東日本大震災によって、東北および関東エリアの鋼材流通は通常業務で大きな影響を受けている。東北エリアで浸水などの被害にあった流通は、復旧のめどが立たず、広域で流通網がまひしていることから、大手高炉メーカーに対して、ガス管など緊急出荷要請が出始めている。ユーザーへのデリバリー、復興関連向けで、今後、東北の日本海側(秋田県、山形県)、関東の流通を中心に、被災県への出荷対応が求められるとみられるが、ガソリン不足などでデリバリー機能が不全になるなど、東日本エリアの鋼材需給に、インパクトを与える可能性が高いとみられる。
東北は宮城県の岩沼工業団地で浸水被害が出ており、電気・ガス・水道のライフラインが不通で、営業再開のめどが立たない流通も多い。都市型流通の出先機関は、従業員の安否確認が手いっぱいで、現地から連絡が途絶えるケースも出ている。独立系平鋼流通は倉庫が浸水し、業務がストップ。商社系鋼管流通の出先は津波を受け、事務所が一部倒壊し、倉庫も影響。ユーザーへの出荷は再開されていないが、要請が来た場合、新潟、浦安など他拠点からデリバリーするという。独立系鋼材流通のコイルセンターで浸水、建屋損傷の被害が出ている。仙台市内の独立系鋼管流通の出先は事務所が半倒壊し、倉庫内も荷崩れを起こした。八戸市、花巻市、宮古市など各地で被害が出ている。
関東は、浦安鉄鋼団地(千葉県浦安市)で、拠点の屋内外で液状化現象による土砂が噴出。事務所や倉庫が倒壊・陥没したり、団地内道路の一部がひび割れ、隆起する個所がみられた。各社で被災状況は異なるものの、倉庫内は鋼板類、コイル類など在庫の積み山が崩れるところも一部出ている。
浦安鉄鋼団地協同組合(理事長=清水範子・清水鋼鉄会長)は、15日に理事会を開き、浦安鉄鋼団地内の被災状況の確認と、今後の対策について協議した。同組合では道路の損傷回復をはじめ、仮設トイレ設置などを実施しているが、組合企業の復旧を支援するため、今後さらなる取り組みを検討している。
「需要産業の操業停止の影響が長引く可能性がある」(関東地区鋼材流通)とし、自動車メーカーなど製造業、建設業ともに鋼材受け入れ体制が整わず、またガソリンの調達難、交通事情の悪化などで、東北だけでなく、関東においてもユーザーの引き取りは停滞。一方、「当面、在庫を積み増す動きが増えるのではないか」(関東地区鋼材流通)との見方があり、復興工事向けとは別途、素材調達難に事前対応する流通が増えるとみられる。