中の錫をニオブに拡散し、ニオブ3錫を生成する。
今回は、ブロンズの代わりに錫単体を使う内部拡散法を採用。また、従来法では伸線した中間材を束ねて(スタッキング)再伸線するが、840本のニオブ単芯線と421本の錫単芯線を一度だけスタッキング、伸線する方法を採った。線径1・31ミリメートル、長さ5キロメートルの線材を18テスラの磁場で測定した結果、ブロンズ法に比べて約1・5倍となる、1平方ミリメートル当たり345アンペアの臨界電流密度を確認した。
ブロンズ内の錫濃度に制約されないため、高い臨界電流密度を得られる。ニオブ、錫、銅はブロンズに比べて加工性に優れるので、伸線工程における中間焼鈍を省略でき、製造リードタイムの短縮にもつながる。臨界電流密度を高めることで、分析装置の高精度化に伴うマグネットの高磁場要求に対応する。
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