2011年3月15日

太平洋岸沿いで損壊 製錬、被害把握も困難

 東日本大震災の発生から3日間が経過した週明け14日、製錬、電線、伸銅、軽圧、アルミ二次合金など非鉄金属企業の被害状況がさらに明らかになった。主に太平洋岸沿いの東北地方から関東地方に立地する製造拠点の大半が建屋や設備の損壊のほか電気、水道、ガスなどインフラの復旧に見通しが立たないため引き続き操業停止に追い込まれている。一方、震災の被害が比較的軽微に済んだ企業は操業再開を視野に入れつつも計画停電への対応を余儀なくされ、しかも断続的に見舞われる余震の中、その見通しを立てにくい状況が続いている。

 三井金属は13日、亜鉛製錬拠点の八戸製錬の被害状況を発表した。工場周辺の電力は13日早朝に復電したが、八戸製錬工場内は停電が継続しているため操業を停止している。被害状況の把握も困難な状況になっている。

 11日の地震発生直後から停電の影響で操業を停止しているが、復旧のめどは立っていない。また当日、製錬所に勤務していた従業員に人的被害はなかった。設備などの被害状況は今後調査するという。八戸製錬以外の関連事業所については、現段階で従業員や設備などに大きな問題は出ていないことを確認した。

 三菱マテリアルは13日、東日本大震災を受けて危機管理委員会を中心にグループの従業員と事業所の被災状況を発表した。東北地方と関東地方の事業所で重大な人的被害はなかった。ただ、一部の事業所では停電と断水、建物、設備の損傷などの被害により操業停止となっている。

 操業停止中の事業所は亜鉛の秋田製錬所、超硬工具の筑波製作所、いわき製作所、鉛の細倉金属鉱業、銅製錬拠点の小名浜製錬所。タングステンの日本新金属秋田工場。三菱マテリアル電子化成も操業を停止している。

 JXホールディングスは14日、事業会社の被害状況を発表した。東北、関東地区の事業所について、停電や工場建屋、設備などが破損しているため操業を停止している。操業再開は未定。

 JX日鉱日石金属の日立地区には電気銅を製造する銅電解工場や電子材料の電解銅箔、環境リサイクルのHMC工場などがある主力拠点。さらにスパッタリングターゲット材を製造している磯原工場もある。特に磯原工場では世界シェア50%以上を占める半導体用ターゲットや半分近い世界シェアのある液晶用のITO(インジ ウム・錫酸化物)ターゲットなどを製造している。新規事業としてリチウムイオン電池の正極材なども製造している。

 SUMCOは14日、地震の影響で米沢事業所が操業を停止していると発表した。現在操業再開に向けて設備の状況確認と安全点検、資材、インフラの確認を行っており、安全が確認でき次第、操業を再開するとしている。九州地区の工場を活用することで、供給のバックアップ体制を確保することを検討中。

 神戸製鋼所は14日、アルミ板材の製造拠点である真岡製造所(栃木県真岡市)が11日発生した東日本大震災の影響で生産を停止していると明らかにした。再開の見通しは現時点では未定。人的被害はないという。

 古河スカイは14日、3つある製造拠点のうち深谷工場と小山工場は14日午前の時点ですでに生産を再開しており、日光工場も14日夕方から生産を再開する見通しだと明らかにした。同社によると、3工場とも今回の東日本大震災による人的被害はない。

 一方、深谷では一部の設備が被害を受け、11日に操業を停止したが、翌12日には全面再開した。また小山と日光は建屋と設備に被害を受けたため、やはり11日に生産を止めた。このうち小山は14日午前から操業を再開した。日光は工業用水も止まったことから14日午前の段階でも生産を止めているが、同日夕方には再開できるという。ただ今後計画停電が始まれば3工場とも対応が必要になるため、生産にも影響が出る可能性がある。深谷と日光ではアルミの圧延、小山では押出、鋳物、鍛造を手がける。

 昭和電工は14日、アルミ製品の生産拠点である小山事業所(栃木県小山市)と喜多方事業所(福島県喜多方市)を含む、関東以北の約10工場の操業を一部例外を除き16日まで停止することを明らかにした。大規模な余震発生の可能性が指摘されていることや計画停電などを考慮した上での措置。14日に開催した緊急対策会議で決定した。

 小山、喜多方とも人的被害はない。設備は地震発生に伴い、安全のため1回操業を停止した。週末に点検したところ、大きな損害はなかったが現在も停止を続けている。出荷は在庫などに問題がなければ「ケースバイケース」(同社)で対応するとしている。

 小山はアルミ押出材・熱交換器など、自動車やOA・電機向け部品を生産する。一方、喜多方では独自に開発したアルミ合金(ショウティック)を原料にカーエアコン用コンプレッサー、足回り部品などの自動車部品や、二輪車のエンジンピストンなどを製造する。

 今回対象となる10工場の中にはアルミ製品のほか、ハードディスクや化学製品の生産拠点が含まれるという。

 YKKAPは13日、東北事業所(宮城県大崎市)と宮城工場(宮城県黒川郡)について14、15日の操業を停止すると発表した。両拠点とも負傷者や不明者などの人的被害は報告されておらず、火災の発生などもなく、倒壊した建物もないという。ただ設備は東日本大震災が起きた11日から停止している。

 現在は設備の詳細な確認を行っているほか、2次災害の防止や生産計画の策定を進めている。東北事業所はアルミ押出の一貫設備を持ち、住宅用の断熱窓やエクステリア、玄関ドアなどを生産する。従業員数は1554人。宮城工場はアルミサッシを製造しており、従業員数は57人。

東日本大震災による非鉄金属企業の被害状況第2弾

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