物質・材料研究機構(NIMS)は3日、同機構の高分子材料ユニットの三木一司グループリーダーらが、酵素の物質取り込み機能を模倣した高活性の金ナノ粒子触媒の開発に成功したと発表した。
新型触媒は、生体反応における触媒として生命活動を支えている酵素を模倣。金属酵素は活性中心に触媒となる金属原子を持ち、周辺を取り囲むタンパク質が特定物質を活性サイトに取り込む機能を持つことで極めて高い活性と選択性を発現している。この金属酵素の構造をアルカンチオール分子で被覆された金ナノ粒子で模倣することで、金属酵素類似の触媒活性を実現することに成功したもの。
今回、研究グループは、金ナノ粒子表面に形成されるアルカンチオール単分子膜が、特定の長さや形の分子を取り込む、細胞膜(脂質二重膜)に似た相互作用を持つことに注目。この相互作用によって粒子表面に取り込まれた分子は、触媒機能を持つ金粒子表面に接触する確率が増えるため、触媒反応が加速される。具体的には、金粒子表面にシラン分子とアルコール分子を取り込むことで、触媒である金表面においてシラン分子が効率よく活性化される高活性の触媒反応を見出した。
今回の成果は、金属酵素類似の触媒反応メカニズムが確認されており、金ナノ粒子の修飾分子を設計することによって、高活性かつ高選択的な触媒の実現が期待できる。また、水溶液中でしか安定に利用できない天然の酵素とは異なり、金ナノ粒子は化学的に安定であることから、酸性・塩基性水溶液条件や有機溶媒中においても利用可能であるため、工業利用上の制約がない。