2010年10月27日
岡部・東大教授、レアアース磁石リサイクル 乾式プロセスを開発
東京大学生産技術研究所(東京都目黒区)の岡部徹教授らの研究チームは26日、希土類(レアアース)磁石スクラップから、希土類元素を効率的に回収する技術を開発したと発表した。現在商業ベースで行われている湿式プロセスではなく、乾式による高温プロセスを採用。これにより重金属を含む有害な廃液を出さずに、ネオジム―鉄―ボロン系磁石に使われているネオジムやジスプロシウムを回収できる。
岡部教授などが開発したリサイクル技術は、ネオジム磁石スクラップから希土類元素を分離・回収する際の抽出剤に塩化マグネシウムやヨウ化亜鉛を利用。最初に、これらの溶融塩の中に磁石合金を投入することで、希土類を塩化またはヨウ化して浸出させ、合金の中の鉄とボロンを固体として分離する。
浸出した希土類の混合塩は真空蒸留などにより、抽出剤と希土類化合物を効率良く分離できる。このリサイクル技術を使えば、スクラップの中に鉄やアルミ、銅、ニッケルなどが混入していても、希土類だけを選択的に抽出できる。
ただし現段階では抽出した希土類化合物をネオジムとジスプロシウムに分離するまでには至っていないため、今後の研究課題として残っている。リサイクルコストも湿式プロセスより高くなるため、回収した希土類化合物を国家備蓄したり、家電リサイクルの仕組みに組み込むなどの方法を考えないと、実用化は難しいという。
希土類磁石のリサイクルは工程内スクラップが中心。自動車や家電などの製品に組み込まれた磁石は、コストの問題から一部を除き未回収のまま。工程内スクラップについては、水分や油分による汚染が激しいため、湿式法で酸溶解して水溶液に戻してから分離・精製される。
しかし湿式プロセスでは、重金属を含む大量の廃液が発生するため、その処理が問題となっている。このほど岡部教授などが開発した乾式プロセスは、水溶液を利用しないため有害な廃液が発生しない、環境調和型のリサイクル技術となっている。
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