――宝山鋼鉄との自動車用鋼板製造の合弁事業(BNA)の解消を決めたことについて。中国から米国に事業をシフトしていく一環なのか。
「大きな役割を終えたと考え、撤退を決めた。BNAは契約期間があり、今年夏に契約満了期を迎えるので2年前から両社で検討していた。中国から米国にシフトしていくということではなく、これからの戦略として市場の成長が続くインド、当社のホームマーケットであるASEAN、世界最大の高級鋼市場で成長が続く米国の三極に集中していく」
――中国市場をどうみているか。
「三中全会が回復のきっかけになるとみていたが、確たる政策が出てこず、鉄鋼の内需が弱い今の状態が長引くかもしれない。現状は10億トンの粗鋼生産を製造し、1億トンの鋼材を輸出するレベルであり、周辺の国に影響を及ぼしている」
――USスチール買収についてポンペオ元国務長官をアドバイザーに招聘したのは。
「今回の買収について米国の経済にとってプラスになることと深く理解してくれている。ナショナルセキュリティなどに非常に優れた考察を持っており、共和党内だけでなく、民主党からも尊敬されている。サポートしてくれれば当社の意図が正しく伝わると考えている」
――米国で直接議員や従業員と会話を重ねている。クロージングに向けた手応えは。
「我々は既存のBLA(労働基本協約)を超えるコミットを示している。雇用を守り、稼働中の設備の閉鎖やレイオフを行わない。先進技術を全て共有し、追加投資を行う。新たな投資によって成長させ、それによって雇用が生じる。いろいろな政治状況の中で全米鉄鋼労働組合とは距離はあるが、必ずプラスの方向にいくと思っている。組合は雇用などを心配しているが、彼らと直接話をし、彼らが何を懸念しているか、よく理解しており、我々として答えを示せる。年内にクロージングできると考えている」
――為替が円高に振れている。事業やUSS買収への影響は。
「原料価格が高いので入超となるが、事業利益となるとほぼバランスしており、為替がどちらに振れても影響は小さい。借入はほぼ固定金利であり、政策金利が上がっても影響しない。USSの買収額の2兆円を銀行に用意していただいている。買収は米ドルで決めているので短期的な支出は円高の方が助かるが、資金の投入が増えてもリターンが増えるので為替はさほど影響しない」