三菱マテリアルは21日、低濃度フッ素汚染排水の効率的な浄化方法を開発したと発表した。酸化マグネシウムとアルミニウム塩の反応で生成される層状複水酸化物に、フッ素を吸着させる。浄化コストは従来の約半分となり、複数の有害元素を含む汚染水への応用も可能となる。
フッ素化合物は、金属や半導体、ガラスなどの表面処理剤として使用されるが、フッ素は人体に有害なため、水質の規制値として環境基準(1リットル当たり0・8ミリグラム以下)と排水基準(1リットル当たり8ミリグラム以下)が定められている。
処理方法はこれまで、フッ素汚染排水をカルシウム塩と反応させた上で、フッ化カルシウムとしてフッ素を固定化するのが一般的だった。しかし従来の方法では、フッ化カルシウムが微量に水溶するため、フッ素濃度が1リットル当たり10―20ミリグラムまでしか低下せず、コストのかかる後処理が必要だった。
今回開発された方法では、酸化マグネシウムとアルミニウム塩が反応して生成する層状複水酸化物に、フッ素を吸着させる。ナノレベルの層状構造を持つ層状複水酸化物は、フッ素の吸着能力が非常に大きいため、少量の凝集剤でも処理が可能となる。酸化マグネシウムやアルミニウム塩は廉価で調達できるため、浄化コストは従来の約半額程度となる。
また、半導体や電子材料の生産過程で排出されるフッ素排水の浄化にも応用が可能となる。同社の電子デバイス事業所の排水処理に適用した事例では、排水濃度が環境基準の1リットル当たり0・8ミリグラム以下となったことが実証された。
ホウ素、カドミウム、鉛、ヒ素、セレンなどを同時に除去することも可能で、複数の有害元素を含む土壌汚染地下水などへの活用も期待される。