台湾・高雄市に本社を置く、世界最大の半導体製造パッケージングメーカーのASEグループは、全社一丸となってサステナブル経営を推進している。台湾の半導体産業のCEへの取り組みを同社の動きから見る。
同社はCEの実現に向けて総経理(社長)をトップに置き、製造部門の責任者などの経営幹部が参加する委員会を設けている。同社の各製造プロセスでは、脱炭素や資源循環などを重要な指標の一つとして捉えており、各種ISOをベースにCE実現に向けた動きを加速している。
その一環として、社員用にCEを勉強できるアプリを自社開発した。クイズなどに答えるとカーボンコインを得ることができるなどのゲーム性も加え、楽しみながら学ぶことができ、社員の意識向上に大きく寄与している。
また、資源循環ではプラスチックの循環センターを約3年前に立ち上げた。半導体製造プロセスから発生した廃プラスチックなどの化学品リサイクルを本格化している。最近ではリサイクルだけでなく、リユースにも力を入れ、資源循環のレベルを高めている。
台湾で資源循環ネットワークの仕組みを先駆けて構築してきた。国際的にも脱炭素の動きが進む中、業界トップとして環境に貢献する意識が高まっていることが背景にある。各種資格の取得などCEに関連した人材の育成にも注力している。
最近ではAIを用いたセンサーシステムの導入も積極的に進めている。例えば空調の調整なども、AIを用いて自動的に最適な温度が調整できるようにしている。排水処理でも24時間常にデータを取得し、ハイレベルな水処理を実現。農業用水として使用可能なレベルまで清浄度を高めている。
成信実業・太松企業と連携/機能性備え再資源化
ASEグループの半導体製造工程から発生した球状シリカの再資源化を、シリコンリサイクルなどを手掛け、本年に台湾で株式上場を果たした成信実業や、スリッパを製造販売する太松企業と連携して行っている。
スリッパサンダルの原料の原料に球状シリカを15%ほど加えることで、プラスチック使用量や二酸化炭素排出量を61%削減することに成功。さらに性能面でもクッション性を高め、足裏に掛かる圧力を40%低減させるなど、エコと機能性を両立させた製品を実現し、実際に売れる商品に仕上げている。
半導体産業から排出された再生資源を高付加価値な製品として、一般消費者に販売することでCE意識の喚起にもつなげていく考えを示す。台湾の半導体産業では市民の自発的な参加を呼び込みながら、CE社会の実現を目指す動きが盛んに進んでいる。