福島原発事故に伴う電力不足で、産業活動の停滞が続き、鉄鋼需要への影響が長期化する懸念が強まってきた。大手需要家だけでなく、鋼材の熱処理や鋳物など短時間の操業停止が困難な業種は多く、産業全体の生産に影響を及ぼしつつある。産業界は生産計画を立てやすい電力の総量規制を求め、政府は計画停電地域を細分化するなど対策を講じるが、電力不足解消の道筋は見えてこない。需要家の生産地移転の可能性が出始めており、鉄鋼の供給構造にも変化を与えかねない。
「電気炉は立ち上げに2時間以上かかる。停電時間プラス2時間では実稼働時間が取れず、当日の生産を見送らざるを得なかった」(金属熱処理業)、「IC製造装置は一旦止めると正常稼働までに40時間必要。停電が頻繁になると、長期休業を考えざるを得ない」(半導体製造業)。全国中小企業団体中央会には、こうした声が相次いでいる。部品調達が不十分なために、富士重工業は24日まで操業を見合わせ、トヨタも全完成車工場の23日操業再開を見送った。計画停電が部品産業、さらに大手の組立産業の停滞を長引かせている。
原発事故に対し、海江田万里・経済産業相は22日の会見で、「よい方向に進んでいるとは言えず、厳しい状況にある」と説明。被災地での需要増などで電力不足の状態は続くため、経産省は22日、計画停電5グループを細分化するとともに、1時間ごとの電力使用状況の提示を決め、「予測を立てられるように」(海江田大臣)し、企業の生産対応に役立てる。
一方で経済同友会が、企業の使用量を制限する総量規制など停電方法の見直しを要望。総量規制は企業ごとに停電時期が決められ、一定の操業維持が可能となる。政府が22日に開いた中小企業対策連絡本部の会合で、製造業の海外移転を防ぐ手だてが必要と提案された。電力対策の遅れによっては、鉄鋼需要への間接的影響が広がる可能性もある。