特殊鋼電炉では、大同特殊鋼が計画停電の対象区域にある渋川工場(群馬県)と王子工場(同)で、停電時間帯に原則操業を休止。対象区域外の川崎工場と君津工場は原則通常操業だが、東電から要請があれば操業を休止する。
日立金属は熊谷工場(埼玉県)と熊谷製作所(同)、真岡工場(栃木県)、子会社のオートテック(福島県)が計画停電を織り込んで生産計画を立て、生産量に影響はなく、ほぼフル操業を継続している。
三菱製鋼は宇都宮製作所が一部設備の復旧を進め、操業再開後は停電への対応を図る。一方で福島原発事故に伴い、宇都宮製作所と広田製作所の全従業員を一時自宅待機させており、情報収集に努め、安全を確保した上で操業を再開する。
デリバリー苦慮 特殊鋼の浦安流通
特殊鋼流通の各社は、浦安鉄鋼団地(千葉県浦安市)に在庫倉庫を、福島、茨城、宮城の各県に支店、切断・加工設備を備えている企業が多い。浦安は第一団地に居を構える企業の損傷が、第二団地と比較して大きく、液状化現象による建物・敷地の一部損壊が目立つ。東北・北関東地区の支店では、地震の影響に加え、東京電力による計画停電により、機械設備の稼働開始への懸念が高まっている。需給は一時的にタイト化する可能性が高い。出荷面でも、配送車の燃料確保が喫緊の課題となるなど、地震から派生した二重三重の問題が積み上がっている。
ある流通の社長は、目先の特殊鋼需給バランスについて「東北地区は自動車がないと生活できない。復旧に向けた公共工事も建設機械が必要。その意味では今後、建機、自動車需要は確実に増えるだろうが、メーカーに部品を納めるわれわれ流通のデリバリー機能がマヒしている」と話す。
ある社長は「福島の工場は数日で稼働できる状況だが、ユーザーの状況が不明。道路網が決壊しているところもあり、この1カ月間の顧客対応は難しい」と見通しを示した。