国内観測史上最大、マグニチュード8・8の東北地方太平洋沖地震は鉄鋼・非鉄業界に深いつめ跡を残した。
11日午後2時46分の地震発生直後、東北、関東地方にある高炉・電炉メーカーの製造拠点の多くが操業を停止。東北では直後の津波で新日本製鉄釜石製鉄所、東北スチール、JFE条鋼仙台製造所、伊藤製鉄所石巻工場、東京鉄鋼八戸工場で浸水などの大きな被害が発生、設備が冠水したところもあるようだ。関東でも新日鉄君津、JFEスチール東日本(千葉・京浜地区)、住友金属工業鹿島の各製鉄所や電炉工場、浦安鉄鋼団地など流通・加工拠点で被害が出ている。各地で1000人を超える死亡・行方不明者が出た巨大地震の被害は、業界関係者にも及んでいる。
東北地方の被害は(別項の通り)極めて深刻。電力・原材料供給が寸断されており、各所ともに操業再開のめどは全く立っていない。新日鉄釜石やJFE条鋼仙台の線材供給不足が想定され、これから災害復旧用の重仮設材、形鋼、鋼管、仮設住宅資材などの緊急需要が発生する。
設備被害が関東以北に限定されているため新日鉄、JFE、神戸製鋼所、日新製鋼や電炉メーカーの増産対応は可能。ただし広域で津波警報や注意報が続き、高速道路など交通網も一部で寸断されている。このため海上・陸上輸送障害は続き、自動車などの需要産業にも影響が波及しそう。
高炉・電炉メーカー、商社など業界各社は11日、緊急対策本部をそれぞれ立ち上げ、従業員・家族の安否確認と安全確保を最優先し、代替生産や原料・鉄源融通、災害復旧用鋼材の生産・物流手配など対応策の協議に入った。
高炉メーカーの被害状況(すべて12日午前の確認内容)は、新日鉄釜石が「地震発生時に所内にいた従業員の安全は確認できている。その他の交替勤務者の安否や設備の被害などは確認中」(本社広報センター)。また新日鉄の室蘭、君津など他の製鉄所は人的被害がなく、室蘭は設備の大きな被害もなかったようだ。君津は直後に高炉を休風、「岸壁、設備などの被害を確認中」としている。
JFEスチールの東日本製鉄所は「協力会社を含めて従業員の安全を確認。一部報道があった千葉地区の火災、JFEケミカルの工場爆発ともに誤報で、京浜地区の小規模火災はすぐに鎮火した。高炉は休風、設備は点検中」(本社広報室)。
住友金属工業は「津波警報が出たため、鹿島製鉄所の従業員を小高い丘にある人材開発センターに避難させ、人的被害はなかった。高炉は休風中。コークスガスホルダーに火災が発生。すべてのラインを停止し、影響を調査中」(本社広報グループ)としている。
商社・流通各社は営業拠点、在庫・加工販売などネットワークを構築しており、東北地区では甚大な被害が出ている。また浦安鉄鋼団地を含め関東地区の鉄鋼流通・加工でも大きな被害が出ており、今後の影響が懸念されている。