中国の宝山鋼鉄は16日、華南地区の日系自動車メーカーの要請に応じて、自動車用鋼板の緊急増産を行うと発表した。東日本大地震の影響で高炉メーカーの生産が一時減少するとみて、不足分を供給する。宝鋼など大手鉄鋼メーカーは、高級鋼市場の開拓を課題に掲げており、日本材の輸入減の機会をとらえる。中韓の鉄鋼メーカーでは日本市場への輸出を増やす動きも伺われ、国際市場のシェア変動につながりねない情勢だ。
日本製鋼材の供給減が影響する東風日産、広州ホンダ、広州トヨタが宝鋼に対し、緊急の代替生産を要請。宝鋼が応え、各自動車工場の安定生産を支えるという。日系自動車は、日本から大部分の鋼板と自動車部品を輸入。11日の地震で新日本製鉄やJFEスチール、住友金属工業の製鉄所が生産を一時停止。ホンダの埼玉県のクランクシャフト・ギアボックスの部品工場や日産の福島県のエンジン工場なども操業を停止しており、宝鋼は鋼材と部品の供給が減るとみている。
宝鋼では地震発生1時間後に、日本高炉が鋼材を供給している日系自動車に影響が及ぶと判断。11日夜に宝鋼自動車鋼板部と華南のグループ企業と緊急会議を設け、華南の日系自動車の調達責任者と連絡を取り、緊急措置の提案を受けた。13日に日本で多くの自動車工場を停止する状況をみて、日系自動車に協力する方針を明確にした。
震災や電力不足から、日本の鋼材生産が一部停滞しており、需要家が鋼材確保に傾くことも予想される。地震前から現代製鉄など韓国メーカーが日本商社に鋼材輸入を強く要請してきており、日本の鉄鋼メーカーの供給次第では、輸入材が増える可能性もある。