機械メーカーのアイダエンジニアリング(本社=神奈川県相模原市)はこのほど、自動車軽量化に対応する高張力鋼板成形システムを開発した。980メガパスカルハイテン材の形状を決定する1工程目に、新開発の高張力鋼板専用プレス機を置き、柔軟でパワフルな成形を行う。搬送装置は同社独自の高速搬送技術を活用し、既存設備を生かした効率的な生産システムを実現したとしている。
高張力鋼板はピラーなど自動車の車両骨格部品での採用が広がっているもの。一般的な鋼板が1平方ミリメートル当たり30キロ未満の荷重にしか耐えられないのに対して、高張力鋼板は100キロ以上の荷重に耐えられるものもある。このため通常の鋼板より薄肉化でき、衝突安全性と車体軽量化の両立が可能で、自動車の燃費向上やCO2排出量削減につなげることができる。ただ、材質が硬いため、形状凍結性は低く、一般的な加工方法では製品精度が安定しない、高い加圧能力のプレスが必要、金型寿命が短くなるなどの課題を抱えている。
今回開発した高張力鋼板成形システムは、高張力鋼板専用プレスと既存トランスファプレス、およびプレス間高速搬送装置で構成する。高張力鋼板専用プレスは、最も大きな加圧力が必要になる1工程目を独立させたもので、鍛造用プレス並みの高剛性フレームと独自のガイド構造を採用したほか、ベッド内に油圧電動サーボダイクッション(能力3000キロニュートン)を装備し、高い精度での圧力、速度のコントロールができる。
またメーカーを問わず既存トランスファプレスを改造し、高張力鋼板専用プレスと同期制御を行うとともに、新開発のプレス間高速搬送装置でつなげることで、連続運転を可能とし、20spm(毎分ストローク数)を実現した。