市況品といわれる非鉄地金や伸銅品を調達するにあたり、流通問屋や需要家に気迷いが生じている。東日本大震災の影響で需給タイト化が予想され、供給責任上では現物を確保しておきたいところ。しかし時期的には年度末の決算期を迎えており、出荷予想や相場など、あらゆる面で不透明感が強く、判断が難しくなっている。
東北地方の複数の製錬所が被災した亜鉛は、国内供給能力の半分以上が停止している状態で、供給不安が早くから指摘されてきた。扱い筋には仮需を含めた引き合いが多く来ており、関西の地金問屋は「ひも付きを優先し、それ以外の思惑買いや駆け込みは断らざるを得ない」と話す。
一方で「品薄懸念に相場安が重なって、判断が難しい局面」と指摘する。亜鉛建値は17日付でトン1万円下落し、月初からは計3万円値を消した。市中相場は足元建値平均が指標となるため、月初からの下げ幅はキロ15円前後となったが、このまま横ばい推移しても約10円続落する見通し。相場の地合いも僚品鉛に比べて緩く、さらなる下値も想定される。
リーマン・ショック前までは、南米やアフリカからの電気亜鉛の輸入実績があり、商社筋が市中の引き合いを受けて輸入ルートを探しているもよう。需要家サイドも「海外にはLME在庫もあるので、手当てに困ることはないと思う」(めっき業者)と悲観的ではないようだ。
錫の市中相場は、震災前からの下落も含めると、最高値時からキロ400円を超える下げとなった。全量を輸入に頼っているため供給不安は薄く、対日輸出最大手のインドネシア・ティマ社も今月出荷を予定通り実施すると伝えている。
1月下旬からの相場高騰で手控えムードとなり、調達遅れから市中では手持ちの玉切れも発生していた。海外安でようやく買い場が設けられたものの、続落警戒感が引き続き強く、問屋受注は低調のようだ。
伸銅品では東日本エリアに位置するメーカーが、計画停電の影響を受け、今後の生産の落ち込みが予想される。関西圏ではそれを見越して「全般的にユーザーの手配のピッチが上がってきた」(二次問屋)という声もあり、在庫の減少スピードは速まっている。
関西地区における市中取引では、足元の銅・亜鉛建値とそれに連動するメーカー原料買値が即日反映される。その建値が先週から急落し、黄銅棒の指標価格もキロ50円以上ダウン。海外反発で週明けの建値上げ戻しの可能性が高まったが、「先行きが全然読めず、手当てした材料の売り先も保証されていない」(同)と消極的。
黄銅棒では高値による補充手控えと、一部メーカーの納期遅れもあり、市中在庫に欠品も散見される。場合によっては今後、需給バランスがさらに引き締まる可能性もある。